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CNET Japan ブログ

メディアにまつわるエトセトラ

2009/05/25 10:49
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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このところ、メディアテクノロジー産業が今後どうなっていくのか、どういうビジネスモデルになり、どういう利益構造になっていくのか。更にはぶっちゃけどの辺が競争に勝って行きそうか、という問い合わせなり相談打診が増えている。お隣というか弊社メンバーのクロサカのところにも通信周りで似たような話がしょっちゅう飛び込んできていたりと、そういうご時勢になってきている様子である。
 
事業会社側での設備投資動向に(当然販管費も)急速なブレーキがかかったことから、業界の構造転換が促される形になっており、資本レベルの動きも激しい。今回のテーマとは異なるが、08年は急速な資本市場の冷え込みと円高が重複したことから、国内大手有力企業の海外企業への資本参加が特に目立った。地方のメーカーは中堅どころの企業の国内での生き残り模索型のM&Aもしずしずと進んでいる気配であり、資本筋も事業筋も頭を悩ませるタイミングだろう。

というところで、産業連関や取引構図関係も意識の片隅に入れつつ、各社の置かれている状況を整理したりといったことを進めている。見れば見るほど、あちこち悩ましい。とりあえず、本稿ではテレビを少しばかり。
 
 

テレビ業界の決算動向

今期の決算を見ていて、あちこちで記事にもなっているが、本丸の一角として気になるのがテレビという商売が今後どうなっていくのかについて。世知辛い話や、逆に面白い話も各筋からちょろちょろ小耳に入っているが、それは今回さておいて、公開情報、特に財務系を軽く眺める程度を分析ターゲットとする。(簡単な)ケース分析は後述するとして、全体はこんな感じ

この図のレベルからだと、フジと日テレを除く他はどうも辛そうな気配がしてくる。
 
各社の状況を決算短信を中心に財務資料ベースで確認すると傾向としてこうなる。

  • テレビという商売がきつくなっているのが数字に出ている
  • 単体事業では固定費をまかなえてなくなってきている様子。
  • つまり、長期的な維持可能性に疑問符がつきはじめている。
  • 利益が出てるところは副業(放送の広告収入以外)での利益貢献が大きい
  • 軒並み大型コンテンツのヒットの有無がIRポイントとして出されている

媒体広告ではない事業、具体的にはコンテンツ制作販売や不動産、物販(通販)といったところの収益を是とするか非とするかというのは意見が分かれるところだろう。総務省的にはいまのところ、放送コンテンツについては、広告枠の総量規制という形で、駄目とは言わないがあまりやりすぎはいかん、というスタンスを取っている。
 
 

TBS、テレビ朝日のケース分析

 
分析といっても、財表を中心としてさらっと眺める程度に留める。デジタル化などの政策要因が大きいのは言うまでもないが、各所で識者の方が喧々諤々されているので、あっさり譲って「で、それはそれとして実際の数字はどうなのよ」というのを眺めてみたい。また、不穏な数字の読み取りもあからさまな場合を除いて控える。

○TBS(東京放送)

ニュース記事で出ていたのはこんな感じ。テレビ局がついに最終赤字に、というところが素直にニュースバリューといったところだろう。

というところから、早速短信を眺めてみる。対象はもちろんホールディングとなる。

PLを見ると、売上高は維持できている。景気の落ち込みを考えると、悪くないところである。しかし、利益を見ていくと、営業利益から軒並みマイナスで、特に経常利益から当期利益に行くにつれ率が悪くなっている。つまり、売上の質が落ちている。よってROなんちゃら系はゆるゆると悪化しており、10年スパンの長期分析をしてもこの傾向値は変わらない。内訳としては、テレビラジオ減、イベント及び販売増、不動産大幅増、となっており、「ここはやっぱり赤坂の不動産屋さん?」という世の中の突っ込みは分かる。しかし、規模としては80億弱と映像文化事業の120億よりはまだ小さく、言うほど不動産屋さんという訳ではない。同じ目線で見ると、東宝東映も不動産屋さんになってしまう。
 
純利が小さい原因を探ると株式の特損が入っている。ここは持ち合いから例の楽天騒動など、キャピタルマーケットが大きく落ち込んでいるので仕方が無い面もあろう。保有内容を細かく見ないと精度の高い評価は出来ないため割愛。よく知ってる方は主要グループ企業の顔ぶれを思い出してそれぞれの事業特性を頭で表式化して頂ければ概ねの気配は分かるかと。とはいえ、特段問題が無いとみるのなら、純利をベースにして期毎の分析は避けた方が良いかもしれない。

BSの資産側は投資有価証券のところ以外は大きく動いた感じはない。比率分析をすると細かくは出てくる可能性はあるが、遠目で眺めたレベルではさして気にならない。BS右側は自己資本悪化傾向。全体からすると、パイオニアほどギリギリと悩むレベルには至っていないが、本業の悪化傾向が続いてることを踏まえると良いサインではない。
 
今後の収益動向は、メディア事業の収益と不動産事業の収益サイクルにコンテンツ事業のリスク特性を加えたような形に落ち着いていくのだろう。経営課題は、業界軒並みそうだが、固定費をどうするかである。
 

○テレビ朝日

さて、では数値の悪化傾向が気になるテレビ朝日も合わせて。見たのは同じく短信

PLは売上げ横ばい、営業利益経常利益純利が減少、そして、純利がマイナスというところで悪化傾向。純利マイナスの原因はやっぱり特損。文章的には、

特別損失に投資有価証券評価損や固定資産の減損損失を計上したことや、繰延税金資産の一部を取り崩したことなどにより、当期純損失は17 億1 千6 百万円となりました

となっている。この市況なら仕方がないといえば仕方がない。

セグメント別で見ると当然のごとく放送事業が損失、音楽出版は小さくプラスを維持、その他映画やイベントは軽くプラス。TBSと違うのが放送事業以外の商売の規模が小さいので減りをカバーできないというところとなる。10年ほどの長期分析にかけると、景気の谷で固定費を賄えなくなっている構造が浮かんでくる。好況時に取り返す、というところが頭打ちになってるとしたら、悪化時に損益を下げておかないと長期的にはもたない。事業構造の作り変えに即手を打つべしということになる。その他事業が放送事業の十分の一くらいしかないという状況では、ヘッジの役割を果たしきれず、且つ事業の中身も本体のメディア力に緩く連動しているのは言うまでもない。

BSは少しスリムに自己資本比率は変わらず。詳しくは後で見るとして、ぱっと気になったのが投資CF。経常利益の10倍近いお金が出て行ってしまっており、大きな買い物か何かの穴埋めをした気配がする。見てみると、

投資その他の資産は、当社のその他の関係会社である株式会社朝日新聞社株式を取得したことなどにより

ということで、CFの明細でも「投資有価証券の取得による支出 △27,560」となっててほぼ合う。他リースが動いたりしてるが軽く割愛。事業体として気になるのは、朝日新聞って財務悪化中では?という一点である。

BSが小さくなったのは、流動資産が原因。動いたのは売掛が減ったのと短期運用の株式くらいなので流す。掛の減少が販売力減=販売フローの減少を意味してるのでは無い限り、ここはむしろ回収状況が良くなったと解釈したらポジティブ要因となる(が、フローでは?という疑念がどうしても)。

というところで、期毎をそのまま分析するよりも数期の移動平均と傾向値を取って、ビジネスモデル自体の検証をしたい雰囲気となっている。
 
以上、いずれにしても、番組作ってCM流してという伝統的なテレビの商売はやりづらくなってるのが分かる。そして、固定費どうにかしないと、と思ったところで地デジってコスト効率よくなるんだっけどうだっけ?という問いが出てくることになる。
 
というところで、固定費とファイナンス設計のところに進みたいのだが、ひとまずここまでで一区切りとする。また次回

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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