◎がんと化学療法がアルツハイマー病リスク軽減に関係する研究発表

アルツハイマー病協会 2013年07月16日 10時25分
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◎がんと化学療法がアルツハイマー病リスク軽減に関係する研究発表

AsiaNet 53687
共同JBN 0824 (2013.7.15)

【ボストン2013年7月15日PRN=共同JBN】ボストンで開かれている国際アルツハイマー病会議(Alzheimer's Association International Conference=登録商標=2013、AAIC 2013)で15日報告された350万人の退役軍人に対する研究によると、多くの種類のがんがアルツハイマー病罹患のリスクを顕著に減少させていることと関係していることが分かった。この研究はさらに、これらがんのほとんどすべてに対する化学療法が、アルツハイマー病罹患のリスクの追加的な減少効果を与えていることを示した。

ほかの3人の研究者は、アルツハイマー病に対するリスク要因とありうる治療法のいずれかまたは両方を解明した疫学的研究結果を発表した。その結果は以下の通り。

 *2型糖尿病に対するメトフォルミン(metformin)投薬は、その他療法と比較して2型糖尿病患者のアルツハイマー病リスクを低下させることに関連している可能性がある。
 *退役後の加齢は、アルツハイマー病リスクの減少と関係する可能性がありうる。
 *社会経済的格差は、これまでに観察されているアフリカ系米国人のアルツハイマー病リスク増の説明になりうる。

アルツハイマー病協会(Alzheimer's Association)の医療・科学的関係問題副会長のマリア・カリリョ医博は「このような大集団の研究その他によって、われわれはアルツハイマー病リスクと予防要因に対するより幅広い実態の概要をつかみ始めている」と語った。

カリリョ医博は次いで、「しかしながら、われわれは認知機能低下とアルツハイマー病リスクを実際に上げ下げする特定の要因が何かについてもっと知らなければならない。われわれはそのためにより大規模、多様な人口集団における長期的な研究が必要であり、より多くの研究資金がそのために必要となる。アルツハイマー病研究は、フラミンガム研究の独自バージョンが有益であり、心臓疾患と発作の予防となるリスク要因について非常の多くのことを教えてくれる」と語った。

同医博は結論として、「アルツハイマー病に対応する国家計画は、進歩に向けて極めて必要である研究への資金供与によって完全に実現されなければならず、今年はアルツハイマー病と認知症研究を対象とする1億ドルが拠出される必要がある」と語った。

▽がん既往歴と化学療法はアルツハイマー病のリスク減少に関連する
ますます多くの証拠がアルツハイマー病のリスク軽減とがんとの関係の可能性を示唆しているが、今日まで、この関係ががんの種類と差異があるのか、あるいはがんの治療法によって変わるのかどうかは分かっていない。

VA Boston Healthcare Systemの老人病学者であるローラ・フレイン医博と同僚は、1996年から2011年の間に同病院に収容され、ベースラインで認知症にかかっていない65歳とそれ以上の退役軍人349万9378人の医療記録を分析した。その目的は19の異なるがん、がん治療および結果としてのアルツハイマー病の医療歴の間の関係を評価することだった。

平均5.65年の追跡調査に対して、8万2028人の退役軍人がアルツハイマー病を罹患したと診断された。アルツハイマー病にかかったこれら退役軍人の24%は、がん既往歴があり、76%はそれがなかった。

この研究者は、多くのタイプのがんが9%から51%の範囲でアルツハイマー病リスクの減少に関係していたことを発見した。リスク軽減は肝臓がんの生存者(51%リスク減少)と一番大きく、次いですい臓がん(44%)、食道がん(33%)、骨髄腫(26%)、肺がん(25%)、白血病(23%)だった。アルツハイマー病リスク軽減がないかリスク増大と関係したがんは、メラノーバ(黒色腫)、前立腺がん、大腸がんなど。

研究者はがん既往歴とその他典型的な加齢関連医療効果と間の関係は一切見つからなかった。事実、がんは発作、骨関節症、白内障および黄斑変性のリスク増大と関係していた。ほとんどのがん生存者はまた、非アルツハイマー性認知症のリスクが増大した。

フレイン医博は「これら研究結果は合わせて、多くのがんとアルツハイマー病との間の保護的関係は、がん患者の生存率増大によって単純に説明されるものではないことを示唆している。これらの結果がアルツハイマー病の治療上の意味を持つかどうか断定するためには、もっと多くの研究が必要となる」と語った。

がん既往歴を持ち化学療法を受けたが放射線治療を受けていない退役軍人の中では、アルツハイマー病リスクが20%から45%減少したが、それは前立腺がんを除きがんのタイプに依存していた。

フレイン医博は「化学療法のありうる保護的効果は、最近の実験的研究で支援されている。この研究結果は、アルツハイマー病のリスク軽減と関係する個々のがんに関連する特定の経路と治療剤による今後の研究集中への助けになりうることから興味深い。これによってアルツハイマー病予防と治療に対する新しい治療戦略の道を開く可能性がある」と語った。

▽メトフォルミン(metformin)はほかの2型糖尿病治療法より認知症リスクを低減することと関係する
2型糖尿病は認知症のリスクを倍加する。しかしながら最近まで、2型糖尿病治療と認知症リスクの間の関連性が検査されたことはなかった。米Kaiser Permanente Division of Researchのリチャード・ホイットマー博士と同僚は、1999年10月から2001年11月までに期間に糖尿病治療を開始した55歳とそれ以上の2型糖尿病患者集団1万4891人について研究した。単独療法(メトフォルミン、スルフォニル尿素薬、チアゾリジンジオン誘導体あるいはインスリン)を投与されて始まった患者だけが登録された。患者は最高5年間追跡調査された。

インスリン増感剤メトフォルミンを投与された患者は、ほかの糖尿病治療を受けた患者と比較して、認知症にかかるリスクが顕著に減少した。スルフォニル尿素薬を投与された患者と比較すると、メトフォルミン投与の患者は認知症のリスクを20%軽減する一方、チアゾリジンジオン誘導体あるいはインスリンの投与を受けた患者はリスクの差異はなかった。

ホイットマー博士は「これらの結果は、インスリン増感剤の効能が血糖値コントロールだけでなく神経認知上の健康にまで及ぶだろうという予備的証拠となる。動物実験によると、メトフォルミンは新しい脳細胞を生成に貢献し、空間記憶を強化しうることを示している」と語った。

認知症と、いくつかのケースではアルツハイマー病への前駆体になりうると考えられている軽度の認知機能障害に対する潜在的治療法として、メトフォルミンを評価する臨床試験が現在実施されている。

▽より高齢での退職が認知症のリスク軽減に関連する
ある研究では、人生における知的刺激と精神的関わりがアルツハイマー病やその他の認知症防止に有益であるかもしれないとしている。フランスにおける自営業者42万9000人以上の健康保険記録の分析によると、より高齢での退職は認知症のリスク軽減に関連していることが分かった。この調査結果はAAIC 2013で、ボルドー大学院保健科学科教授、フランス国立保健医学研究機構(INSERM)神経疫学(neroepidemiology)研究ディレクターであるキャロル・デュフォール医学博士と同僚が報告した。

この研究者は、2010年12月31日現在までに退職した存命の自営業者の健康と年金データベースを関連づけて調査した。これら自営業者は平均12年以上たった後で退職している。このグループの認知症発症率は2.65%だった。

分析結果によると、認知症と診断されるリスクは、仕事を続ける年ごとに(すなわちより高年齢での退職で)低くなっている。(認知症の危険率は0.968:信頼区間95%=0.962-0.973)。退職後5年以内に認知症と診断された人を除いた場合でも、調査結果は変わらず極めて有意だった(P<0.0001)。

デュフォール博士は「われわれのデータは、使わないとだめになるとの仮説に一致しており、より高齢での退職が認知症発症のリスクを大幅に軽減するとの強力な証拠を提示している。このパターンは、より直近の同時出生集団に焦点を当ててみるとさらに強力である」と語った。

デュフォール博士はまた「プロフェッショナルな活動は知的刺激と精神的関わりの重要な決定要因かもしれないし、それは認知症防止の潜在的力と考えられる。世界の国々が人口の高齢化に対処する中で、われわれの研究結果は、仕事や退職後の人生を通じて認識上、社会上の刺激を高いレベルで維持することの重要性を浮き彫りにしており、個々の高齢者が認識上、社会生活上の関わりを得られるよう援助するための政策が必要であることを示している」と指摘した。

この研究にはまた、フランス国際長寿センター(責任者:フランソワーズ・フォレット教授)が協力している。

▽社会経済的な格差がアフリカ系米国人の間でのアルツハイマー病罹患リスクが高いことの説明がつく可能性がある
アルツハイマー病とその他の認知症は、米国の白人高齢者より黒人高齢者で多く見られるが、この相違に関するリスク要因について広範な研究は行われていない。

注記:アルツハイマー病協会の2013年アルツハイマー病年次報告書によると、高齢のアフリカ系米国人は白人高齢者に比べて約2倍アルツハイマー病やその他の認知症にかかっており、ヒスパニック系米国人は白人高齢者に比べて同程度もしくは1.5倍アルツハイマー病、その他の認知症にかかっていると考えられている。

クリスティーン・ヤフェ医学博士(カリフォルニア大学サンフランシスコ校、サンフランシスコVAメディカルセンター)と同僚は、同時出生集団の高齢者で人種の相違による認知症発症率に違いがあるのか、また相違があった場合にその相違が社会経済状態(SES)の指標(収入、金銭上の適切度、教育、識字率)と健康関連要因によって説明可能かどうかを見極めようと試みた。

この科学者はベースラインとして認知症にかかっていない3075人の黒人、白人高齢者(平均74.1歳)における認知症リスクを評価した。この研究は現行のHealth, Aging and Body Composition Study(健康・加齢・身体組成研究)の一環として行われた。

12年間の追跡調査期間中、参加者の18.7%が処方医薬、病院記録や認知度低下に基づき認知症発症と診断された。この集団では、アフリカ系米国人は白人より1.5倍認知症にかかりやすかった(21.9%対16.4%)。しかし教育水準、識字率、収入、財政の妥当性などの社会経済的な要因に合わせて調整したあとでは、研究者はリスクの差異が統計的に有意でないことを見つけた。

ヤフェ博士は「われわれの研究結果が示唆するところでは、社会経済的な要因の差異は認知症発症率の人種、エスニック上の格差で説明できる可能性がある。将来これらの格差を調査する研究では、広範な社会経済的な要因を考慮する必要がある」と語った。

ヤフェ博士は、「認知症発症率軽減の方法として、社会経済的リスク要因の改善による潜在的恩恵を探求する」ためにより多くの研究が必要であると指摘した。

(発表:ヤフェ博士はAAIC 2013 Program Committeeの共同議長)

▽国際アルツハイマー病会議(AAIC)について
国際アルツハイマー病会議(AAIC)はこの種の会議では世界最大で、世界中の研究者が集まってアルツハイマー病と関連の障害の原因、診断、治療、予防に関する画期的な研究、情報についての報告、討議を行っている。アルツハイマー協会の研究プロジェクトの一環としてAAICは認知症についての新たな知識の創出、生命に関する共同コミュニティーを育成するための触媒の役割を果たしている。

▽アルツハイマー病協会について
アルツハイマー協会はアルツハイマー病のケア、サポート、研究の世界で有力なボランティアの健康組織である。その使命は研究の前進を通じてアルツハイマー病を根絶し、すべての患者にケア、サポートを提供、強化し、脳の健康促進を通じて認知症のリスクを減らすことである。同協会のビジョンはアルツハイマー病のない世界だ。詳しい情報はウェブサイト(www.alz.org)を参照、または電話(800-272-3900)で。

ソース:Alzheimer's Association

▽問い合わせ先
Alzheimer's Association(R)
media line: +1-312.335.4078,
media@alz.org;
AAIC 2013 press room, July 13-18: +1-617.954.3414

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