お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

デジタル化のパスカル・パオリ

2009/10/07 22:44
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
ブログ管理

最近のエントリー

タイトルについては、コルシカ島の歴史を眺めて頂ければ。

さて、という訳で、エニグモのコルシカ問題である。

突っ込まれる余地が無いかというと残念ながらそんなことはないのだが、揚げ足とってこきおろしても仕方が無い。それよりも、非常に象徴的な事案と思えたので種々の業界課題の根深さを改めて確認する感じで。

ざっとの経緯としては、こちらの記事が良くまとまっている。今日時点の経緯と構図を読み取るには十分だろう。

結論から書くと、出版社側の視点に立った場合、エニグモ(コルシカ)に風当たりが強いのは必然として起きる動きと言える。ポイントを絞ると要は2点で、

  1. (分かりやすいところで)公衆送信権、複製権など著作権の取り扱いについての配慮が足りていない
  2. 出版の業界慣習に沿っていない

という二点で、実務的にも感情的にも強い反発を受けている。一部には法的アクションを既に検討している出版社もあるとのことだが無理からぬことだろう。その辺の雰囲気はこちらの記事を。

メディア出版がコンテンツを大事に守り育てているというのはいわずとしれたところであり、特にデジタル周辺での配信や2次利用の許諾を取るには、非常にハードルが高い。その昔コンテンツのデジタル配信の事業にタッチして各所とやりとりしていた際、娘を泣く泣く里子に出すような言語道断感を各所から感じた。理屈や値段というよりも、聖域に触れたときのような反応レベルとなる。とてもしれっと出来るようなものではない。雑誌にしても一冊作るのに4ケタ万とかかかったりする世界があっちこっちにある。デジタルにすれば便利だよね、というライトな言葉との相性は(そのままでは)あまり宜しくない。

というところで、サービス設計や導入手順のところから推察するに、あちこち配慮が足りてなかったのでは?というところが窺い知れる。

さて、上記のところを基本として踏まえ、本題はここからである。

では、圧力かけて止めるなりなんなりしたらそれで話が終わるかというと事はそう単純ではない。確かに、リーガル上の問題や仁義の問題は大きく、事業として考えると普通に致命傷レベルである。であるが、それよりも重いのは、業界としてデジタル化に対応しなきゃいけないのは薄々分かってるけれども良い形を結局見いだせてないということに行きついてしまう。

これは更に、出版社ふがいないというステレオタイプな議論に単純には落ちない。Kindleが海を越えて日本で売られるという報が今日同時にあり、待望論と同時に「日本何やってんの」という声が各所でつぶさに観察されたが、内外で行われている既存メディア(テレビ、新聞、出版)のデジタル移行は難を極めており、数少ないケースを除くと行き詰ったものや見通しの結局立たないものが乱立するなど前途は必ずしも明るくない。毎日新聞の公的支援論あたりは、いうにしてももうちょっと手はあるだろうにというコメントは出てきてしまうものの、気分的なところは同意したくなる面もある。

こういう対立構図を見ると、勢いどっちが正しいか勝つか負けるかという議論になってしまいがちだが、出版社サイドからみて仮に勝ったとしてそのあとどうするのかという問題は残る。コルシカを駄目と言って抑え込んだところで、環境が変わりつつある現実は変えられない。どう対応を進めていくのか。Kindleを先に出されてる場合かどうか、という根っこの問題は変わらない訳である。マクロ環境はこんな感じでマージンとコスト構造の悪化トレンドは変わらない。そして、悪化に対抗出来るだけのカウンター戦略は業界としては十分に打てていない。デジタル化された形でのサービスを何かちゃんと考えない?という意味合いでは、むしろ心情的にはエニグモの姿勢には共感したいところがたくさんある。

メディア出版がどう推移していくか、というシナリオ議論を近辺で行うと、寡占化集約の後の収益性改善という典型的な業界整理再生型のターンアラウンドシナリオを読んでいる人もちらほらといる。ありうるシナリオだとは思うが、今の流れでそっちに振れていいのか。地方、中堅をはじめとしてかなり厳しい淘汰過程も考えられるところ、残ればなんか福があるだろうという期待のみを支えとしていいのか。外から見ているファイナンシャルプレイヤーならともかく。

という感じで、コルシカの件で各所小さく祭りっていたのだが、単に祭りってみんなで行司裁定をして終わっても仕方が無いなぁと思えるところがあったので、認めてみた。勝つってのは、どっちかがもう一方を打ちのめしてとかではなく、コンテンツを作り、紙かデジタルかミックス分からないが媒体か代替物を維持運営し、ユーザーに引き続いて届けられるモデルと見通しを見出すことだろう。個別の事案はそれとして見つつ、この基本ラインのところは忘れないようにしたい。

他、今日はお客さん先に向かう車中で、付録付きの女性誌が最近増えてること、想定される戦略とコスト構造についてなど議論していたので、その辺を絡めても良かったのだが、とりあえずタイトルのところをさっくりと。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー