掲載日時: 2012/04/12 07:30:00

FacebookがInstagram買収に大金を投じた理由--両社の狙いと写真共有にもたらす影響

Facebookは米国時間4月9日、スマートフォン向けモバイル写真共有アプリを提供するInstagramを買収すると発表した。大規模な買収に踏み切ったFacebookだが、その決断の裏にはどのような思惑があるのだろうか。

著者 : (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル Rafe Needleman

URL : https://japan.cnet.com/article/35016064/

 世界最大の写真共有サイト(そしてソーシャルネットワーク)であるFacebookは米国時間4月9日、Instagramを買収すると発表した。Instagramは、非常に高い人気を誇るスマートフォン向けモバイル写真共有アプリを提供している企業だ。この買収を早速評価して、Facebookにとって非常に強力な戦術的かつ戦略的な動きであるとする分析もある。

 この件でFacebookが勝ち取った重要なものは、モバイルとのかかわりだ。Instagramのユーザー数は2年足らずの間に3000万人に達している。Facebookは数年前からモバイルアプリを提供しているが、Instagramほどはユーザーの愛着を勝ち得ていない。Facebookは、モバイルアプリの中で最高の相手(少なくともユーザー開拓という点においては)を買収することによって、将来の競争相手を排除するだけでなく、モバイル分野での存在感を強化できる。

 Instagramは小さな企業かもしれないが、買収の日まではFacebookに対する脅威となっていた。Facebookは、1日あたり約2億5000万枚の写真がアップロードされる世界最大の写真共有サイトになったが、そのソーシャルネットワークのユーザーベースに頼って安心していたのでは、現在の地位を強化し続けることはできない。Facebookやそのほかのサービスとの共有機能を備えたInstagramのようなアプリは、アプリ独自のソーシャルネットワークユーザーを獲得する可能性を秘めている。Facebookは、同社サービスへのユーザー関与の深まりと、ユーザーに関するデータの蓄積によって成功を維持しているが、こうしたアプリユーザーは、Facebook以外の場所で写真共有のトラフィック(アップロードや意見交換、「Like(いいね!)」のようなソーシャルジェスチャー)を発生させる。

 さらに、Instagramは動画共有についての構想もある。最高経営責任者(CEO)兼共同創設者のKevin Systrom氏はBusiness Insiderに対して、「Instagramは写真共有の会社だという固定観念を持たれるのを私は望んでいない。Instagramはメディア企業だ。われわれは視覚メディアを扱う企業だと考えている。私は自分たちのことを説明するとき、視覚メディアを通したコミュニケーションを可能にする、破壊的な力を持ったエンターテインメントプラットフォームだと言っている。写真だけがそうだとは考えていない」と述べた。

 とはいえ、Instagramもまた、Facebookを必要としていた。Instagramは高い人気を誇ってはいたものの、売り上げを得るための戦略を発表するには至っていなかった。同アプリは無料で、広告は掲載されていない。しかし、大規模なメディアサービス(Instagramは間違いなく大規模である)の運営は、高コストの事業になることがある。

 両社が発表したように、FacebookはInstagramを独立した製品として残すのかもしれないが、Instagramユーザーの生成するデータはFacebookのメカニズムに流れ込むようになると考えて間違いはないだろう。Instagramの写真に含まれる情報(時間と場所)は、Facebookで生成されるデータ(その写真の撮影時に誰と一緒にいたのか、その人物は友達なのか)と簡単に融合させることが可能であり、Facebookはさらに多くのターゲティング用ツールを手に入れることになるだろう。Instagramは現在、Facebookで写真を共有できる機能を提供しているが、Facebookからこうした中核的な情報を得ることはできない。

 Facebookは、同社の広告プラットフォームのターゲティングを改善する必要が本当にあるのだろうか。おそらくないだろう。現状でも相当にうまくいっているのだから。しかし、Facebookが許せないのは、このレベルの情報が競合他社の手に渡ってしまうことなのだろう。FacebookはInstagramのユーザーを囲い込むことで、結果としてモバイル写真に関するソーシャル情報の極めて大きなシェアを得ることになる(と同社は期待している)。

 今回の10億ドル規模の買収は、この交渉においてInstagramが力を持っていたこと、そして同社の買収を希望する企業が複数あったことを示している。Instagramは先週、5億ドルの評価額で5000万ドルの資金を調達したばかりだ。FacebookがInstagramに対して評価額の2倍の金額を支払ったことは、Instagramをめぐる争奪戦に巻き込まれた可能性があることを示唆している。Instagramの中心的な取り組みとユーザーベースを利用できた可能性があるほかの企業には、GoogleやApple、Microsoft、米Yahooなどがある。もっとも、Yahooの場合は、組織再編が進行中であることを考えると、大規模な買収を正当化するのは難しかったことだろう。

 今回の買収は、シリコンバレーの複数の企業に影響を与えることになるが、良い影響を受ける企業はほとんどないだろう。例えば、次のような企業に影響があるかもしれない。

 Twitter。Instagramは写真共有におけるTwitterだった。これら2つのサービスは相性がいい。Instagramはモバイルデバイス向けに作られた。そして、Twitterはいくつかの優れたアプリのおかげで、投稿者と閲覧者の双方にとってモバイルに適したサービスになった。InstagramのCEOであるKevin Systrom氏は「Instagramは消えてしまうわけではない」と述べたが、FacebookとTwitterを平等に扱ってきた同社のこれまでの姿勢は変わる可能性が高い。

 Yahoo。Instagramの台頭と同社のFacebookへの編入によって最も大きな打撃を受けるのがYahooだろう。かつて最大の影響力を誇った写真サイトであるYahooの「Flickr」写真共有サービス(あまりの影響力に、Yahooが社内で構築した写真サービスに取って代わった)は、まだモバイルにうまく移行できていない。ファンもいないし、ソーシャルへの原動力もない。

 Google。Googleは「Picasa」という強力な写真サービスを擁しているが、写真ユーザーの間での同サービスの位置付けははっきりしない。Picasaは、「Google+」サービスと(双方向に)融合されている。その組み合わせは熱烈な写真愛好家の間では大きな成功を収めているが、モバイル写真共有および閲覧サービスとして見た場合、Googleの存在感は非常に薄い。

 Path。Pathは限定的なソーシャルネットワークとしては成功するかもしれない。ただし、その中核機能の1つ、すなわちフィルターをかけた写真を撮影してFacebookで共有する機能は、InstagramとFacebookを組み合わせた製品でも本質的に同じことが可能なため、非常に厳しい立場に追い込まれるだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanは、Ziff Davisからのライセンスに基づき朝日インタラクティブが運営しています。
CNET Japan is operated by Asahi Interactive under license from Ziff Davis.

Copyright © 2024 ASAHI INTERACTIVE, Inc. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.