業績別のIT投資傾向調査報告

株式会社ノークリサーチでは、中堅・中小企業における業績とIT投資の相関についての最新調査結果を発表した。

▼IT投資抑制の事由には業績に応じて「不況による延期型」と「新規投資不要型」がある
▼業績の改善が見られるユーザ企業には、現場部門も利用可能な「見える化」が有効
▼低業績ユーザ企業にはコスト削減だけでないIPテレフォニーやWeb会議の啓蒙が必要
▼耐用年数を超過したサーバ機器を利用し続けることは業績改善の観点からもマイナス

株式会社ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター1705:代表伊嶋謙ニ03-5244-6691 URL:http//www.norkresearch.co.jp)では、中堅・中小企業における業績とIT投資の相関についての最新調査結果を発表した。(調査設計/分析/執筆: 岩上由高)
※ 2010年5月に年商500億円未満の国内民間企業1000社に対してアンケート調査を実施
※ 本リリースは『2010年度第二四半期に向けた中堅・中小企業IT投資状況速報レポート』のダイジェスト


▼IT投資抑制の事由には業績に応じて「不況による延期型」と「新規投資不要型」がある
▼業績の改善が見られるユーザ企業には、現場部門も利用可能な「見える化」が有効
▼低業績ユーザ企業にはコスト削減だけでないIPテレフォニーやWeb会議の啓蒙が必要
▼耐用年数を超過したサーバ機器を利用し続けることは業績改善の観点からもマイナス


●IT投資額は前四半期比マイナスの状況が続くが、その理由は業績によって異なる

中堅・中小企業の「IT投資DI」(※1)は回復基調が鮮明となっているが、値としては依然としてマイナスの状況が続いている。
しかしITソリューションを提供する側としてはIT投資額減少の全てを経済環境による影響と片付けてしまわずに、その理由を明らかにすることが求められる。
以下のグラフは「2010年2月~5月と比べた場合に2010年6月以降のIT投資額を減らす」と回答した年商500億円未満の中堅・中小企業にその理由を尋ねたものである。その際、「2010年2月~5月と比較した2010年6月以降の経常利益増減の予測」を尋ねた結果に応じて集計結果を分けてある。これを見ると、経常利益の増加を予測しているユーザ企業では不況の影響によってIT投資を延期している傾向が強い半面、減少を予測しているユーザ企業は新たなIT投資そのものに消極的であることがわかる。このようにIT投資額の傾向が同じであっても、その理由はユーザ企業の業績によって大きく異なる点に留意する必要がある。次ページ以降では具体的なIT活用項目選定においてユーザ企業の業績がどのように関連しているかを詳しく見ていくことにする。
※1 今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出したIT投資意欲指数

●業種/業態に直結したシステム改善と併せて、現場部門も利用可能な見える化が有効

以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「業績改善に役立つIT活用」の項目を尋ねた結果である。
前ページのグラフと同様に2010年2月~5月と比較した2010年6月以降の経常利益増減の予測に応じて集計結果を分けてある。(ここでは「増加」「減少」だけでなく、増加/減少の幅が10%を超えるかどうかでさらに細かく区分している)
経常利益の増加を予測しているユーザ企業が「業績改善に役立つ」と考えているIT活用項目は実際に業績改善に効果があるか、あるいはIT投資余力のあるユーザ企業が着目している項目ということになる。いずれにしても、ITソリューションを提供する側にとっては有望な分野といえるだろう。
経常利益の増加を予測するユーザ企業がそうでない場合に比べて多く挙げているIT活用項目としては「ビジネスインテリジェンスによる業務や業績の見える化」が挙げられる。しかし、ここでの「見える化」とは、必ずしも経営層を対象とする戦略立案のための高度な情報提供とは限らない点に注意する必要がある。実際、中堅・中小のユーザ企業が「見える化」といった場合は現場部門が現在の状況をデータとして把握することを指すケースも少なくない。限られた社員だけでなく、誰もが手軽に行えるデータ分析/加工の手段は今後ニーズが高まるものと予想される。
10%以上の経常利益増加を予測するユーザ企業において顕著なのが「生産管理システム改善による製造コストの削減」だ。特に繰返見込生産と個別受注生産のいずれか一方を主体としていた中堅・中小の製造業は、両者を混在させたハイブリッドな形態へと変化を迫られている。そのため生産管理システム改善は業績に直結する製造コスト削減にとっては不可欠な取り組みとなっているわけだ。今回の調査では製造業に関するIT活用項目で顕著な傾向が見られたが、他業種においても経常利益が上向いてくれば、本業の業績に直結するIT投資への取り組みも回復してくるものと予想される。
上記の二点を考慮に入れると、「ユーザ企業の業種/業態に直結するシステムを改善し、その動きを現場部門に対して透明化する(「見える化」する)」ことが重要であることが分かる。製造業であれば生産管理システム、卸売業であれば販売/購買管理システム、小売業であれば電子商取引システムなどといった本業に直結するシステムの改善と併せて、業務を遂行する現場部門が無理なく扱えるデータの分析/加工の手段を提供することが有効だ。「BI/DWH」といった従来の枠にとらわれず、個々の業種/業態やシステムに応じた手段を柔軟な発想で提案することがキーポイントになってくると考えられる。
次ページでは「業績改善に役立たないIT活用」について見ていくことにする。

●コスト削減だけではないコミュニケーション改善とサーバ機器の重要性を訴えることが重要

以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「業績改善に役立たないIT活用」の項目を尋ねた結果である。
前ページのグラフと同様に2010年2月~5月と比較した2010年6月以降の経常利益増減の予測に応じて集計結果を分けてある。(ここでは「増加」「減少」だけでなく、増加/減少の幅が10%を超えるかどうかでさらに細かく区分している)
「業績改善に役立たないIT活用」については「経常利益の減少を予測するユーザ企業で多く挙げられ、逆に増加を予測するユーザ企業ではあまり挙げられていない項目」にまず着目することが重要だ。比較的そうした傾向が強いものとしては「Web会議やIPテレフォニーによるコミュニケーション改善」と「サーバ機器交換による業務処理速度の向上」が挙げられる。
「Web会議やIPテレフォニーによるコミュニケーション改善」については経常利益が10%以上減少すると予測するユーザ企業において「業績改善に役立たない」とする回答比率が高い。IPテレフォニーやWeb会議は通話料金や出張旅費の削減といったコスト削減の面で中堅・中小企業の注目を集めており、ASP/SaaS形態によるソリューションの登場もあって徐々に普及しつつある。だが、コスト削減手段に留まってしまい、その先のコミュニケーション改善による業務効率化まで至っていないのが実情だ。経常利益の増加を予測するユーザ企業の中にはそうした次の展開を見越した動きも見られるが、まだごく一部に留まっている。潜在的な需要は十分あると考えられるため、ITソリューションを提供する側の啓蒙活動(コスト削減だけではないWeb会議やIPテレフォニーの活用訴求など)が必要になってくると考えられる。
「サーバ機器交換による業務処理速度の向上についても、10%以上の経常利益増加を予測するユーザ企業と10%以上の減少を予測するユーザ企業とで10ポイント以上の差がついている。IT投資予算の捻出が難しい状況下ではハードウェア更新を見送るなどの対策が採られることが多い。だが、耐用年数を超過したサーバ上で業務に必要なシステムの稼働を続けることはトータル的な観点では逆に業績を低下させる要因にもなり得る。上記のデータは「経常利益の増加を予測するユーザ企業はそうでないユーザ企業に比べて、サーバ機器といったハードウェアインフラの重要性についてある程度認識している」ことを示す結果といえるだろう。
また、「Twitterなどの一般向けサービスを活用したマーケティング」については、経常利益の増加を予測するユーザ企業で「業績改善に役立たない」という回答比率が高くなる傾向にある。ただし、中堅・中小企業においては一般向けサービスによるマーケティングの実施例がそもそも少ない。そのため、この結果は「業績が比較的良い中堅・中小企業が取り組んだ結果業績改善に役立たないと判断した」ということではなく、「業績が比較的良い中堅・中小企業でもまだ取り組みは進んでおらず、業績改善効果は期待されていない」と見るのが適切といえるだろう。経常利益の減少を予測するユーザ企業で「業績改善に役立たない」とする比率が低い点については「コストのかからないマーケティング手法」という期待がこれらのユーザ企業層で高まりやすいことに起因すると考えられる。

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中堅・中小企業に向けたIT活用訴求に際し、以下のような市場傾向を把握したい方に最適な速報レポートです
IT投資を増やそうと考えているのはどのような企業セグメントであり、そこで求められているIT投資項目は何か?
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各種カスタムリサーチのご案内

「カスタムリサーチ」はクライアント企業様個別に設計・実施される調査とコンサルティングです。

1.調査企画提案書の提示:
初回ヒアリングに基づき、調査実施要綱(調査対象とスケジュール、費用など)をご提案させていただく

2.調査設計:
調査企画提案に基づき、具体的な調査方法の選定、調査票の設計/作成やインタビュー取材計画立案を行う

多彩な調査方法が活用できます。
定量調査(アンケート調査):ユーザ企業の実態とニーズを数値的に把握したい、販社やSIerが望む製品やサービスの動向を知りたい
定性調査(インタビュー調査):ユーザ企業が抱える課題を個別に詳しく訊きたい、販社やSIerがベンダに何を期待しているかを訊きたい
デスクトップリサーチ:競合他社の動向などを一通り調べたい

3.実施と集計:
設計された調査を実施し、その結果を集計する

4.分析:
集計結果を分析し、レポートを作成する

5.提言:
分析結果を基にした提言事項を作成し、報告する

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