効率化に満たされた社会なんて、つまらない電通デジタル「Wonderful Prototyping」が
AIやIoTを活用して創り出す未来とは

電通と電通デジタルが2017年10月に、広告会社が培ってきたクリエイティブとAI、IoT、ビッグデータなどのテクノロジによって企業のデジタル試作品開発をサポートする新サービス「Wonderful Prototyping」を発表し、デジタルイノベーションの創出に本格的に取り組んでいる。 翌11月には、「CNET Japan CMO Award & CNET Japan Conference 2017」の特別講演に、電通デジタル アカウントイノベーション部門 統合プランニング事業部のイノベーションディレクターである谷澤正文氏が登壇。新規性の高い製品やサービスをスムーズに立ち上げるためには、テクノロジベンチャーを巻き込んだ「プロトタイピング(製品試作)」をスピード感をもって進めることの重要性を提起している。 同社は、この「Wonderful Prototyping」を通じてイノベーションの未来をどのように描こうとしているのか。谷澤氏に話を伺った。

2020年に向けて、新しい価値観を創る

改めて、Wonderful Prototypingの概要と事業の狙いについて教えてください。
谷澤正文氏
株式会社電通デジタル
アカウントイノベーション部門
統合プランニング事業部
イノベーションディレクター
谷澤 正文 氏

 ひとことで言うと、Wonderful Prototypingは広告代理店がAIやIoTを活用してクライアント企業の新商品・新サービス開発の支援をするという事業になります。具体的には、社会課題や世の中のトレンドを踏まえてアイデアを広告という形に生み出していくというこれまで培ってきたプロセスをテクノロジを使った新規事業の創出に当てはめ、クライアントの課題や世の中のニーズに即したイノベーションを生み出していこうというチャレンジになります。

 クライアント企業は現在、大きく3つの悩みを抱えています。ひとつ目は、アイデアとテクノロジを組み合わせた新商品・新サービスの開発プロセスが従来のものと大きく異なり、サポートを必要としている点。ふたつ目は、現在行っているプロトタイピングをより世の中の生活者に受け入れられる形で進めるにはどうしたらいいか悩んでいるという点。そして、制作したプロトタイピングを限られた予算の中で世の中に普及させていくためにデジタルマーケティングやPRをどう活用していけばいいのかという悩みです。

 現在、大企業は新しいビジネスの創出で危機意識を強く持っており、また一方でベンチャー企業はビジネスの拡大のためのチャンスを模索している。そうした状況で、私たちが間に立ってオープンイノベーションをサポートしていければと考えています。チームには広告出身のプランナーやクリエイティブディレクターをはじめ、データサイエンティスト、エンジニアなども参画してデザイン、テクノロジ、データの三位一体の組織を組成しています。

図表1:デザイン、テクノロジ、データの三位一体の組織
図表1:デザイン、テクノロジ、データの三位一体の組織
この事業の中で、AIやIoTといったテクノロジはどのように位置づけていますか。

 現在、AIやIoTは業務効率化、マーケティング効率の最適化などの目的で注目されていますが、私たちはそういったトレンドとは異なる方向性を考えています。目指しているのは、生活者視点でどのように新しい価値観やライフスタイルを生み出せるかということ。そのために解決すべき社会課題は山積していると思うのです。そうした課題に対して、クライアントの強みとデータやテクノロジを掛け合わせることで解決できるようなサービスを創出できればと考えています。

 私たちは、このWonderful Prototypingが目指すビジョンとして、「2020年に向けて新しい価値観を創る」というステートメントを掲げています。5Gのような超高速通信が整備されていく中で、新しい暮らし方、新しい働き方、新しい人生の楽しみ方を生み出していきたい。そのために、データやテクノロジだけでなく、私たちがこれまで培ってきたアイデアを生み出す力や世の中に伝えていくストーリーを生み出す力、そして世の中のトレンドを掛け合わせて、プロトタイピングを生み出していきたいと考えています。

効果効率の追求から一線を画すというのは、興味深い視点ですね。

 効果効率の追求を目的にAIやIoTの活用を推進しているビジネスは多いですが、そこは私たちのやるべき領域ではないと考えています。私たちが考えたいのは、効率化された社会で人が何をするのかということ。効率化に満たされた社会というのは、考え方によっては退屈なのかもしれません。その中で、どのような新しい生き方をしていくのが幸せなのか。それを考えていくチームでありたいと思っています。

 例えば、デジタルマーケティング。効率化やパーソナライズが大きなテーマになっていてその効果を追求することは大切なことですが、その先を見据えたAIやIoTの活用シーンにはどのようなことが考えられるのか。そういったテーマを追求したいと考えています。

 ただ大企業などでは、こうしたテーマを掲げてもなかなか想像がつかないのではないでしょうか。そこをサポートするためには、やはり実際にプロトタイピングをしてみるということが大切であり、私たちが取り組んでいくテーマなのです。

効率化とは異なる軸で、新たな価値を世の中に届ける

現在はどのようなプロジェクトが進んでいますか。

 AIを活用してタレントのチャットボットを作りファンとのコミュニケーションを創出していこうという試みを進めています。タレントさんの口癖や言葉遣いなどをAIに学習させているところですが、仕組みを構築すれば様々なタレントさんにも活用できる仕組みです。

 具体的には、例えば利用者がチャットボットに「今日は疲れた」と話しかけると、タレントのAIが返事をしてくれるような疑似会話サービスですね。そのやりとりによってファンが元気になったり励まされたりすることで、タレント、AI、ファンという関係性に新しい価値観が生まれるのではないでしょうか。

 自分の言葉に合わせてタレントのAIが(定型文ではない)オリジナルな言葉で返事をしてくれるという点が、ファンコミュニケーションの新しい形の創出に繋がるのではと考えています。もちろん、タレントのキャラクターをそのままAI化することもできるし、全く新しい人格を持たせても楽しいのではと思います。今のチャットボットは、どちらかというと「正解」を返すことを重視していますが、そうではない人とテクノロジの関係もあるのではないでしょうか。

 先程も申し上げた通り、効率化の追求は突き詰めていくと暇で退屈な日常を生み出すかもしれません。その中で、こうしたタレントAIのような一見するとムダとも思えるような楽しみを作り出したほうが、幸せを感じられるのではないでしょうか。そうした観点からも、新しい価値を提案していきたいですね。

 プロトタイピングに対する企業からのニーズは高く、Wonderful Prototypingの発表から現在までに多くの相談をいただいています。特に、若手の新規事業担当者からの注目を強く感じていますね。新しいプロトタイピングの在り方に意識が高い人たちでネットワーキングを進めながら、徐々に新しいプロジェクトが立ち上がればいいですね。

提供:株式会社電通デジタル
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2018年6月30日

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