伊勢の老舗食堂がAIで切り拓くサービス業の未来

さらなるチャレンジ—EBILABの誕生

 現在、ゑびやの入店者数や購買率、来店客はもちろん、売り上げや来客予測の的中率、さらに店舗や事務所になどに設置された複数のカメラ映像も含め、運営に関わるデータは全て可視化され、オンラインからクラウド経由でリアルタイムでどこにいても見える状態になっている。「データは見えるだけでなくリアルタイムに把握するのが大事。ディスプレイやメニューを変えたり、学割のようなアイデアも社員といろいろ考えますが、その効果が具体的に見えなければ収益にはつなげられません。自社で開発をしたTouchPointBI(「データを正しく収集する仕組み」と「様々なデータを繋げて可視化する仕組み」)は経営をまさしく見える化してくれて、そのデータに基づく商品開発と施策の効果測定をするだけで売り上げを1.8倍にも伸ばしています」

ゑびやの状況はクラウドからどこにいてもリアルタイムで把握できるようになっている
ゑびやの状況はクラウドからどこにいてもリアルタイムで把握できるようになっている

 ゑびやによるアロバビューコーロの導入とビジネスでの活用にマイクロソフトが注目し、自社のAIをテーマにしたセミナーで事例として紹介することになった。アロバを担当している日本マイクロソフト パートナー事業本部の福地洋二郎氏は、小田島氏が実践しているのがまさしくデータドリブン経営であることに強い関心を持ったという。

 「マイクロソフトのCognitive Servicesを紹介していくなかで、多くの企業からAIのビジネスでの活用の相談を受けてきましたが、AI の導入自体が目的になってしまっている会社が多いのに対し、小田島さんは明確な目的を持ちデータの可視化だけでは満足せず、自社の課題に対する文字通りソリューションとして活用しようとしているのがわかりました。来店客予測のモデルを作り、経営に活かすため店舗のオペレーションまで全てを変えている。そんな小田島さんのプロジェクトに興味を持ったというのもありますが、一緒に仕事をしたいと思うほど小田島さんという人物に魅力を感じました」(福地氏)

日本マイクロソフト株式会社 パートナー事業本部 パートナービジネス統括本部 ISVビジネス本部 福地洋二郎氏
日本マイクロソフト株式会社 パートナー事業本部 パートナービジネス統括本部 ISVビジネス本部 福地洋二郎氏

 その頃小田島氏は新しいチャレンジを始めようとしていた。ここまで順風満帆に見えたゑびやの経営は社長である義父と方針で対立する状況が続いていた。「伊勢に来てからずっと闘いの連続で正直なところだいぶ疲れてしまい、本気で日本を離れようというところまで追いつめられていました。それでも辞めるのは難しく、そういう状況もあって海外でも経営が見えるシステムの開発を目指していたんです。ところがシステムが出来たのをきっかけに、私達取り組みを認めてくる報道や記事が上がり、行政からも注目をいただくようになった事もあって、何も言われなくなり、義父もシステムに興味を持つようになりました。いまでは義父がSurfaceを使い、リアルタイムなテーブル状況や来客予測を確認するようになりました。

 どんなに売り上げを伸ばしても文句を言い続ける義父を納得させるほど、ゑびやのシステムには説得力があった。サービス業の経営は99.9%は再現性のない勘と経験に頼っているから失敗するのであって、きちんとデータを可視化して対策が立てられれば必ず儲かるし成功できる。しかし、ユーザー企業がそうしたシステムを作り上げるためには、通常システムインテグレータへの依頼することが一般的だ。しかし、時間もなく、今すぐ自分たちがアジャイルに進化させていきたい。その思いにこたえ、福地氏と日本マイクロソフトパートナー事業本部の新規事業開拓担当のエンジニアはアイデアソン、ハッカソンを企画。ゑびや店長をはじめとして、ゑびやの面々がチャレンジした。当初はことばのひとつひとつがまるで呪文だったというレベルから、努力を重ね、ついに一つのシステムが完成した。IT のプロではないから、最もシンプルな構成であったが、それゆえに無駄がなく、汎用性も高い仕上がりであった。

 まさにこれこそが、すべての飲食店にとって必要とされているものに違いない。そう確信した小田島氏は、2018年6月にEBILAB(エビラボ)を創業し、ゑびやのために開発したシステムを全国のサービス業に販売するという新たなチャレンジに取り組みはじめた。

 これが、アイデアソン実施から、たった半年の出来事である。

提供:日本マイクロソフト株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2019年6月30日

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