掲載日時: 2023/02/16 07:30:00

マイクロソフトの「Bing」はグーグル検索の脅威となるか--検索結果を比較

自然な文章を生成すると話題の「ChatGPT」を開発したOpenAIと協力して、マイクロソフトは検索エンジン「Bing」にAI機能を組み込んだ。検索エンジン最大手のグーグルに真っ向から対峙する形だが、その狙いは十分に報われそうだ。Bingとグーグル検索を比較してみて、その感を強くした。

著者 : (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル Stephen Shankland

URL : https://japan.cnet.com/article/35199974/

 Microsoftが自社の検索エンジン「Bing」に人工知能(AI)を組み込み、同種のサービスとして圧倒的に優勢なGoogleに挑んだのは、大胆な一手だった。だが、その結果は有望そうに思える。新しくなったBingが果たしてMicrosoftの思い切った主張にかなうものなのか、そしてOpenAIのAIチャットボット「ChatGPT」の驚異的な機能に匹敵するのかどうかを調べるために、筆者はGoogleと新しくなったBingに同じ質問をぶつけてみた。

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提供:Stephen Shankland/CNET

 手短に言うと、舌を巻いている。Bingはオンライン検索に新機軸もたらすものだ。1記事内で示した10件のテストの内の8回で、筆者はBingの答えに軍配を上げた。これは、BingのAIの能力が優れていたためだ。

 この新しい検索エンジンが、私たちの日常生活をどう変えるかは、まだ定かではない。Googleといえば検索と同義であり、長年にわたって定着している人の習慣を変えるのは難しい。Googleも、「Bard」という独自のAIチャットボット技術の開発を手掛けており、いずれは同社の検索結果に組み込まれる見込みだ。

 だが、Microsoftはすでに、Bingに大きな注目を集めている。これは久しぶりのことだ。米国時間2月9日には、AI搭載のBingを試用するための順番待ちリストに登録したユーザー数が100万人を超えた、とコンシューマープロダクトマーケティング責任者のYusuf Mehdi氏がツイートした。いずれにしても、今後さらに強力な検索エンジンの登場が予想される。

 「テキサス州 ウェーコ 天気」とか「グルニオンとは」といった日常的な検索については、BingもGoogleもうまく機能する。MicrosoftのパートナーであるOpenAIの大規模言語モデルAI技術によって、特に目立った機能が加わるわけではない。一方、複雑な検索では、Microsoftのウェブインデックスと、OpenAIによる言語の処理および生成能力がかなり役立つ場合がある。

 筆者は、そうした複雑な質問で両エンジンを比較しようと試みた。科学的な手法ではないが、傾向は現れたと思う。

 筆者が試した検索と、その結果をご覧いただきたい。

What's a good day hike on a road trip from Los Angeles to Albuquerque?(ロサンゼルスからアルバカーキまでドライブする途中で、おすすめの日帰りハイキングを教えて)

 BingでもGoogleでも、通常の検索結果は、特にどうということはなかった。Bingでは、ロサンゼルスに関するWikipediaの記事にリンクしている派手なボックスが表示され、Googleでは、そのルート沿いの一般的な観光案内を掲載したWanderlogのサイトが提示された。

 AI搭載のBingになると検索結果はかなり磨きがかかり、この質問の肝心な部分が拾われている。「ハイキング」という単語だ。トップで提案されたのは、ロサンゼルス北東に位置するベーデン=パウエル山を登る9マイル(約14.5km)のハイキングコースで、出典はPlanetWareのウェブサイトだった。このハイキング自体が良いものかどうかは保証できないものの、ルート上のハイキングコースが選ばれたのは確かだ。質問を繰り返すと、別の提案も示される。アルバカーキ周辺の短めのコースや、グランドキャニオン付近のコースもいくつか挙がってきて、悪くはないが、国道66号線からはだいぶ距離がある。アルバカーキのトレイルに関するフォローアップの提案をクリックすると、説明文や、コース開始地点の住所、長短のコースオプション、いくつかの参考リンクが表示された。

勝者:Bing

How do I merge two folders on MacOS, including subdirectories?(「macOS」でサブディレクトリも含めて2つのフォルダーをマージするにはどうすればいい?)

 こういう技術サポート系の質問があるときは、まさにその問題の解決方法を教えているユーザーのサイトが検索エンジンでヒットすると、大助かりするものだ。その点は新しくなったBingでも基本的に変わらないが、情報の取得方法は変わる場合がある。

 検索結果のトップは、通常のBingではMacPawの回答、GoogleではAppleのサポートページの回答だった。だがここでも、Bingを上にスクロールするとOpenAIがウェブ上からまとめた情報が示され、そこには「Finder」やmacOSのdittoコマンドの詳しい使い方も書かれていた。

 率直に言うと、Googleの通常検索でもう少し下位にある結果の方が、筆者には分かりやすかった。AppleInsiderに書かれている手順で、スクリーンショットもあるし、ファイルがどうなってしまうのかと心配な人に役立つ情報もある。一方、BingのAIによる検索結果も有益だった技術がさらに進めば、Googleの現在のアプローチを凌ぐ可能性がある。

勝者:Google

What did the US shoot down over Alaska?(米国がアラスカで撃墜したのは何?)

 米軍が未確認物体を撃墜したのと同じ日にこの検索を実行し、両エンジンが最新の出来事を扱う機能を試してみた。

 Bingは、「high altitude object(高高度物体)」という答えを目立つボックスで示し、2件のニュース記事の抜粋を引用してきた。Googleは直接の回答を示さず、この物体に関するThe New York Timesの記事を示すのにとどまった。BingでもGoogleでも、それぞれのニュースセクションへのリンクが強調されている。

 BingのAIインターフェースで掘り下げてみると、5つのニュース記事から要約した次のような文が出力された。「複数のニュースソースによると、米軍は金曜午後、アラスカ上空の領海を飛行していた『高高度物体』を撃墜しました。この物体は『おおよそ小型自動車ほどの大きさ』で、高度4万フィートを飛行していました。物体の出どころや性質は不明ですが、米国が先週末に撃墜した中国のスパイ気球のような機動性は備えていなかった模様です。米軍はこの物体からかなりの量の破片を発見しており、詳細な分析を進めています」

 この検索結果を見ると、MicrosoftのBingエンジンは、ウェブに新たに追加された最新情報をインデックス化し、OpenAIのChatGPTに改良を加えていることが分かる。ChatGPTのトレーニングに使われているのは、最新でも2021年のデータだからだ。

勝者:Bing

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提供:Stephen Shankland/CNET

What does IRA stand for?(IRAは何の略?)

 これはどちらかというと単純な検索で、Bingは苦もなく対応し、明白な回答2つをそのままボックスに示した。「individual retirement account(個人退職勘定)」と、「Irish Republican Army(アイルランド共和軍)」だ。Googleの同様のボックスでは、個人退職勘定の答えしか示されなかった。

 おもしろいのは、Bingのページを上にスクロールして、AIシステムを呼び出したときだ。Microsoftの「Prometheus」テクノロジーは、OpenAIの言語能力を使ってBingが提供するウェブサイトからのデータを提示し、脚注の形で出典も示している。2つのパラグラフの1つ目は、こんな内容だ。「IRAは、文脈によって複数の意味を表します。最も一般的なのは個人退職勘定の意味で、これは退職後のために資金を積み立てておける一種の預金口座で、税制優遇があります。IRAには、Traditional、Roth、SEP、SIMPLEなどの種類があり、それぞれ規則も利点も異なります」

 いたって明快な説明であり、リンクをたどればさらに詳しい情報も得られる。フォローアップの質問もできるし、「How can I open an IRA?(IRAはどうやって開設できる?)」といったフォローアッププロンプトをクリックすることもできる。その答えを見れば、さらにアドバイスが得られ、出典のリンクも示される。ただし、Charles Schwabの広告も表示されるところが肝だ。Microsoftが、この新しい精巧な検索エンジン技術に注目している大きな理由の1つが、ここにある。

 ちなみに、BingでもGoogleでも、ロシア企業のInternet Research Agencyは全く出てこなかった。

勝者:Bing

Who was smarter, Marie Curie or Nikola Tesla?(マリー・キュリーとニコラ・テスラ、どちらの方が賢かった?)

 ChatGPTを使ったことがあれば、Bingの応答は予測がつくだろう。お茶を濁すのである。これにはもっともな理由があって、控えめに言っても知性を測るのは難しく、ChatGPTは原則的に価値判断は下さないのだ。

 代わりに、2人の功績についての概要が示され、このように結論されている。「ご存じのように、マリー・キュリーもニコラ・テスラも科学技術の歴史において偉大な、影響力の大きい人物であり、2人の知性を測るのも、その功績を客観的に比べるのも困難です。どちらの方が賢かったか尋ねるより、この2人が世界に遺したものとその影響を理解し、感謝しましょう」

 これに対して、Googleではこの話題を扱ったQuoraのページへのリンクが示された。いくつかユーザーの意見が投稿されているので、どれに一読の価値があるかを評価する練習にもなる。

 Bingでは、従来の検索結果と並んで、AIの回答とフォローアップのチャットが表示された。それが便利だと思わせたいらしい。大抵はAIが生成した回答を見るためにスクロールするか、「チャット」ウィンドウをクリックしなければならない。BingでAI生成の結果を表示するかどうかは、関連性だけで決まっているのではないかもしれない。OpenAIの技術を利用するのは、通常の検索より費用がかかるのである。

勝者:Bing

What motivates Diana Villiers in the Aubrey-Maturin novels?(小説「オーブリー&マチュリンシリーズ」で、ダイアナ・ビリャーズの行動原理は?)

 Patrick O'Brian氏がナポレオン戦争時代を描いた傑作小説シリーズの脇役について質問してみたが、BingもGoogleもここまで細かい質問になると役に立たなかった。いずれでも、示されたのはその小説に関するWikipediaなど各種ウェブサイトへのリンクと、著者のPatrick O'Brian氏のWikiページで、そこに知りたい登場人物の説明が挙がっていた。

 ただし、BingのAIインターフェースは、筆者の質問への直接の答えとなる情報を合成して表示してくれた。書き出しはこうだ。「いくつかの資料によると、ダイアナ・ビリャーズを突き動かしているのは、自由、独立、冒険への希求です。伝統的な妻という立場にも、愛情を受け入れるだけの姿勢にも満足しません。休みを知らず、衝動的で、しばしば無謀でもあり、新しい体験と挑戦を求め続けます。誇り高く強情という面もあり、友情にも厚い女性です」

 Bingのソースへのリンクもたどれるが、この答えでも十分的を得ている。

勝者:Bing

being late to a crucial meeting(重要な会議に遅れたことをお詫びするメールを書く)

 Microsoftは、このようなより「創造的な」応答を要求するプロンプトへの対処を、OpenAIにほぼ完全に引き渡している。その答えは、ChatGPTで見たものと似ている。

 「親愛なるチームへ。今日の重要な会議に遅れたことを心からお詫びする。これは非常に重要な会議であり、私の遅刻がすべての人に不便と不満を引き起こしたことを理解している」と手紙は始まる。トーンは息苦しくて企業的だが、実用的だ。

 「今度は車のトラブルのせいにしてくれ」と注文を出すと、「会社に行く途中で車にトラブルがあり、近くに整備士やタクシーが見つからなかった」と言う妙な回答が出力された。Microsoftが、AIによる回答を、ユーザーを助ける「副操縦士」と呼んでいる理由として、このサンプルはしっくりくるだろう。

 グーグルは私に手紙を書いてくれなかったが、謝罪に関するアドバイスのあるウェブサイトを紹介してくれた。

勝者:Bing

Where can I watch Avatar: The Way of Water?(「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」はどこで観られる?)

 Googleは映画館と上映時間のマトリックスを提供してくれた。最初は、Bingの標準的な検索結果よりもこちらの方が好みだった。これは、今日の基準からすれば非常に単純なクエリだろう。

 だが、BingのAIインターフェースはさらに一歩先を行っており、今のところ劇場でしか見ることができず、ストリーミング ビデオのリリース日はまだ発表されていないことを教えてくれた。

勝者:Bing

What do the remote control buttons do on this laser nebula astronaut toy?(このレーザーを出す宇宙飛行士のおもちゃのリモコンボタンは、何に使う?)

 検索結果の「ロングテール」、つまり検索エンジンが処理するのがはるかに困難な、頻度の低いクエリにもう少し踏み込んでみようと考えた。これは、筆者が正確な名前覚えていないのおもちゃにまつわる実際の問題だ。

 Bingは、正確な製品のAmazonサイトを示してくれた。これは、より具体的な質問の開始点として役立つ。 Googleは、おもちゃを紹介するYouTube ビデオを提供してくれたが、これはより役に立った。

 BingのAI セクションには、質問用のさまざまなモデルがあるため、具体的なヒントは提供されなかったが、モデルの機能の一部はうまく説明されていた。提供された9つのリンク (そのうちの5つは、世界中のさまざまなAmazonサイトを指している) はどれもあまり役に立たなかったが、Amazonの製品ページには、少なくともリモコンを使用できることを示すビデオがあった。以上の話を踏まえて、このラウンドについてはGoogleの勝利としたい。

勝者:Google

Are electric toothbrushes better than manual toothbrushes if you brush for 2 minutes?(2分間のブラッシングをする場合、電動歯ブラシのほうがただの歯ブラシよりも優れているか?)

 BingとGoogleはどちらも、健康と歯科に関するアドバイスが載ったWebサイトからこのテーマに関する記事を参照していたが、正直なところ、どちらが優れているとも言えない。

 ただし、BingのAIセクションでは、電動歯ブラシの3つの長所と3つの短所、およびこのテーマに関する情報源への5つのリンクを含む、はるかに直接的な回答が提供された。その結論は、顧客のレビューを間接的に引用したものだ。

勝者:Bing

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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