なぜmixiはこれほど成功したのか--笠原社長が明かす開発秘話

インタビュー:西田隆一(編集部) 文:加藤さこ2006年10月03日 08時00分

 9月14日、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のmixiを手がけるミクシィが東証マザーズに上場し、インターネット上のみならず、テレビや新聞など各メディアで大きく報道され、話題となった。

 サービス開始からわずか2年半で会員数は500万人を超え、上場への原動力ともなったmixi。なぜこれほどまでに成功したのか、その秘けつとmixiの誕生秘話をミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏に聞いた。

チャンスがなくなったときこそがチャンス

--mixiをスタートさせる以前、イー・マーキュリーでは求人サイトのFind Job!やプレスリリース配信代行サービスの@Press(2005年9月にネットエイジキャピタルパートナーズへ譲渡)といった企業向けのBtoBサービスを行っていましたが、なぜコンシューマー向けのサービスであるmixiを始めることになったのですか?

笠原健治氏

 2003年の夏に、会社としてより成長を目指そうということで、新しいビジネスを開始することを決め、新規ビジネスに興味を持つメンバーと定期的にミーティングをしていました。メンバー全員が、新しいサービスやビジネスを世の中に出していくことに大きな価値観を持っており、熱意を持っていくつかのアイデアを出し合っていました。ミーティングを進めていく中、10月ごろにバタラ(取締役バタラ・ケスマ氏)から海外ではSNSが流行しだしているので、うちの会社でやってみないかと話が出たのがSNSに興味を持つきっかけになりました。

 まずはどんなものなのか知るために、米国のSNSを自分で使ってみました。それで思ったのは、インターネット上で現実の人間関係を再構築していくおもしろいサービスだということ。ただ、1週間くらいは知っている人を探してその人とつながったり、他の人を招待していくことが楽しかったのですが、ずっと使い続ける意義を見出すことはできませんでした。

 しかし、このサービスにコミュニケーション機能を充実させて、つながっている人同士で日々コミュニケーションを取れるようにすれば、社会的にも大きな影響を与えられるサービスになるし、ビジネス的にも大きな収益の可能性があると思い、新ビジネスの企画ミーティングで案を出しました。

--当時米国で爆発的に広まったFriendsterでも売り上げは大きくなかったはずですが、ビジネスになるという感触、収益の可能性をどのように感じていたのですか。

 コミュニケーションのインフラになるかもしれないという可能性に大きな魅力を感じました。ビジネスとして成長すれば、メールやインスタントメッセンジャーに代わり得るサービスになっていくだろうという感触があり、収益はあとから付いてくると思いました。広告収益のほか、物販やユーザーへの有料サービスなどが見込めると感じたんです。

 そして2003年10月から11月にかけて開いたミーティングの場でチームのメンバーにどうしてもやりたいと話しました。もう、強烈にやりたいと思っていましたね。

--それまでのイー・マーキュリーなら、企業向けのサービスをやっていくはずですよね。コンシューマー向けサービスを展開することに社内の抵抗はありませんでしたか。

mixi企画書

 社内には、インターネットを活用して新しいサービスをやりたいという人間が集まっていたので抵抗はなかったですね。しかし、SNSに対しては肯定してくれる人はあまりいませんでした。サービスの内容を口で説明しても、なかなかイメージしにくく、実際に使ってみなければわからない点も多いものでしたから。また、「IT系の企業にいる人以外は使わないのでは」「収益が上がるかあやしい」という意見もありました。

 インターネットは変化が激しく、チャンスも生まれやすい土壌ですが、そうはいってももしかしたらこれが残り少ない非常に大きなチャンスのひとつかもしれないという気持ちは捨てられませんでした。これに賭けてみたいとミーティングでメンバーを説得していきました。

 FriendsterのCEOだったTim Koogle氏が以前、CNETの記事で「インターネットにある大きな機会はすべて利用し尽くされた、と誰もが考えた時に、そもそもルール自体を変えてしまうような企業が登場する」と発言していましたが、それと同じ気持ちでした。2003年当時も、あらゆるサービスが出尽くした感がありましたが、SNSは市場のルールを変えることができる革命性のあるサービスであり、やらない手はないと考えたんです。

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