グローバル化の進展で、海外生産や、製品の海外販売が進む中、海外拠点で生産できるように、使用する部材を一部変更したり、実際に生産や販売を行う国や地域へのローカライズ対応のために国内向け製品とは異なる設計を行う必要性が以前より高まっています。
このため、海外拠点や、技術提携先・取引先などに設計情報を渡して、一部の設計変更を行うことが多くなりました。
しかし、国内と異なり、従業員の意識や雇用形態の違い、情報管理体制の問題などから、設計情報を海外拠点・取引先に開示・提供することによって、情報漏洩リスクは高まってしまいます。いくら契約書上で情報保護をうたっても、技術的な抑止ができなければ、情報は容易にコピーされてしまうからです。しかし、CADデータの場合、一般的なDRM製品では暗号化できず、また、VDIによる仮想デスクトップ上での作業は、海外からの利用の場合、遅延が大きく作業効率が低下してしまうという問題があります。
オフィス文書であればパスワード設定が可能であり、ある程度の情報漏洩リスクに対する対策は可能ですが、CADデータの場合、一般的にはデータに対するパスワード設定機能はありません。つまりファイルを渡す以上は、情報漏洩リスクはつきまとうのです。
他方で、データを渡さずに設計変更を行ってもらうという発想もあります。たとえば、機密性の高い情報を取り扱うオフィスでは、取引先から自社に用意した仮想デスクトップ環境に接続して作業をさせることで、クライアント側にデータを渡さない、残さないといった対策をされているところもあります。
しかし、データサイズが大きいCADデータを海外から仮想デスクトップ環境で使うには、高速なネットワークが必要とされ、さらにセキュアな回線環境を用意することは費用面で無理があります。