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政党のアクセシビリティ調査 ( + 気になった点を追加調査しました) - アクセシビリティセミナーレポート[2]

2008/08/13 07:50
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ミキ・オキタWebClip ウェブデザインのニュース

この記事のトピック

自民党・民主党・公明党・社民党・共産党のアクセシビリティ対応状況調査。

こんにちは。“時代の3歩先をねらうWeb屋さん”ミキ・オキタです。
このブログ「WebClip ウェブデザインのニュース」では、Webデザイン・Webマーケティングの話題をお届けしています。

2008年7月18日(金)、Webアクセシビリティのセミナーに参加した。その様子を3回に分けて報告している。

第1回記事 FLASHのアクセシビリティ/Webアクセシビリティ概論

第2回となる今回は、研究発表「評価ツールだけでは役立たない! ユーザー評価で分かった使えないアクセシビリティの実態」についてレポートする。
また、各政党のアクセシビリティ対応状況調査については、セミナーの短い時間では腑に落ちなかった点があり、僕が個人的に追加調査してみた。その結果もあわせて報告する。

研究発表「評価ツールだけでは役立たない! ユーザー評価で分かった使えないアクセシビリティの実態」

NPO法人ハーモニー・アイを代表して村山 ひでこ氏が発表。ユーザテストとアクセシビリティ評価ツール「富士通 WebInspector」によるチェックを同一のサイトに対して実施し、その結果が大きく食い違うことから、ユーザテストの必要性を説明する主旨の内容だった。チェック対象は、自民党・民主党・公明党・社民党・共産党の各政党ウェブサイト。

アクセシビリティ評価ツールには限界がある

  • 2006年 英国DRCの公式調査で、評価ツールの結果で「不適合」と判断されたものの95%は、実運用上は問題にならない箇所だった。
  • 村山氏が、会場に質問。どんな評価ツールを使用しているか?
  • IBM aDesigner、富士通 WebInspectorが多い。

ユーザテスト「後期高齢者医療制度への各政党の政策を調べる」

  • 音声ブラウザ「IBM ホームページ・リーダー(以下HPR)」を使用して、実際に各政党のウェブサイトを視覚障がい者に操作してもらい、アクセシビリティ対応度を調査した。
  • タスクは「後期高齢者医療制度への各政党の政策を調べる」とした。
  • また、評価ツールの結果と比較するため、評価ツール「富士通 WebInspector」で事前チェックした。結果は次の通り。
    • 自民党:165エラー
    • 民主党:171エラー
    • 公明党:13エラー
    • 社民党:306エラー
    • 共産党:67エラー

自民党のユーザテスト結果

  • アクセシビリティの対応状況が悪すぎて、ユーザがサイト内を回遊することができなかった。ユーザテストができなかった。
  • 具体的には、グローバルナビゲーションがALT設定されていないため、リンク先のファイル名が読み上げられてしまい、内容が理解できない。このため、音声ブラウザでは何がどこにあるか判断ができず、サイト内の回遊ができなかった。
  • 自民党ウェブサイトの画面上部には「自民党は、音声読み上げソフト等に対応できるWebページづくりを目指しています。」という言葉が掲載されている。

民主党のユーザテスト結果

  • アクセシビリティの対応状況が悪すぎて、ユーザがサイト内を回遊することができなかった。ユーザテストができなかった。
  • 具体的には、ナビゲーション・スキップ(音声ブラウザ向けのページ内リンク)が設置されていない上に、トップページで本文より先にサイドバーが読み上げられるため、本文に辿りつくまで長い時間(=ユーザへの多大な心的負荷)がかかりすぎるため。

公明党のユーザテスト結果

  • それなりにアクセシビリティに配慮されたつくりになっている。
  • テストした5政党のうち、唯一、「Webアクセシビリティの考え方」というページを用意している。

社民党のユーザテスト結果

  • 政党名がHPRで正しく読み上げられない。「社民党」が「ヤシロミントウ」と読み上げられる。人名のルビがない。
  • 配色が青と白だが、コントラストが薄い。「富士通 WebInspector」の大量のエラーもこれが原因。

共産党のユーザテスト結果

  • 人名のルビがない。志位委員長の名前がHPRで正しく読み上げられない。「志位」→「ココロザシイ」と読み上げられる。
  • JCPという単語が出てくるが、知らない人には何のことかわからない(日本共産党の略称)。
  • ページごとに情報の構造が違うため、情報の所在を理解することができず、迷ってしまう。

5政党に共通した不適合部分

  • リッチコンテンツ(FLASH)が利用できない。トップページの政策部分や、動画ファイル(インタビューやYouTube)。

ユーザテストの結論

  • 結論:「評価ツール」と「アクセシビリティが確保できていること」はイコールではない。(筆者注:上記の内容だけ見ると、なぜこの結論に至るのかわかりづらい。詳細は後述)

なお、この調査結果は、NPO法人ハーモニー・アイのニュースリリースでも確認できる。

ニュースリリース:NPO法人ハーモニー・アイ「日本の5大政党を調べる」

独自に追加調査「各政党のアクセシビリティ」の気になる点。

ここからは僕が独自に追加調査した内容だ。

ハーモニー・アイの発表は興味深いものだったが、短い時間での発表だったせいか、いくつか気になる点があった。そこで、個人的にセミナーの内容を検証してみた。

「評価ツール」と「アクセシビリティが確保できていること」はイコールではない?

まず第一に、「評価ツール」と「アクセシビリティが確保できていること」はイコールではない、とされていた。しかし、村山氏の発表にあった数字だけ見ると、「WebInspector」の結果とユーザテストの結果はむしろ一致しているように見える。例えば自民党は「WebInspector」で165エラーで、ユーザテストでも実際に利用しづらかった。

そこで、僕自身でも実際に評価ツール「WebInspector」で各政党のチェックを実施し、ユーザテストの結果と比較してみた。その結果を以下に記載する。WebInspectorの指摘は件数が多いので、わかりやすいよう集約して記載した。

政党 WebInspectorの指摘 ユーザテストの指摘
自民党
  • 画像のALT抜け。
  • キーボードでは操作できないJavaScript。
  • 別ウインドウ表示。
  • 画像のALT抜け(グローバルナビゲーション部分のため致命傷)。
民主党
  • 画像のALT抜け。
  • キーボードでは操作できないJavaScript。
  • 別ウインドウ表示。
  • 色のコントラスト不足。
  • 文字のサイズが固定。
  • ナビゲーション・スキップが設置されていない(致命傷)。
公明党
  • 別ウインドウ表示。
  • なし。
社民党
  • 色のコントラスト不足(エラー300件のほとんどがこれ)。
  • ルビがないため正しく読み上げられない単語がある。
共産党
  • キーボードでは操作できないJavaScript。
  • 色のコントラスト不足。
  • ページの情報構造が一定しないためユーザが混乱する。
  • ルビがないため正しく読み上げられない単語がある。
  • ルビがないためユーザに意味のわからない単語がある。

見ての通り、評価ツール「WebInspector」が指摘した点と、ユーザテストで導かれた点には、一致した点もあれば、ズレている点もある。とくに民主党や共産党のケースを「WebInspector」はチェックできていない。また、細かく見ていくと、自民党の画像のALT抜けも、JavaScript内に原因が存在していたため、「WebInspector」のチェックでは実は検出されていなかった。

評価ツールの結果だけを頼りに制作を進めるのでは、アクセシビリティ上の重大な問題を見逃す可能性があることがわかる。ハーモニー・アイの発表どおり、「評価ツール」とユーザテストの結果(=実際に使って「アクセシビリティが確保できていること」)は異なる。

なお、誤解が無いように書いておくと、「WebInspector」は良いツールだ。僕も必要に応じて利用する。ただし注意が必要で、「WebInspector」のサイトには次のように記載されている。

JIS X 8341-3の「5.開発および制作に関する個別要件」の計39項目中、WebInspectorでは22項目の診断が可能です。

「WebInspector」がチェックできるのは、あくまでも上記の範囲だ。「評価ツール」は上手く利用すると便利だ。しかし、これを誤解して「評価ツール」だけに頼ってはならない。

各政党で問題になってる具体的な内容は?

もう1点、村山氏の発表で気になったのは、ユーザテストで各政党が指摘された具体的な原因だ。自民党・民主党は、本当に「検証不能」と言ってしまって良いほど酷いのだろうか。また、共産党の「ページの情報構造が一定しない」はどういう状態だろうか。検証してみた。

自民党

自民党について、手持ちの音声ブラウザで試したところ、確かにグローバルナビゲーションが「index/seisaku.html、index/giin.html、index/kaiken.html・・・」とファイル名が読み上げられていく。

原因はリンクが設定された画像にALTが記述されていないため。画像にALTがないと、HPRはリンク先のファイル名を読み上げる。

「自民党は、音声読み上げソフト等に対応できるWebページづくりを目指しています。」という文章はグローバルナビゲーションのすぐ前に配置されている。そのため音声ブラウザで読み上げていくと「音声読み上げソフト等に対応できるWebページづくりを目指しています。」と言われたそのすぐ後に「index/seisaku.html index/giin.html・・・」と続いてしまい、「言ったことと、やっていることが違う」印象を強く受けるはめになる。

ソースコードを見ていくと、グローバルナビゲーションはJavaScriptで生成されている。不思議なことに、JavaScript無効時(noscriptタグ)の部分には、正しくALTが記述されているグローバルナビゲーションが実装されている。

なぜこんなコーディングになっているのだろう? 推測される一番の原因は「実際の音声ブラウザでのテストをしていない」可能性。グローバルナビゲーションは各ページにある主要なナビゲーションなので、日々、音声ブラウザのテストをしていたら、いくらなんでもこの部分の不具合を見逃すとは考えづらい。

民主党

民主党を音声ブラウザで試したところ、左右のサイドバーを延々と読み上げる。それからやっと本文にたどり着く構造になっている。

本来は、ページ上部にナビゲーション・スキップ(音声ブラウザ向けのページ内リンク)を設置し、音声ブラウザの利用者がグローバルナビゲーションやサイドバーを飛ばして本文へ飛べるようにするべきだ。

しかし、他の政党も調べてみると、公明党以外の4政党は、いずれもナビゲーション・スキップが設置されていない。

民主党も、何ページか遷移してみると、下層ページではサイドバーより先に本文が読み上げられる。民主党だけ「検証不能」と責めるのはちょっと酷のような気がする。

ちなみに、読み上げ順が何故このようになっているのか調べたところ、民主党はTableレイアウトだった。アクセシビリティ上、Tableレイアウトは望ましくない。

ただし、この点でも他の政党も調べてみると、自民党と共産党もTableレイアウトだった。対して公明党・社民党はcssでレイアウトされている。

共産党

共産党で音声ブラウザを試すと、グローバルナビゲーションやパンくずナビゲーションがないことに気がついた。自分がサイト内のどこにいるのか、わからなくなることがあった。また、ページによってはフッタの内容も統一されていないので、同一サイト内にいるのか、何かサブサイトのようなところに遷移してしまったのか、わからなくなるときがある。

音声ブラウザの利用者にとって、ページはできるだけ定型の繰り返しであると閲覧しやすい。ページのどこにどんな情報があるか、想像がつくからだ。ページが変わるたびに細かく形式が変わると混乱する。

ちなみにソースコードには、Adobe系の一部のオーサリングツールが吐き出す独自タグ(csscriptdict)が混ざっている。

セミナー資料はダウンロード可能。

当日の資料がハーモニー・アイのウェブサイトに公開されている。

【セミナー資料】

発表資料ダウンロード

セミナーレポート、次回はセミナーの最後に開催されたパネルディスカッションについて報告する。<つづく>

【関連リンク】

NPO法人ハーモニー・アイ

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※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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