GitHub Universe

GitHubが初のユーザーイベント「GitHub Universe」--3つの新機能と事例

  • 廃工場を利用したユニークなイベント会場Pier 70でGitHub初となるイベント「GitHub Universe」が開催された。

  • GitHub活用の先進事例を知るまたとない機会だけに1000人の募集枠はあっという間に定員に達したという。参加者の約7割はエンジニアだが、プロダクト開発関係者が2割、経営幹部1割ほどを占め、他にも行政関係者や社会活動家、ウェブデザイナーや起業家などいろいろな人たちが参加していた。

  • 初日のキーノートに登壇した創業者兼CEOのChris Wanstrath氏。2008年の創業から全世界のユーザー数は1100万を超え、月間訪問者は3600万以上にもなる。

 オープンソースソフトウェア開発のプラットフォームの中でも人気が高く、全世界で1100万人以上のユーザーに利用されているGitHubが、2008年の設立から初めてとなるユーザーカンファレンスイベント「GitHub Universe」を本社のある米国サンフランシスコで開催した。

 10月1日、2日の2日間にわたるイベントのプログラムは、先進的なプログラミングやオープンソースの活用、コラボレーションの方法などをメインテーマとしており、廃工場を利用した広い会場内に、BUILD(システムおよび組織の構築)、COLLABORATE(協業)、DEPLOY(システムを利用可能な状態にする)をテーマにした3つのセッションエリアが用意され、さまざまな業界から興味深い事例が紹介された。

 初日のキーノートステージに登壇した創業者兼CEOのChris Wanstrath氏は、これまでにGitHubがしてきたこととして、コード開発でソーシャルネットワークに注視すること、オープンとクローズの両方で使えること、そして企業におけるソフトウェア開発の注目度を高めてきたことをあげた。その結果、ユーザー数は1100万人を超え、増加率は加速している。月間訪問者は3600万人を越えており、GitHubがいかに使われ続けているサービスであるかが強調された。

 具体的な機能としては、最大特徴である、Gitを使いやすくするグラフィカルなユーザーインターフェイスをはじめ、大規模開発で社内にGitHub機能を持てる「GitHub Enterprise」、オフラインでも使える「GitHub Desktop」などを提供してきた。さらに今回のキーノートで、大容量のファイルストレージ機能「Git LFS」、プロジェクトに合せたおすすめのデベロッパーツールを提案する「Integrations Directory」、そしてオープン認証規格であるU2F(FIDO Universal 2nd Factor)への対応という、3つの新機能を発表した。

 会場内には、Integrations Directoryでコラボレーションできる、AmazonのAWSやHerokuなど、GitHubのパートナーらがブースを出展しており、相互連携によるエコシステムの強化を進めていることがわかる。また、セキュリティ対応については、個人でもワンパスワードを手軽に使えるYubikeyの開発元で知られるYubico社との提携を発表し、会場の参加者全員に特別限定版のYubikeyを無料で配布するなど、ユーザーが求める機能を使える形でいち早く提供しようとするGitHubの姿勢が、キーノートを通じて伝えられた。

 初日のプログラムでは、主に大規模開発やエンタープライズ市場に向けた活用事例などが取り上げられていた。今やMicrosoftやAppleまでもがオープンソースによるソフトウェア開発を行っている時代だが、それがどう実施されているかを知る機会は少ない。GitHun Univereseでは、MicrosoftやFacebook、Airbnb、そしてNASAからもスピーカーが参加し、具体的な事例を紹介した。

  • GitHubではMicrosoftやAmazonらをパートナーとして連携関係を強めており、関連ツールやサービスの開発にも力を入れている。

  • GitHubで使えるツールが増える一方で、適切なものを探すのが難しくなっている状況に対し、おすすめを紹介する「Integrations Directory」などの新しい機能が発表された。

  • セキュリティパートナーとして提携が決まったYubico社CEOのSTINA EHRENSVARD氏(*最後のAはウムラウトが付く)からは、会場でのYubikeyの配布とGitHubユーザーが特別価格で購入できるプログラムが発表された。

 中でもインパクトがあったのはNASAの事例で、シリコバレー内にあるNASAエイムズ研究センターでは、太陽系を探査する研究所を米国内9つの国際パートナーに所属する数百名でバーチャルに運営しており、地域や国境を越えた専門家による協業を成功させていると紹介した。大規模のプロジェクトもクラウド上で運営できるほどツールや環境は揃いつつあり、誰もが使えるほど簡単になっている。プロジェクトは5年単位で続くので、その間使い続けられる必要があり、GitHubはそうしたニーズに応えられるツールの1つになっているといえる。

  • NASAのJoseph Minafra氏は宇宙研究のような大規模なプロジェクトもオンラインでバーチャルに協業する例が増えているとしている。

  • 4名の大企業のソフトウェア開発担当者によるトークセッションでは、今やソフトウェア開発の質が企業の業績を左右するまでになっていることが紹介された。

 企業の事例として興味深かったのは、コングロマリット企業のGE、自動車メーカーのFord、リテールメーカーのTarget、そして農作業および建築車両メーカーのJohn Deereによるトークセッションだ。これらの大企業でも、ソフトウェア開発の重要性は大きく高まっており、ソフトウェアデベロッパーとしての機能が強くなっているという。GitHubのCEOであるChris Wanstrath氏はキーノートで「Software is eating the world(ソフトウェアが世界に食らいつく)」という印象的な言葉でエンタープライズ市場が変化していると伝えていたが、本セッションではまさしくそうなっていることがはっきりと見えた。

 GEはすでに60億ドル規模のソフトウェア企業であり、Targetも数年前からデータ分析に力を入れており、企業経営の中核を支えている。FordやJohn Deereが製造する車両は今やソフトウェアの塊であり、Fordの場合は自動車を管理するiOSアプリまで開発している。そうした流れから、ソフトウェア開発担当者の権限や意見が重視されるようになり、すでに採用する人材も変化しているという。異なる言語や文化を持つマーケットに対応するには、開発体制はオープンソースが必須であり、それに合せたチーム作りも必要だというのが参加者らの共通した意見であった。

 クロージングキーノートでのPixerの事例紹介はさらに印象的だった。フルCGアニメを製作するPixerでは製作ツールも社内で開発してきた。キーノートではそうした開発裏話になるかと思いきや、映画製作の話が中心。直接GitHubに関する話ではないのに、話を聞けば効くほど両者に共通点が多いことが伝わってきたのだ。

 たとえば、1作に付き4年かかるというプロジェクトの進行ステップが紹介されたが、最初にストーリーがあり、それに合わせたアートを提案し、CGをモデリング、各シーンのデモ映像を公開し、そのフィードバックを元に修正するという流れは、ソフトウェア開発に置き換えても違和感が無い。そして、各シーンを作るのはコーディング作業を行うたくさんのスタッフであり、彼らの協力無しでは作品は生まれない。少し考えすぎかもしれないが、スピーカーのDr. Michael B. Johnson氏は、エンターテインメントあふれるキーノートを通じて、参加者にソフトウェア開発はクリエイティビティであることを伝えたかったのではないだろうか。

  • 1993年からPixerに関わり、スティーブ・ジョブズやジョン・ラセターらの映画作りを間近に見てきたDr. Michael B. Johnson氏

  • Dr. Michael B. Johnson氏の話はとにかく面白く、話に引き込まれるうちにメッセージが伝わってくる内容であった。

 GitHub Universeの初日は、いろいろな角度からオープンソースソフトウェア開発のツールとしてのGitHubの存在価値が紹介された。変わって2日目は、エンジニアやプログラマではない人たちも、さまざまな目的でGitHubを使いはじめていることが紹介された。2日目の詳細については追って紹介する。

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