トレンドの裏を読む、一歩先行く企業になるためのIT活用

岩上 由高 (ノークリサーチ)2011年02月22日 10時00分

2.現場レベルの見える化/見せる化に取り組むべし

 「経営を支援するIT」というと、古くはDSS(Decision Support System)やMIS(Management Information System)といったキーワードを思い浮かべる方もいるだろう。それらは成功を収めたとは言い難い結果だったため、現在の「ビジネスインテリジェンス(BI)」に対してもあまり良い印象を持たれていないかも知れない。だが、昨今では中堅・中小企業に固有のBI活用といった動きが出てきている。

 以下のグラフは年商500億円未満の国内中堅・中小企業に対して、「業績改善に役立つと思われるIT活用項目」を尋ね、 そのうち「BIによる業務や業績の見える化」についての結果を示したものである。同時に経常利益の変化(増加または減少)をどう見込んでいるか?を尋ね、その結果別にBIの有効性をどう捉えているか?を集計している。
 この結果を見ると、経常利益の増加を見込んでいる企業ほど、BIの有効性を高く評価していることがわかる。では、大企業と同じように中堅・中小企業も「業務システムからデータを抽出してデータウェアハウスを構築し、経営層向けのダッシュボードに分析結果を表示する」ということをしなければならないということなのだろうか?

 実はここでのBIは上記に述べたものとは異なり、「現場レベルでの見える化/見せる化」と呼ぶべきものだ。従来、中堅・中小企業の製造部門、経理部門、営業/顧客管理部門などといった現場では「業務状況を数値的に把握し、傾向を分析して改善に役立てる」という取り組みは行われていなかった。だが厳しい経済環境が続く中では、個々の現場レベルで自己改善を行う仕組みを持つことが企業体力を高める上で非常に重要となってきている。また熟練社員が定年を迎えるにあたり、これまで個人の勘に頼ってきた暗黙知をデータという形を通じて継承することも必要だ。こうした役割を担うのが「現場レベルの見える化/見せる化」である。
 製造部門では製造ラインを映像監視するシステムやパトランプ(ラインに問題が発生した時に点灯して知らせるランプ)をBIと結合し、「製造ラインの停止が発生する傾向と要因を分析し、今後の対策に役立てる」ということを製造部門社員が自ら実践できる。
 経理部門では経費申請/承認のワークフローにBIを組み込むことで、「出張回数や出張旅費が多すぎる部署や社員をチェックし、その妥当性を判断する」といった経費削減のための取り組みを進めることができる。
 営業/顧客管理部門であれば、CRMにBIの機能を加えることで「複数の営業が担当する案件情報を横断的に分析し、自社が得意とする営業パターンを見つける」といったPDCAサイクルを営業部門内で従来よりも短い周期で行える。

 BIというITキーワードを追いかけるだけではこうした取り組みを実践することは難しい。IT活用においては「部門毎に業務を最適化する『部分最適』は良くないものであり、全社レベルで統一的に関する『全社最適』が望ましい」といわえることもある。だが、厳しい経済環境の中でも収益を維持できる体質となるためには良い意味での『部分最適』の発想も必要となってくる。

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