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テレビ各社のそのビジネスモデル転換はアリなのかナシなのか

2009/06/01 18:11
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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さて、前回メディア(テレビ)の決算を二社ほどさらっと見たが、積み残しをもう少し。
 
テレビというか放送事業のおかれている状況をシンプルにシンプルに捉えると以下だろう。

  • 分かりやすいところで「日本の広告費」の経年変化などに出ているように、メディアとしてのプレゼンスが相対的に増えている。(ネットとモバイルが他を食っているというのが基本構図だが、では伸びてるところが軒並み天国かと問われるとどうも雲行きが怪しい気配も。。。というのはまた別の話)
  • 視聴率を経年で追っていくと、波は打ちつつも着々と冴えなくなっている
  • 景気サイクルの底の方、不況期では固定費を賄えなくなりつつあり、放送事業は構造的な赤字業種となりつつある。心のどこかでアナリストは、鉄鋼や化学と似た気分で見始めているかもしれない。
  • 無い袖は振れない、ということで制作予算を削ったりという動きが年々高まっており、今4月のクールの前後ではラジオも合わせてびっくりするようなタレントの入れ替えや降板話があちこちで出ていた

いろいろと小難しい専門業界トピックよりも、この辺がさりげなく重くなってきている。

とか見ると、何のことは無い事業会社でよくあるコスト削減努力の風景とオペレーションとしてはさして変わらないのだが、やはりそこは分かってはいても「あのテレビが・・・ついに・・・」という感情が特に業界に近い人ほど心のどこかにあるからだろう。

 

マスメディアがマスメディアであるには 

いわゆる、マスメディアという言葉を成立させるためには、放送設備の保有維持及び全国ネットワークの維持、番組の制作及び調達をある規模で行わないとならない。割と固定費のかかる装置産業の側面とある組織規模が必須となる。つまり、商売を維持するのにある資本サイズと事業規模が絶対的に問われることになる。売上げが減ったからその分順次固定費を減らしていく、という訳にはいかない。
 
このあたりは重力みたいなものなので、急速且つ劇的に技術イノベーションと運用の簡素化が進まない限り、抜本的に解決策は無い。そして、そんな都合の良い展開は待ち構えてない。
 
ちょろっと脱線するが、「じゃあもう光ネットワークでやっちゃおうよ」といいたくなる人があちこちにいそうな感じだが、このアプローチについては、

  • 日本全国のラストワンマイルどうするの?
  • エリアごとにサービス格差が出てもいいの?憲法との整合性は?
  • 配信コストがぶっちゃけどれくらいになる?(***コムの方と先日ちらっと・・)
  • 配信サーバーのコストってどれくらいになる?

というあたりが現実問題として重い。ありえないとは言わないが、パンが無いならケーキを、みたいな議論にもなりかねない。課題は経済理論がうんたらではなく、もう単純に「コスト」である。物量である。
 
というところが、業界裏話とかまで行かずとも、財務の数字を触ってみてても出ている。
 

テレビは中立か非中立か

 
要すればやっぱり、なんとか稼がないと!というところがまず考えるところとなる。コスト側をダイナミックにいじれないのなら売上げのトップラインの側を考えていくしかない。ターンアラウンドの基本。
 
前回も多少触れているが、各社が試みてるのは、放送事業外、あるいは関連収益を上手く上げれないかというところとなる。手としては、

  • 番組資産をパッケージ化しての販売。ドラマや人気番組のDVD化など。ビジネスモデル的には、「すべらない話」あたりの設計がベタなところだが面白い。ついでに番組も面白い。
  • 関連イベントの主催支援。後援、スポンサードというよりは、イベント収益を取りに行くスタンス。
  • 社屋近辺をエリアブランド化させての不動産収益の獲得。イベントとも絡む。言わずとしれたお台場、最近追いつけ追い越せの赤坂、ビジネス街と一体化している汐留近辺など。汐留やお台場については、東京の海側の開発計画とも絡んでいるのでテーマが複層的になっており面白い。
  • 通販番組の運営。
  • 映画を中心とした大型コンテンツへの積極参加。

というあたり。まぁ気持ちは分かる。
 
分かるのだが、公共財であるはずの電波の枠をどの程度自社都合で運用してよいのだろうか、異論及び程度論がぽつぽつ出てきている。
 
不動産はやっているところとやっていないところ、成果の出方で分かれるので飛ばすとして、各社が共通して収益期待を寄せているのが、最後の大型コンテンツである。そして、これらのヒットに命運がかかりつつあるところから、各社過剰なまでの宣伝を自社及び紙も含めた関連ネットワーク媒体でかけることとなる。
 
例えば、一時期テレ朝を見るとずーっと相棒の話をしており、最近TBSはこのところルーキーズ漬けである。なんかしょっちゅうあのユニフォームを見ている気がする。フジはこのところ超大型を仕掛けていないところから若干静かな印象も受けてしまうが、踊る大捜査線の三作目が予定されてるところでどう動くかがポイントか。
 
というところで、事情も分かるがさすがに食傷かも、という気分がZAKZAK経由でちらっと漏れてきている。

 なりふり構わぬTBSに、麻生氏も「ヒットさせる自信がないのか。それにしても節度がない。テレビ局は私企業だが、電波は国民のもの。公の財産を食いつぶしている」と苦言を呈する。

ちなみに、補足するまでも無いだろうが、文中の麻生氏は首相ではなく、作家さんの方である。さらっと試し撃ち。様子見観測気球。
 
経営的には、広告の枠だけを売ってフローの上澄みで稼ぐのではなく、内製化を進め、資本リスクを取りということで思い切った策を取って頑張っているところとなる。流通大手がPB率を高めているのと(若干無理やりだが)並べて考えてみてもよい。技法手法論だけ語ればありと言えなくはない。
 
なのだが、やはり電波の許認可というところからすると、「それナシなんじゃない」というところにいるのは(あるいはいるべきなのは)総務省だろう。電波は原理論からすると「みなのもの」である。映画の番宣を日夜流すための独占利用の立場ではない、というのが彼らの言い分だろう。
 
というところから、いい加減単独ではどうにもならなくなってきている放送事業と周辺事業のOKラインをどの辺に定めるかというのが鋭く対立している。この辺の論点だけで基本シナリオを描くと、

1)大規模な業界再編が起き、存続企業各社の収益性が回復する。
2)副業のラインを定めて(緩めて?)どこまでならOKか行政側と調整して引きなおす

というところに集約される。ちなみに、

3)なんとか現状を維持する

という流れも理屈の上ではあるが、現実には、おそらく体力の無いところからじわじわと追い込まれていくだろうことから、中長期的には1)に収斂していくと考えた方が素直となる。
 
その他にも放送業界特有のテーマは最近のトピック諸々もあるが、これらの時事トピックに踏み込まずとも、主要数字と経営状況をさらっと眺めても大きな事態にやはりなっているというところで。こうしてまとめずとも直感的には見てれば分かるところであるが、数字にすると重い。幾らごまかして目を背けようとしても逃れられるものではなくなっている。
 
そして、こういう基本課題が表面化しているときの問題解決というのは一筋縄ではいかない。チャプター11が事実上決まったGMにしても調整に1年以上かけているのである。年単位くらいの変化速度になるだろう。関係官庁含めてどの程度動くのだろうか、この辺。

コンテンツと流通の話を後半、と目していたが幕間を書いたら長くなってしまったので、とりあえずここまで。コンテンツはまた機会があれば書くとしましょう。(と、ファイナンス周辺のところも触ってませんが、これも同じく機会があるよなら)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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