大学サークルの新歓活動もメッセンジャーで

 SFCでも4月の新学期はサークルの新入生歓迎(新歓)イベントが多数企画される。しかし勧誘の方法はSFCならではの独特なものだ。

 デジタルキャンパスと称される慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)では、日々、学生や教員の間で密なデジタルコミュニケーションが交わされている。無線LAN完備でノートパソコンを常備する生活を送っている人々から、近未来のコミュニケーションの姿が見えるかも知れない。

 SFCで誰かと連絡を取ろうと思ったら、インスタントメッセンジャーが早い。各教室や研究室はもとより、食堂や売店、池の畔の芝生に至るまで無線LANの電波が届いているキャンパス。学生も教員もノートパソコンを常時持ち歩いていて、授業中や会議中、芝生で寝ころんでいている時ですら、常にネットにつながることができる。そしてほぼ全ての人がメッセンジャーを使っている。

 授業中のケータイへの着信やメール受信があったとしても、ケータイを開くのはやはりはばかる。しかしメッセンジャーでの呼び出しなら、授業中にノートパソコンを開いているので、すぐに反応できる。それに何より無料だ。そんな理由から、ケータイに電話したりメールしたりするよりも、手軽なコミュニケーションツールとしてメッセンジャーが使われている。

 メッセンジャーでは自分のログインするステイタスコメント(ニックネーム)を自由に決める事ができる。ここには普通自分の名前を入れるのだが、名前の後に「○○@κ23」(教室名)や「○○@情報通信文化論」(授業名)、「○○@眠い」「○○@つかれた」「○○@カラオケいきてー!」など、自分の状況や心境でアレンジをするのが基本形。さらには名前もなしに「誰か、僕のケータイ知りませんか?」「イタリア語誰か一緒に取りましょう」という呼びかけをそのまま設定したり、「ロケットマン」と脈絡ない言葉をステイタスコメントに設定したり人も多い。

 地震があればみんな「地震」「怖い」などとステイタスを一時的に変えるし、収まればまた元に戻す。常に少しずつ変化するとてもインタラクティブなコンタクトリストになっているのだ。名前を入れない人が増えてくると、ウインドウを開かなければ誰が誰だか分からなくなるし、面白いステイタスコメントにはついつい反応して話しかけたくなってしまう。そうやって無駄にコミュニケーションを取りながら時間を潰す事も多々ある。

 ところが、4月になり新歓シーズンがスタートすると、途端にステイタスコメントが大人しくなる。「○○@3年」「○○@テニスサークル」というように、名前と学年や所属サークル名を示すものばかりに変わってしまう。いつも面白いステイタスコメントをつけている後輩に、これはいったいどういう事か尋ねてみると、「サークルの勧誘でメッセンジャーのアドレスを聞いて登録しているから」だそうだ。「ケータイの電話番号やメールアドレスを聞くよりも、メッセンジャーのアドレスを聞く方が抵抗なく教えてくれる」ので、上級生はメッセンジャー上で新入生をサークルに勧誘する。このため、勧誘というTPOにあわせてステイタスコメントもフォーマルなものになるというわけだ。

 自分は男だからあまり気兼ねなくケータイ番号を書いていた記憶があるが、やはり常に身につけているケータイの連絡先を教えるのに抵抗感を持っている人が多いのも事実。それに比べてメッセンジャーは、PCの前でしか人とつながらないため、抵抗感も低いのだろうか。しかし新入生を待ち受けるSFCでの生活は常にオンライン。ケータイ以上に連絡が取りやすいなどとは予想すらしていない生活スタイルである。

 電話のように時間を共有しながらコミュニケーションを取るため、コミュニケーション密度としては高くなる上、話しかけるきっかけは気軽だ。新入生のキャンパスライフをサポートしつつ、サークルに勧誘してしまう。メッセンジャーは、なかなか強力な新歓ツールとなっているようだ。

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