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CNET Japan ブログ

クラウド時代の事業プランニング事始め

2009/05/01 18:39
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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お隣Blogの江島さんが米国で展開していたLingrとRejawのサービス停止についてのアナウンスエントリを上げている。米国子会社清算の動きについてはちらと小耳に挟んでいたのでそう遠くないうちにこのような展開になるだろうとはなんとなく想像されていた。
 
まずはおつかれさまでした、という一言しつつ、書かれている内容から、幾つかのことが思い起こされているので頭を整理しつつメモしておきたい。
 

競争が個人にシフトするかという話

 
田口元の「ひとりで作るネットサービス」探訪、という連載が成立してしまうくらい、最近のネットのサービスは少人数、ときには一人で作られて出来上がったというものが少なくない。一昔前に言われたムーアの法則うんちゃらとかチープなんちゃらとかいうところからもう一段二段事態は進んでるように思える。

それで、上記のようなもろもろで何を言いたかったかというと、この分野では「企業の競争相手が個人になる時代は目の前まで来ている」ということです。スタートアップ企業を作って数名で作るのと、一人の個人が副業で立ち上げるのとでは、最終的に出てくるモノの差がだんだんなくなってきており、単に「かかるコストだけが100倍違う」ということになりかねない、と思うのです。

このあたりの、固定資産周りを中心として事業化と維持のコストが小さくなったことをどう受け止めるかという話は、先日国内の大手VCの若手の方とも議論をしていた。事例として並べていたのは、岩佐氏のところのCerevoで、ここも企画機能とコアのコアの設計に特化し、商品化へのテクニカルなところ多くと生産は全部社外に出すといういわゆるファブレスを推し進めたタイプの事業設計を取っている。分野と枠は違うが、これも、個人で戦う世界というのに近い。
 
これらは幾つかの市場、特に半導体に関わった製品、いわゆるPCからデジカメ、AV系を中心とした一部のデジタル家電まで(日本市場だけを見ると白物はまだ入らないものが多いと思われる)緩やかな意味ではしばらくトレンドとして出てくるだろうとのところで緩やかに意見としては合意された。
 
参入がしやすくなったというのは、一見いいことでありみんなチャレンジしようよ、という発言もあちこちで聞く。個人として見ると概ね間違いではないだろう。
 
では、事業としてみるとどうだろうか。参入がしやすいということは当たり前だが入ってからの競争は激しく、商売として安定させるのは難しくなる。例えば、ここしばらくBlog関連&周辺サービスでサービスストップの流れが出ていた。映像配信だとソニーのeyeVioが記憶に新しい。ものすごく単純な(準)当事者印象になるが、事業家経営者の側からしてこの状況変化は本当に幸せになれる流れなのだろうか、アイデア一発ですぐひっくり返りかねないのが今の勝負とかいうことになるのなら、一旦勝ってもそれはひたすら暫定に過ぎないし延々マラソンで辛いだけじゃないんだろうか。とりあえず、ベンチャーで一発当てれば俺勝ち組、みたいな単純な物語は終焉を迎えてそうな気配も感じる。

 
詳しい話は互いの守秘義務や手の内の話になってしまうためにここでは書けないのだが「投資家としてはどうだかねぇ」という感じの上記某氏との議論であった。
 
間違いなく言えることは、

  • 入り方が変わった、やり方のバリエーションが増えた
  • 勝ち方のバリエーションが増えた
  • (当然だが)勝てる率が安直に上がった訳ではない
  • お金の絡み方、資金をどこでどう得て回すかは大きく変わってる可能性
  • いわゆる00年から04年くらいまでテンプレ的に言われた国内のベンチャーの経営手法にはこだわらなくて良いかも

というところまでが本件で影響を受ける範囲となる。この話はクラウドやらOracleのSun買収の話にも繋がっていくのだがそこは一旦パスして。
 
事業モデルと勝ち方の検討については、よりはっきりしっかり作っておかないと表向き競争がきつくなる分埋もれやすくなるから経営能力への要望度は上がってるところはある。むしろ終わったのは、初期資金を集めて頑張ればベンチャーなんだ勢いでいけばいいんだというストーリーなのもしれない。バーンレートと自分達が戦ってる競争相手は「ま、別にこれが上手くいかなくても」と悠々と回しているという構図になる訳で。
 
ちなみに、最近マッキンゼーの古い資料が再販されていたので久々に眺めて昔のPC市場の立ち上がりの状況分析ケースを読んでいたのだが、上の競争構図と似たようなところが扱われていた。市場が伸びてるし入りやすいからといってただ参入っても儲かんないよ、というのがアドバイザリーメッセージとして成立するのは今も昔も変わらないらしい。
 

市場動向と参入タイミングのパターン

 
もうひとつ考えていたのは、市場動向と参入パターンにどういうセオリーを見出せばいいかという話である。
 
江島さんのモデルは、toBに応用展開させない限りは、典型的なネットサービスでありまずはユーザーを集めてという集客側の成長率が事業のKPIとして重要となる。技術力やサービスの出来、というのはこの指標を成立維持加速させるための手段変数となる。
 
分類としては、(こういう分類を事業プランに適用させる人を見ないので伝わりにくいかもだが)トレンドフォローのビジネスモデル。インターネット市場、利用者の拡大とそのニーズ変化を上手く捉えて「次はこれが来る!」というテーマを的確に掬い取り流れと波に乗っていくという方向感になる。波を読み、大きな波に乗って波より少し早く急流でバランスを崩したライバルを尻目に最後まで生き残れるとヒーローになれるという構図である。いわゆる、ビジョナリーという単語が成立する事業分野。市場がこれから生まれ、伸びていく分野が多い。
(ちなみに、投資運用のトレンドフォローとは若干意味合いが異なっている)
 
発想としてはエッジ側の技術やサービスという話になり、(良い意味での)布教活動が大事であり、いわゆるところのキャズム理論といったところが出てくる。良くある攻め方だが、これがすべてじゃないよなぁと思って考えているのは、いま同時に話見ている二つのビジネスプランが別発想で作られているためである。
 
ひとつは、レガシーのもう完全スタンダードになったサービスを少し違うアプローチで作り変えようという事業プラン。「次はこれだ!」という要素はからっきし無い。ターゲットとなる市場はすっかり安定してこなれてしまっている。伝道要素は非常に少ない。波は無く、凪に近い。中身を書いてしまうと差し障るので伏せるが、江島さんのプランがいわゆるベンチャーだとすると、こちらはおだやかな銀行融資のモデルに近い。資本の流れとリスクファクターも異なる。いまだ!というタイミング議論が無い訳ではないが、さほどは無い。多少歪でも適切なタイミングで走り抜けることが重視されるのではなく、しっかりとした経営モデルを作り上げられるかという地味な勝負が求められる。 
 
もうひとつ関わっているのは、これは多少は書いてよいだろうからちらと書くと、出版業となる。
 
さきほどこちらの出版不況の記事を読んでいたりもしたのだが、どこからどう見ても成長市場で波と勢いに乗ればというところではない。今やってる人が辛いのにわざわざそんなところに飛び込むなんて本当にいいの?という市場である。
 
こちらは、モデルとしては再生事業に近いだろうか。どこかを作り変えて上手く行かせる方法を見つけられるかというコストバランスから構造転換を上手く成し遂げられるかという勝負となる。
 
ネットやモバイルの事業と聞くと、つい「次は何か、アメリカで流行ってるのは」という頭のスイッチが入ってしまいそうになるが、ふと自分の手元を見ると別アプローチのものの方がむしろ関わりが多くなってしまっている。
 
自分が関わってるからこれが正解だ、とは口が裂けても言えないが、そろそろ新規性だけじゃない勝負の仕方を初手の選択肢として強くイメージしておいても良いのではないかという風に考えている。
 
出版業プラン周りの話は、たけくまさんのエージェント論なんかともそう遠くないところで絡まりあってるところなので、タイミングが取れれば少し触れてみたい。
(が、その前に財務モデルとガバナンス設計を作るのが先なのである)
 

 
もうひとつ自社の経営モデルのあり方についていろいろと考えてしまっているのだが、これはまとまるようならまらということで。知らぬ間に社員(役員含む)が3人から7人になってしまって役回りが変化しつつあるのがびっくりである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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