この記事は、DevLOVE Advent Calendar 2013 「現場」 の43日目の記事です。前日は kurobara さんでした。
自己紹介:
羽山 祥樹(@storywriter)と申します。インフォメーションアーキテクトとして、ユーザーの目線でウェブサイトをつくる仕事をしています。仕事の半分はユーザーエクスペリエンスの業務です。残りの半分は、ウェブサイトのシステム運用や、実際にコードを書いています。
ずっと昔の、まだバイト時代の、現場の話。
僕はある会社の社内制作部門で、その会社のウェブサイトを作成していた。
ある日、上司が、焦った表情でやってきた。
「XXX(当時の人気検索サイト)で、うちの社名が1位じゃない。すぐに1位にしてほしい」
聞くと、社長が、自社名をXXXで検索してみたところ、1位でなかったので、怒っているという。
僕は答えた。
「検索順位は、先方のロジックで決まるものです。すぐにどうにかなるものではありません。
ウェブサイトの順位を上げたいのであれば、サイトをしっかり作り込んでいくのが本筋です」
対策は、無いでもなかった。
当時の検索エンジンは、いわゆる「スパム」行為が効いた。
例えば、キーワードを、背景色と同じ文字色で、余白にびっちり埋め込む。
当時は、そういった「スパム」行為をしている会社はいくつもあった。
ただ、ウェブサイトの中身を良くするわけでもなく、ユーザーが気がついたとき、がっかりするような方法を採用してよいのだろうか。
僕には、それが良いとは、思えなかった。何より現場の制作者として、プライドが傷ついた。
僕は言った。
「スパムではなく、しっかりとしたウェブサイトをつくることを考えるべきです。
社長に、ちゃんと説明してください」
上司の答えは、社長が怒ってるから、とにかくやってほしい、というものだった。
その日の午後、僕は background:#ffffff の背景の上に、color:#ffffff の文字で、社名を山ほどコピペした。
Ctrl+Vをするたび、悔しかった。
数日後、検索結果で、その会社は1位になった。
僕は思った。
現場が納得できる仕事をするために、何をするか、決められる立場になろう。
あれから、10年以上が経った。
その過程で、現場をよくするには、ユーザーを理解するのが近道だと感じ、ユーザーエクスペリエンスの分野へと進んだ。
僕は今、ウェブ制作の上流工程から下流工程まで見ている。
ウェブサイトの設計もするし、技術部門にはコードの1行まで指導する。
当時に望んだ立場に、かなり近いところにきたと思う。
今、現場の若手が育っていく姿を見るのが、何より嬉しい。
一生懸命、教えて、応援して、彼ら彼女らがどんどん成長していく、それが本当に嬉しい。
いくらかでも、彼ら彼女らが納得のできる仕事になっていれば、いいなと思う。
DevLOVE Advent Calendar 2013 「現場」、明日は かつまた さんです。よろしくお願いいたします。
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羽山は今年、UX Japan Advent Calendar 2013 にも参加しています。まさに本日22日、担当日でした。あわせてご覧いただけると嬉しいです。