「オタク市場」は電子コミックを中心に拡大、ただし市場は成熟か--矢野経済研究所

 矢野経済研究所は11月10日、2007年度の「オタク市場」に関する調査結果を発表した。電子コミックを中心に市場が拡大しているものの、成熟期を迎えつつあるという。

 オタク市場の調査対象としたのはアニメ、電子コミックを含むコミック、同人誌、プラモデル、フィギュア、ドール、鉄道模型、トイガン、アイドル、コスプレ衣装、メイド喫茶やコスプレ喫茶などのメイド・コスプレ関連サービス、アダルトゲーム、AV(アダルトビデオ・DVD)。「オタクの聖地」である秋葉原などで扱われることが比較的多いコンテンツ、およびその関連コンテンツと定義した。この調査は7月から10月にかけて、同市場に関わる事業者および業界団体を対象に実施した。

 調査結果によると、電子コミック、同人誌、フィギュア、コスプレ衣装、鉄道模型市場が大きく拡大したという。電子コミック市場は、前年度比147.5%増の250億円と大幅に拡大している。これは、携帯電話の画面の大型化やコンテンツの読み込み速度向上などにより、ストレスなくコミックを読める環境が整ったことで、携帯電話向けのコンテンツ配信が増加したことが要因という。

 次いで大幅に拡大したのは同人誌市場で、前年度比13.5%増の553億円であった。同人誌の元ネタといえるアニメーション市場は成熟しつつあり、紙媒体のコミック市場は縮小傾向にある。しかし同人誌市場については、コミックマーケットをはじめとする同人誌即売会の認知度の高まり、オタク層に留まらないライトユーザーの参入などにより、拡大傾向が続いているとのことだ。

 フィギュア市場においても、「一部のマニア(オタク)が好むもの」というイメージが薄れて一般層に浸透してきたことや、大手事業者がフィギュアに注力していること、また、参入事業者の増加などにより拡大基調にあり、前年度比8.3%増の260億円となった。

 コスプレ衣装市場も拡大している。コスプレが偏見を持たれる趣味から一般に認知される趣味へと変化しつつあり、コスプレ愛好者やコスプレイベントが次第に増えてきていることから、コスプレ衣装の市場規模は前年度比6.8%増の360億円となったとのこと。

 鉄道模型市場は、団塊の世代の愛好者が退職に伴って自由に使える時間が増え、コアユーザー化していることに加え、近年の鉄道ブームなどが影響し、前年度比5.6%増の152億円となっている。

 今後の展望としては、ここ数年間で「オタクコンテンツ」のメジャー化、一般化が進み、市場が飽和しつつあるとして、拡大幅は次第に小さくなると矢野経済研究所は推察している。特に同人誌やフィギュア市場は参加者の減少などにより、伸び率は減っていく見込みだ。コスプレ衣装は市場の伸びが続くとみられる一方で、個人の趣味の延長で衣装を製作し、版権を取得せずに販売する製作業者が多い点を課題として指摘した。

 鉄道模型市場はここ数年拡大基調にあるものの、コアユーザーの多くは昔から鉄道模型を愛好している中高年層であるため、新規ユーザーのさらなる開拓と定着化が課題としている。

 矢野経済研究所ではこれらの動向を踏まえ、オタク市場全体については、オタクカルチャーの定着化に伴って次第に成熟しつつあると結論づけている。

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