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リクルートライフスタイルに学ぶ「最高のUXを実現する組織作り」

専門スタッフを消耗させない「クラウド型」組織とは

 そのきっかけはCS部門の担当者が、コールセンター/カスタマーサポート向けクラウドソリューションである「Oracle Service Cloud」と出会ったことだ。顧客対応に関し、リクルートグループが必要とする「専門性」と、どんなサービスにも共通する「普遍性」を切り出すことで、高度な知識を持つスタッフを消耗させることなく、カスタマーサービスの品質を高められる。「『クラウド』という観点を得たことで、共通部分の切り出しという着想を得たんです」と、真島氏は語る。

 どんなサービスにも共通する問い合わせを切り出し、FAQとマルチサポートデスクで受ける体制を構想した狙いは2つあった。1つは、業務を平準化してサービス間の繁閑期の差を解消すること。もう1つは、カスタマーサポートに寄せられる問い合わせ件数自体を削減することだ。それまでは、あるサービスで大きなキャンペーンを行うと、それに伴い寄せられる問い合わせも増え、現場が悲鳴をあげることもあったという。「たとえば行楽期に『じゃらん』でキャンペーンを行うと、それに伴って情報収集や予約件数が一気に増えます。その分、ユーザーの方が使い方にとまどったり、思いもかけないような質問を寄せられたりすることも多い。こうした状況も課題のひとつだったので、クラウドで解決できるのであれば良いな、と思いました」(真島氏)

ITが生み出す「余裕」がスキル向上を促進

 それまで同社は、専門知識を持つ優秀なスタッフを育てるという「人」の部分でカスタマーサービスの充実を目指していた。だがそれゆえに、業務の非効率化を招いていたことも確かだ。その課題を解決できる「IT」を活用することで、現場に漂う種々の問題が解消されれば、より良質なカスタマーサービスが実現できる。こうしたことから2012年12月にOracle Service Cloudの導入に着手した。

真島博氏

 Oracle Service Cloudはクラウド型ソリューションなので、導入工数はほとんどかからない。真島氏は「最も大変だったのは、問い合わせのノウハウを蓄積していくことでした。このプロジェクトのために最初は人員もかなり割き、議論を重ねました。同様の問い合わせとはいえこれまで各領域ごとに対応していたものを、統一し型化するところからですので。他にもサービス内の文言表記など様々なことを検討し、カスタマーエクスペリエンス全体の品質向上を目指しました」と語る。

 立ち上げは大変だったが、仕組みが一度うまく回り始めると、あとはどんどん上調子になる。まず問い合わせについては、システムが質問を動的に処理し、最も関連性・適格性が高い回答を表示するため、自己解決能力が高まった。これはOracle Service Cloudに搭載された自己学習型人工知能のためだ。質問を何度も繰り返すと、質問内容にごとに頻出する用語や解決につながった回答を覚えるので、より適合率の高い回答が提示される。そのため、実際に2次対応スタッフの元に上げられる問い合わせ件数が削減されたので、時間に余裕ができたという。それが、自主的なCS向上のための勉強会が生まれる土壌になった。

 またITの活用により、緊急時などに共有すべき情報を多くのメンバーに間髪入れず共有できるようになったことも大きな変化だ。同社は、札幌・横浜・広島・徳島の国内4カ所にセンターを置いており、以前は電話連絡で連携を取っていたが、現在は瞬時に情報共有ができる。必然的にビジネス全体のスピードも上がっているが、それに追随できるのは、CS業務を支えているシステムが柔軟なクラウド形態であるためだ。

最高のユーザーエクスペリエンスをもたらす現場のモチベーション向上

 こうした時間や情報共有の工数短縮は、ITを導入したことによる量的な変化だ。では「質」はどうか。真島氏は2つの変化を挙げる。「1つは、新媒体立ち上げ時に、ゼロからカスタマーサービスを準備するのではなく、これまでの知見をもとに平準化したサービスを用意できることです。これにより、事業側も企画開発のスピードを落とさずに新たなサービスを立ち上げられるようになりました。もう1つは、『カスタマーサービスの数値目標』が見えることによって生まれた変化です」(真島氏)

 顧客対応に従事する現場では、業務目標に「お客様の満足度向上」を掲げることが多い。だが、満足度という言葉は抽象的に過ぎ、具体的に測りようがない。同社の場合、ユーザーから求められているスピード(迅速性)と、ユーザーの疑問や不満をきちんと解消する的確性の2つを軸に、満足度向上を目指した。特にスピードに関しては、「24時間以内の完全回答」を具体的な数値目標として挙げられるようになったという。こうしてKPIを設定できるようになったことで、現場スタッフも目標が見えるようになり、働く意欲も高まったそうだ。これが元で、前述したようなスキルチェックシートを使った評価の仕組みも整い、モチベーションアップにつながっている。

 顧客からの問い合わせを待つ「受け身」ではなく、積極的にサービス開発に携わるようにもなった。以前は、「新機能が来週リリースされる」と突然告げられることが多く、そのたびにあわてて変更点を覚えなければならなかったが、現在は「どう変更すれば顧客が混乱しないか」といったアドバイスを、CS部門ならではの顧客視点で進言する機会も増えた。

 すべてが良いサイクルで回っているが、課題がゼロというわけではない。「最終的な目標は私どものサービスに対して何かご意見をお持ちのカスタマーに『じゃあ今後も活用してみるよ』と再利用の意向を持っていただくことだと思っています。そのためには『迅速性』や『的確性』は当たり前のものとして、よりカスタマーに寄り添い、ご意見をサービスに反映させていくことだと考えています。今はそのための仕組みとKPI策定に力を注いでいます。」と真島氏は語る。リクルートライフスタイルのカスタマーサービスは、今後も進化し続けるのだ。

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提供:日本オラクル株式会社
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