生体内脂質のハイスループット自動同定ソフトウェア「Lipid Search」世界で初めて開発

 東京大学大学院医学系研究科田口研究室は、三井情報株式会社(以下MKI)と共同で大量の質量分析データから生体内脂質分子を一括して自動同定する脂質同定ソフトウェア「Lipid Search」の開発に成功しました。今回の技術開発により、核酸や蛋白質だけでは説明できない複雑な生命現象の解明や、メタボリックシンドロームや動脈硬化などの脂質関連疾患の病態解明、病態の進行度や生活改善の指標となるマーカー探索が飛躍的に加速すると期待されます。
 当ツールはMKIよりパッケージソフト「Lipid Search」として、脂質解析の研究へ取り組む製薬メーカーや食品メーカー向けに本日より販売を開始いたしました。




【ソフトウェア開発概要】

1.核酸(DNA)、タンパク質の分野では、それぞれ網羅的解析技術が開発され研究が飛躍的に進展してきたが、代謝産物の1つである生体内脂質(注3)についてはそのような技術は存在せず、長らくその開発が望まれていた。
2.構造が極めて不特定で多岐に渡る脂質分子の網羅的解析(注4)システムLipid Searchが開発されたことで、今まで難しいとされていた脂質関連疾患の病態解明や診断法、新薬開発の飛躍的進展が期待される。
3.Lipid Searchでは既知の脂質のみでなく未知脂質まで同定が可能である。以下の4点が大きな特長となる。
・分析機器に依存せず生データを直接取り込む機能を搭載
・カスタマイズ、拡張が容易な脂質データベースを搭載
・高同定精度を実現するスコアリングアルゴリズムを搭載
・脂質の量的情報を明らかにする定量アルゴリズムを搭載


発表者
東京大学大学院医学系研究科 特任教授 田口 良


【開発の背景・経緯】

 細胞の働きや病態等の表現型を理解するためには、DNA 配列の網羅的解析(ゲノム解析)やタンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)に加え、糖、アミノ酸、脂質など代謝物質の網羅的解析(メタボローム解析)が極めて重要になります。核酸やタンパク質は既に解析手法が確立され、解析ソフトウェアやデータベースが豊富に存在し、ハイスループットな解析を行う環境が整備されています。一方、脂質に関しては、データベースの整備が進みつつあるものの、解析ソフトウェアに関しては未だ発展途上であり、分子を同定するためのデータベースと種々の測定データに対応した検索エンジンを含む効率的なソフトウェアの開発が長らく望まれてきました。


【共同開発の内容】
 
 本ツールは、東大田口研究室で開発された脂質データベースをもとに、MKIが持つ波形解析ソフトウェアMass Navigator※1を質量分析データの読み込みに利用し、脂質の同定までを自動で行うソフトウェアとして共同開発※2いたしました。
※1 Mass Navigatorは平成15~17年度NEDO助成プロジェクト「バイオインフォティクスと融合した先進的プロテオミクスプラットフォームの創造」において、エーザイ(株)シーズ研究所と共同開発した製品です。
※2 一部機能はJST CREST「脂質メタボロームのための基盤技術の構築とその適用」助成プロジェクトにて開発しています。


【今後の予定】

 生体試料の質量分析データから脂質をハイスループットに同定するソフトウェアLipid Searchを開発し、生体内脂質を網羅的に高精度で同定することが可能となりました。
今後は、解析対象(グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、グリセロ脂質以外の脂質)を拡張し、試料間の多変量解析機能を加えることで、脂質の統合的な解析が行えるリピドミクスプラットフォームを構築する予定です。

以  上

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