HDビデオカメラの低価格化なるか--精鋭の集う新興チップメーカーの挑戦

Michael Kanellos(CNET News.com)2005年12月13日 11時09分

 現在高品位(HD)映像を撮影できるビデオカメラは見つけにくく、たとえあったにしてもまだ1800ドル前後する。だが、2006年には799ドルで手に入れられるようになるかもしれないと、ある新興チップメーカーが話している。

 Ambarella(本社:カリフォルニア州サニーベール)によると、同社が考案した一連のマルチコアプロセッサは、効率よくしかも安価にHD動画を圧縮できるという。これらのチップは、799ドル前後で市販されるビデオカメラに内蔵できるほか、800万画素程度の解像度を持ち、テレビ画質の動画も撮影できるデジタルスチルカメラに搭載することも可能だ。

 Ambarellaはこの技術を1月5日からラスベガスで開幕するComputer Electronics Show(CES)で発表する。すでに大手のカメラメーカー3社が同社製のチップを搭載する実験機の製造に着手している。

 「3社のうち2社ではすでにかなりしっかりとした製品化の計画を立てている」と、Ambarellaのエグゼクティブバイスプレジデント、Didier LeGallは述べている。「第2四半期に製品が登場する確率がかなり高い」(LeGall)

 2004年に設立されたAmbarellaは、デジタルカメラおよびビデオカメラの世界で大きなシフトが進むなかでこの市場に参入した。ソニーやキヤノンなどのデジタルカメラメーカー各社では長年、自社開発したチップを製品に搭載してきた。

 しかし、チップ類の開発製造コストが急騰したことから、多くのカメラメーカーがTexas InstrumentsやNuCoreといったサードパーティ製のマイクロプロセッサやイメージャー(光を捕らえるチップ)の採用を余儀なくされている。

 「カメラメーカー各社は引き続き独自のソリューションを選択したいと考えているが、コストも安く、消費電力も少ない統合型のソリューションを目にすれば、選択の余地はない」とAmbarellaのCEO、Fermi Wangは述べている。

 一般ユーザーからの技術的な要求もエスカレートし続けており、これがカメラメーカー各社にプレッシャーを与えている。すでにビデオテープには未来はなく、現在市場に出回っているカメラの85%近くが、動画の保存にフラッシュメモリーやハードディスク、内蔵のDVDドライブを利用している。

 また、高画質の静止画とテレビ並みの画質を持つ動画の両方が撮影できるハイブリッド型のカメラに対する需要も増加している。現在まで、大半のカメラは静止画と動画のどちらかに重点を置いたものだった。この問題を回避するために、Samsungでは新しいアプローチのカメラを発売したが、これには写真用と動画撮影用にそれぞれ別のレンズと光学系システムが搭載されている。

 Samsungのこの解決策はうまく機能しているものの、他のメーカーからこれに続く動きは見られない。Micron Technologyや他の企業の研究者らは、マイクロプロセッサとイメージキャプチャー技術の進歩で、ハイブリッド化にともなう問題を解決できると述べている。

 デジタルテレビの販売台数やHD番組の数が増加するなかで、カメラメーカーにとってはHD対応が次の必須項目となっている。ただし、残念ながら、この機能を一般ユーザー用のカメラに詰め込むのは容易なことではない。HDビデオで標準となっている「H.264」フォーマットのビデオをエンコード/デコードするには、他のビデオストリームの場合よりもはるかに複雑なプロセスが要求され、そのためのチップを作ることを難しくしている。またHDビデオの保存には大量のハードディスク容量やメモリ容量が必要となる。

 HDビデオ圧縮の難しさも手伝って、いまのところ市場に出回っているHDビデオカメラの種類は限られている。ソニーが2004年投入したあるモデルは2000ドル以上もした。ただし、現在ではCompUSAのような量販店で、1799ドルで売られているモデルもある。

 Ambarellaでは、自社のチップを使って、HDビデオカメラの価格を引き下げられると確信しているが、これには同社幹部らのバックグラウンドが関係していると思われる。同社の創業者らは、ビデオやマルチコアチップについての経験の持ち主だ。WangはAmbarellaのCEOに就任するまで、Afaraというマルチコアチップの設計会社でCEOを務めていたが、この企業を買収したのはSun Microsystemsだった。

 Sun Microsystemsは12月に入って、8基のコアを持つ「UltraSparc T1」チップを発表したが、このチップの設計の大部分はAfaraから手に入れたものだ。 AmbarellaのCTO、Les Kohnは、AfaraでもCTOを務めていた人物で、その前にはSunで「UltraSparc I」の設計に携わっていた経歴の持ち主である。

 「KohnはUltraSparc T1の背後にあるコンセプトを考えた人物として広く知られている」とInsight 64アナリストのNathan Brookwoodは述べている。

 一方、LeGallは1988年から1995年までMPEGビデオの標準化団体で働いていた経歴を持つ。

 Ambarellaのベーシックチップは、同社の設計によるビデオ用に独立したプロセッシングコアが含まれている。そして、内蔵されたARM製のプロセッサがシステム管理機能を司る。さらに、統合型のインターフェースがこのコアチップをイメージキャプチャー用チップやLCDに接続するほか、他の周辺機器との接続も行う仕組みになっている。

 Ambarellaはいまのところ、3種類のチップを発売することにしている。このうち「A199」はフルHDの録画機能を提供するもので、216MHzで動作し、消費電力は約1ワットとなっている。また、「A150」も同じく216MHzで動作するが、こちらはデジタルカメラ向けのチップで動画の解像度は標準画質のテレビに近いものとなる。一方、「A100」は動作速度が遅く、その分消費電力も少ない。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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