フレッツADSLでしばらく使ったときの感触をもとに評価しています。無難にま
とまった他社製品と違い、このシリーズは結構癖があります。そのため人によっ
て評価が大きく異なるようです。私はこの製品は合わなかったため今は使って
いません。

現在では後継機種(CATsW)が出ています。また、姉妹機のOPTもスループット性
能とハブ以外はほとんど同じと思われます。

機能・性能

IPマスカレード、DHCP/PPPoEクライアント、DHCPサーバー、静的IPマスカレー
ド、webブラウザ設定といった標準的な機能に加えて、ローカルルータ、SNTP
サーバー/クライアント、IPフィルタリング、WAN側MACアドレス変更、RIP1/2、
DNS代理、簡易DNS、syslog対応など、多くの機能を持っています。

特筆すべきはIPフィルタリングでしょう。最大64エントリのIPフィルタリング
は、IPアドレスやプロトコル・ポート番号だけでなく、TCPのフラグなどかな
り細かい設定が可能です。さらに、LAN←→WANの2方向だけでなく、ルータ自
身のDHCP/SNTPクライアント機能などにもフィルタリングをかけることができ
ます。ただし、フィルタリングの結果はどこにも出ません。syslogに出るのは
SNTPによる時刻合わせやPPPoEの進行状況程度です。

簡易DNS機能は、逆引きに対応していないなど、実用性は今ひとつです。

PPPoEを手動で接続・切断する手段がなく、しかもPPPoEのアカウントは1つし
か登録できないので、フレッツADSLでISPやフレッツスクウェアを切り替えて
使うには不便です。

性能面では、スループットは7Mbpsとなっており、ADSLやCATVで使う分には十
分でしょう。ただし、内蔵4ポートハブは10Mのダムハブなので、ハブとして使
うには注意が必要です。

設定

このシリーズでもっとも独特なのが設定方法です。一般的な製品では、ルータ
に内蔵の設定用webサーバーに対してwebブラウザでアクセスしますが、このシ
リーズでは、設定用の独自webサーバーをPC上で動かしておき、webブラウザで
そこにアクセスすると、webサーバーとルータが独自プロトコルで通信して設
定を行うという、風変わりな方式になっています。ちなみにこの設定サーバー
はJavaで書かれており、Javaアプリが動作する環境(JRE)が必要となります(誤
解しやすいのですが、Javaアプレットを使っているという意味ではありません。
サーバー自身が、スタンドアロンのJavaアプリケーションであるということで
す)。

このような方式のため、設定時のレスポンスは良いとはいえません。サーバー
が動いているかどうかいちいち気にしないといけないのも面倒です。TELNETな
ど他の設定手段はないので、リモートメンテナンスは困難です。また、設定変
更を有効にするとルータが再起動するのですが、これはPPPoEの再接続(DHCPで
あれば再取得)を伴うため、そのときの通信は切れてしまいます。IPフィルタ
リングや静的IPマスカレードの設定は、運用しながら随時変更することが多く、
そのたびに再接続になるのはかなり使いにくいものです。

リモートメンテナンスが困難なことや、設定変更で再起動・再接続してしまう
ことを考えると、サーバー運用には不向きといえます。また、メーリングリス
トでもよく話題になるのですが、FTPサーバーの公開には向かない仕様になっ
ています。

サポート

フレッツADSLなどPPPoEで使う場合は、出荷時のファームウェアでは問題があ
るため、更新する必要があります。私はフレッツで使っていて実際にいろいろ
問題があったのですが、技術サポートと情報をやりとりして問題を解析しても
らい、ファームウェアの更新という形で解消されました。この際のサポートの
対応はおおむね満足のいくものでした。

まとめ

設定の使いにくさが気にならなければ、通常のクライアント用途には十分な機
能と性能を持っています。しかし、このような特徴の強い製品を選ぶユーザは、
強力なIPフィルタリングやサーバー運用など、何らかのこだわりを持っている
ケースが多いと思います。そのようなニーズに十分応えられているかというと、
詰めが甘い感は否めません。

OPTは低価格ルータとしてはダントツの30Mbpsという高スループット(今では珍
しくありませんが)で売れましたが、CATにはそのような突出した長所もなく、
今ひとつお勧めユーザー層がはっきりしない製品といえます。