ノークリサーチQuarterly Report 2013年夏版 (Vol 022)

株式会社ノークリサーチでは中堅・中小市場における2013年夏の定点観測調査を行った。

DI値は回復を続けているが全ての企業にはまだ波及しておらず、投資余力のある顧客の選別が必要
▼IT投資DIは5年ぶりに2.0を超える水準まで回復、ただし業種別の傾向差に注意を払うべき
▼年商規模によらず業態展開や新規商材の成果を享受している企業を選別することが大切
▼業種/業態によって円安効果がプラスとマイナスに分かれる、物価上昇の中身にも要注意

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2013年8月12日

ノークリサーチ Quarterly Report 2013年 夏版 (Vol 022)

2013年夏の中堅・中小企業のIT投資指標

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


株式会社ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター1705:代表伊嶋謙ニ 03-5244-6691URL:http//www.norkresearch.co.jp)では中堅・中小市場における2013年夏の定点観測調査を行った。本リリースはその結果速報をまとめたものである。
調査対象企業: 年商500億円未満の国内民間企業1000社の経営層および管理職
調査対象地域: 日本全国
調査対象業種: 組立製造業/加工製造業/建設業/流通業/卸売業/小売業/IT関連サービス業/一般サービス業/その他
調査実施時期: 2013年7月下旬


DI値は回復を続けているが全ての企業にはまだ波及しておらず、投資余力のある顧客の選別が必要
▼IT投資DIは5年ぶりに2.0を超える水準まで回復、ただし業種別の傾向差に注意を払うべき
▼年商規模によらず業態展開や新規商材の成果を享受している企業を選別することが大切
▼業種/業態によって円安効果がプラスとマイナスに分かれる、物価上昇の中身にも要注意


▼IT投資DIは5年ぶりに2.0を超える水準まで回復、ただし業種別の傾向差に注意を払うべき
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業全体におけるIT投資DIと経常利益DIの変化をプロットしたものである。
[IT投資DIの定義]
今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出した「IT投資意欲指数」を指す。 2013年7月時点でのIT投資DIは2013年4月~2013年6月と比べた時の2013年7月以降のIT投資意向を示した「先行指数」。(IT投資増減の「実績値」ではなく、投資意向を反映した「見込み値」である点に注意)
[経常利益DIの定義]
前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差によって算出した「経常利益増減指数」 を指す。2013年7月時点での値は2013年4月時点と比較した場合の経常利益増減の実績値となる。
2013年7月は2013年4月時点の調査に引き続いて経常利益DI/IT投資DIが共に改善し、両者ともプラスの値となった。
IT投資DIの値は前回から4.2ポイント回復して2.3となり、2.0を超えるのは2008年8月調査以来のほぼ5年ぶりとなる。
また、経常利益についても前回の0.6から3.1ポイント改善して3.7となっている。ただし、後述するようにいずれのDI値についても業種によって大きな差が出てきている。これは主に円安が業績に与える影響が異なることに起因する。IT商材を提供する側としては、業種や業態による企業業績を踏まえたIT活用提案を従来よりもさらに強く意識する必要がある。
次頁以降では年商および業種による傾向について詳しく見ていくことにする。


▼年商規模によらず業態展開や新規商材の成果を享受している企業を選別することが大切
以下のグラフは経常利益DIおよびIT投資DIの変化を年商別にプロットしたものである。
年商5億円未満:
経常利益DIは2.0ポイント、IT投資DIは1.1ポイントの改善となった。経常利益改善の理由では「消費者の購買意欲が高まっている」、IT投資改善の理由では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」が多い。ただし、両DI値の減少理由として全く逆の理由を挙げる企業も多く、同年商帯の全ての企業が経済環境変化の恩恵を受けているわけではない点に注意する必要がある。
年商5億円以上~50億円未満:
経常利益DIは3.3ポイント、IT投資DIは9.0ポイントの大幅な改善となった。経常利益改善の理由では「新たな製品やサービスが好調である」や「業態の拡大や転換が成功している」が多く、IT投資改善の理由では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」が多い。経常利益改善理由に見られるように、以前から経営努力を続ける一部の企業がIT投資DI改善を牽引する形となっている。
年商50億円以上~100億円未満:
経常利益DIは-4.8ポイントの下落、IT投資DIは2.3ポイントの改善となった。同年商帯の経常利益DIが今回の調査では唯一の下落値である。その理由としては「消費者の購買意欲は依然として低い」に加え、「円安で原材料や燃料のコストが上がっている」が多く挙げられている。一方、IT投資改善の理由では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」 が多い。現在は売上増加による効果が円安による経費増を上回ることでIT投資DIがプラスとなっているが、売上の継続的な拡大が見込めなければ、IT投資DIも下落する可能性がある点に注意する必要がある。
年商100億円以上~300億円未満:
経常利益DIは3.9ポイント、IT投資DIは1.9ポイントの改善となった。経常利益改善の理由では「消費者の購買意欲が高まっている」が多く、IT投資改善の理由では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」が多い。IT投資DIは6.5と高めだが、IT投資DI改善の理由の二番目には「サポート期限切れのため、刷新が必要である」が多く、更新需要に留まらないIT活用提案の工夫が重要と考えられる。
年商300億円以上~500億円未満:
経常利益DIは8.4ポイント、IT投資DIは0.3ポイントの改善となった。経常利益改善の理由では「業態の拡大や転換が成功している」、 IT投資改善の理由では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」が多い。同年商帯は企業数が限られるため、このように戦略的な取り組みによって売り上げを改善し、IT投資をさらに続ける企業を選んでアプローチすることが重要となってくる。


▼業種/業態によって円安効果がプラスとマイナスに分かれる、物価上昇の中身にも要注意
次頁のグラフは経常利益DIの変化を業種別にプロットしたものである。業種毎の傾向は以下の通り。
組立製造業:
経常利益DIは4.5ポイント改善したが、IT投資DIは-11.9ポイントと大きく下落している。経常利益改善の理由では「円安で輸出販売が増えている」が多い一方、IT投資減少の理由では「売上が低迷し、IT投資費用を捻出できない」や「再リースなどによって現状のIT資産を延命する」が多い。上記の経常利益改善理由を挙げる企業は年商100億円以上の中堅中位層および中堅上位層が中心である。年商100億円未満の広い裾野には円安の恩恵がまだ十分に伝播しておらず、上記に挙げたように既存IT資産の延命による費用抑制の意向も見られる。こうした状況がIT投資DI下落の大きな要因と考えられる。
加工製造業:
経常利益DIは5.5ポイント、IT投資DIは10.1ポイントの大幅な改善となった。経常利益改善の理由では「新たな製品やサービスが好調である」「原材料や燃料/電力の調達を工夫している」が多く、IT投資改善の理由では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」が多い。以前から新規商材の投入や調達コストの削減に取り組んできた企業がDI値の改善を牽引している状況といえる。
ただし、IT投資改善理由の二番目には「現在は減価償却上の更新時期に当たっている」が多く挙げられているため、今回のIT投資DI値の改善幅については更新需要の影響を加味して捉えておく必要がある。
流通業(運輸業):
経常利益DIは-22.5ポイントの大幅な下落、IT投資DIは2.6ポイントの小幅な改善となった。経常利益減少の理由では「円安で原材料や燃料のコストが上がっている」が多く、円安による影響という点では組立製造業と対照的な結果となっている。IT投資の増加理由としても「現在は減価償却上の更新時期に当たっている」が多く、改善というよりは不可避の更新需要があったことにより下落しなかったと捉えた方が無難である。
建設業:
経常利益DIは8.3ポイント、IT投資DIは11.8ポイントの大幅な改善となった。経常利益改善の理由では「公共事業に伴う案件が増えている」が多く、政権交代後の政策による影響が顕著に表れている。建設業は長らく厳しい状況が続いたため、既存IT資産の更新/刷新が遅れていた面も大きい。こうした背景もあり、IT投資改善の理由では「サポート期限切れのため、刷新が必要である」が多く挙げられている。同業種については滞っていた既存IT資産の更新/刷新に関する提案を行うことが有効なタイミングであると考えられる。
卸売業:
経常利益DIは8.2ポイントと改善している一方、IT投資DIは-10.1ポイントの大幅な下落となっている。経常利益改善の理由では「消費者の購買意欲が高まっている」が多く挙げられる一方、IT投資減少の理由では「景気が本当に回復するかをもう少し見極めたい」という慎重な姿勢が目立つ。実際、経常利益減少の理由では「消費者の購買意欲は依然として低い」が多く挙げられており、同業種の全ての企業が購買意欲の高まりを実感できているわけではない。そのことがIT投資への慎重姿勢にも表れているものと考えられる。
小売業:
経常利益DIは-18.1ポイントの大幅な下落、IT投資DIは2.5ポイントの小幅な改善となった。経常利益減少の理由では「消費者の購買意欲は依然として低い」が多く、IT投資改善の理由では「人件費を減らし、IT投資費用を捻出できた」「販路の創出や拡大にITが必要である」といった項目が見られる。総務省統計局が発表した2013年6月の消費者物価指数における前年同月比を見ると、全品目の総合では0.2%の上昇となっているものの、そこから食料とエネルギーを除いた結果では-0.2%の下落となっている。
つまり、企業にとっての調達コストや家計にとっての生活コストは上昇しているものの、賃金の上昇につながるような良い意味でのインフレはまだ起きていないといえる。こうした状況を踏まえると、同業種においては限られた原資の中で売上確保に不可欠と判断されたIT活用のみが選別される状況がしばらく続くと予想される。ITソリューションを提供する側としては販路開拓などの具体的な効果を示した提案活動が求められてくる。
IT関連サービス業:
経常利益DIは-19.2ポイントの大幅な下落、IT投資DIも-2.1ポイントの小幅な下落となった。経常利益減少の理由では「企業の設備投資は依然として少ない」が最も多く、上記に述べた各業種におけるIT投資への慎重な姿勢が反映された結果となっている。
IT投資減少の理由では「売上が低迷し、IT投資費用を捻出できない」が多く、顧客企業のIT投資が見込めない状況下では自らについてもIT投資を抑制せざるを得ない状況となっていることがわかる。
サービス業:
経常利益DIは8.9ポイント、IT投資DIは9.7ポイントの改善となった。経常利益改善の理由では「消費者の購買意欲が高まっている」が最も多いが、「新たな製品やサービスが好調である」や「雇用調整や人件費削減が進んでいる」といった項目も目立つ。IT投資改善の理由では「売上が向上して、IT投資費用が捻出できた」が最も多いが、「サポート期限切れのため、刷新が必要である」も二番目に多い。新商材の投入やコスト削減といった取り組みを行ってきた企業がDI値の改善を牽引している状況だが、IT投資が単なる更新需要に留まってしまう可能性もある状況といえる。ITソリューションを提供する側としては、新商材の投入やコスト削減といった既に成功体験のある業績改善の取り組みに直接的に寄与するようなIT活用提案を行うことが求められてくる。
以下のグラフは経常利益DIの変化を業種別にプロットしたものである。業種毎の傾向については前頁に詳細を記載している。
以下のグラフはIT投資DIの変化を業種別にプロットしたものである。業種毎の傾向については前頁に詳細を記載している。


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株式会社 ノークリサーチ 調査設計、分析、執筆:岩上由高
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