さて最後に、今まで紹介してきたバックアップ利用をする上での”事業者の選び方”について考えてみたい。
バックアップやディザスタリカバリとしての利用では、本番システムほどの可用性は求めないにしても、ただ物理機器のコスト削減のみに注目した選定というのはあまり現実的ではない。
ポイントは3つ。
1.事業者の信頼性
2.移行・構築が容易であること
3.料金が適切であること
最終的には安心感や信頼感といった部分が肝になってくる。もちろん、単なる心証ではなくファクトを意識することが必要だ。セキュリティへの取り組み、SLAやホワイトペーパーなど事業者から提供されている情報などが1つの材料となる。なお、SLAについては数字だけではなく、計算式まで確認することをおすすめしたい。サービス稼働の定義は事業者によって大きく異なるため、どのような場合にSLAの対象になるのか事前に把握しておくことは、利用開始後の摩擦を避けるためにも重要だ。また、それに関連してサービスを受ける際のきめ細やかさといったサポート面や、これまでの実績も加味するべきだろう。
その他にも、事業者の事業継続性にも留意するべきだ。クラウドサービスにおいても、事業不振によるサービス終了というのは珍しくない。終了までの猶予期間が与えられないケースも有る。そういった場合、クラウド上に置いていたデータを取り戻すのに間に合わないことも考えられる。各事業者が提供しているホワイトペーパー等にてよく検討し、最後まで信頼できる事業者を選択することが必要だ。
移行・構築に関しては前述の通りだが、1点だけ補足しておきたい。それはデータセンターを選択可能なことだ。たとえシステムを二重化しても、本番環境と同一のロケーションにデータセンターがあるのでは対策としてやや弱い。自然災害起因による障害はロケーション全体に及ぶ。東日本に本番環境があるなら西日本にバックアップ環境を構築といったように、地域で分散できることが望ましい。
よくありがちなのが、単純に物理機器の価格と同一スペックのクラウドの月額料金を比較して、クラウドを割高と捉えてしまうことだ。実際にはバックアップデータを完全従量制のクラウドストレージに溜め続ける場合には、「使っていない部分」についても固定的に減価償却が発生する物理機器と比べると、スモールスタートの効果が顕著に出る。また、サーバーのスペックを柔軟に変更できることから、平常時の最小構成での費用と緊急時の本番環境に匹敵する構成と、といったように複数パターンでの費用算出を行い、システムのRPO/RTOレベルに合わせて適切なサービスを選択することが肝要だ。
加えて、実際にクラウドをバックアップとして活用している企業や、基幹システムをクラウドに移行した企業の声を聞いてみると、運用負荷の削減について多く聞かれる。調達に関わる諸作業からの開放だけではなく、運用負荷をいかに減らせるかというTCOにおけるコスト削減の観点が必要だ。運用に手間がかからなければ、それだけ新しいことに挑戦が可能となる。それはコストセンターと言われがちな情報システム部門においても例外ではない。例えば、昨今ワークスタイルの変革ということでモバイル機器の導入やテレワークへの関心が高まっているが、企業の業務プロセスに最適なシステムをコーディネートし、最適化するための目利き役となっていくことがこれからの情シスに期待されている。それにより企業に新たな競争力を生み出していくのだ。
また近い将来、クラウド利用はさらに加速し、本番環境のデータやシステムをパブリッククラウドに移行するケースが増えていくだろう。システムの性質に応じてクラウドを使い分けるという方法もあるが、多くの場合、まずは現在利用中のクラウドサービスの利用拡大という方向を検討することだろう。その際に、使い勝手の指標として注目したいのが「クラウド+ソリューション」である。クラウド(IaaS)を提供しているだけでなく、他の企業やSIerと連携したソリューションを提供している点に着目する。クラウドというとコストを考えがちだが、実はこのような様々なソリューションの提供こそ、将来を見据えた柔軟な企業システムを構築する上で大切なのである。
バックアップでも、ディザスタリカバリでも、小さくはじめるからこそ、逆に将来に渡って安心できるサービスを選びたいところである。
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