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「情報革命バブルの崩壊」のその先(2)

2008/12/26 08:59
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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書評のフリしてまったく書評ではないというエントリのパート2となる。お隣ではシリーズで書いていたはずが状況変化が起きたので定点観測っぽくなっている弊社取締役の同じような空気のエントリ(グッバイ、レバレッジ!(4))があるので合わせて見て頂ければ。このレバレッジという話は直接関わってないつもりでも間接経路で実は知らずに自分も依存しているという話なので難しい。
 
今回は前回最後に触れた、「転換点かも」というところを自動車産業を例に取って。趣旨としては、要すれば情報通信もネットも大枠での環境は似てるということになる。あとは、どういう予算、どういう支出に紐づいて自社の売上利益条件が決まってくるかというところでもある。
 
設備投資か販管費か、はたまた特別予算か。カット対象か維持対象か、攻めか守りか。母体となるセクターやエリアは。こういったところの組み合わせ条件から概ねのトレンド感覚は(あくまで参考レベルではあるが)出そうと思えば出せる。世の経済活動と自社の売上(利益)がどこでどう繋がっているか。ぱっと問われてキーとなるマクロのKPIが思いつかないとかいう話がもしあれば、これを機会に改めて確認しておいても良いのかもしれない。
 
という訳で、日本経済の屋台骨である自動車産業である。おあつらえ向きに、と言っても良いかもだが、産業的にも組み込みソフトやプローブといったテーマでも情報通信と距離感を縮めつつあり、ついでにどうやら世界的にも転換期に差し掛かった気配がする。普通にケーススタディとして面白い。
 
なお街の噂、その筋の気配というのではなく、素材は一般公開情報解読レベルとしてまとめた。もう少しシビアな話も小耳に挟まったりしているが、大きくは混ぜていない。ロイター全部済む、一般レベルとして基本は留めてある。
 
 

ニュースフローから感じる各社の新規投資の統括や見直し

 
このところ国内の経済ニュースを賑わせているのは金融危機そのものを除くと(各国の中銀の方針比較とかは個人的に楽しい)、

  1. 景気鈍化、輸出悪化
  2. 販売減
  3. 派遣解雇
  4. ボーナスカット給与据え置き
  5. 業績悪化、赤字転落
  6. 減産、設備投資減
  7. 撤退、事業整理、あるいは破綻
  8. 株価低迷、円高
  9. 貸し剥がし、選別

といったところだろうか。少し長めのレンジ且つ大きめの資本フローを見るのなら長期金利、インフレ、GDP成長推移(ついでに、CRBのような基礎一次品の統合指数)あたりをカバーしても良い。
 
貸し剥がしと選別について少し補足しておくと、バランスシート修復で資金を戻している銀行があるというだけでなく(米国はもはやそんなのばかりで流動性のトラップが見事に発生している)、要注意先への貸し出しが慎重になってることで、市場金利の低下の反面、個別企業への貸し出しは場所によってはタイトになっている。09年の見通しでもスプレッド、CDSともに厳しめで推移するのでは、という話が出てきており、企業の財務担当者としては頭の痛い、経営者としても胃の痛い展開が続きそうな気配となっている。
 
つい最近も、ある会社さんのトップから、銀行が唐突に見逃していた金利支払いの催促に来たという話を聞き、水面下ではじわじわと動きがあることが感じられる。あれだけ現金突っ込んで持ってかれた挙句にリスク資産に穴が空いたとなるとエクイティ調達もしてしまうだろうし、回収できるところからはしたくなるというのは分からなくはない。
 
リストしたキーワードを長めると、まずもってどこからどう見ても景気減速である。且つ、かなり急ブレーキで足が速い。各社の対応と判断が手早く動いてるところでも間に合ってない様子が伝わっており、調整と下へのスパイラルサイクルがかなりの速度で動いているというのが分かる。日銀だか与謝野大臣だったか忘れたが、足の早い悪化自体に懸念を表明していたのを覚えている。各国のニュースを見ていても要人クラスでまっとうな人はかなりピリピリした慎重な発言ばかりとなっている。
 
余談ついでに書くが、ポジションとバランスというのではカナダの政府筋がこのところとみにセンスがいい。G7(G8)やG20など大きめの国際会議や金融政策の発表時などにちょろっとコメントが載るものだが、各国が微妙に政治ポジションから口を濁していることをストレートに捉え、問題に向き合う姿勢がはっきりと打ち出されている。
 
最近でも米国自動車の苦境で、カナダの現地法人に40億ドルの融資をするとの判断を下している。これは感覚的に書くと日本政府が日本IBMに資金提供するようなものとなる。当たり前だが、グローバルレベルではカナダはあくまで営業支社であり、どこまで行っても米国の会社である。それでも雇用と経済の安定というところから、支援をしつつ、とはいえ支援したけど手放しではないということを

ハーパー首相は、カナダ国内にある工場を米国に移す可能性のある業界再編は容認しない、と延べた。さらに、ブッシュ政権と次期オバマ政権が、自動車各社を破たんさせることはないと明言した、と語った。

と釘を刺すあたり、国内政治では見かけないような動きをしている。中銀機能の判断の高さといい、何をどうしたらこう動けるのか、目下近所で話題になっているところである。
 
 

もはや普通に生き残る道筋が閉じつつある米国自動車

 
米国の自動車、もはやビッグ3といえないGM、クライスラー、フォードがまとめて破綻の危機に差し掛かっていることは経済ニュースを日頃見ている方か、金融市場を見ている方なら一度ならず目にしていることと思う。議会が救済法案を一度否決し、金融救済の予算(TARP)のときのように微妙な責任回避をして大統領にお鉢を持って行ってる辺りとか、議会機能ってなんだろう、というおまけアジェンダを生んだりしているが、経済的にも大事であり、債権と主要銀行のBS、連鎖破綻を通じて再び経済と金融市場にショックを与えかねないことから、政府の金融対策予算が結局突っ込まれるというところで話は動いている。
 
そもそも論でなんで彼らが駄目になったかという話であるが、表向きは負債、特に年金の負債が重いことに、折からの金融不況でローンを組めないという自動車直撃の販売事情が加わって首が回らなくなったというのが直接要因となる。
 
なるのだが、冷静に考えると、それはつまり営業利益と負債バランス、BSの構造の歪みを長期間放置しておいたということであり、もっとざっくりと書くと、売れて健全に利益の出る車を持たず、国内のローカルルールに依存してなんとなくやってきてしまったということになる。
 
このあたり、スーパー301や円安ダンピング論など長年の議論に繋がってくるのは言うまでもない。
 
GMが仮に金融再生を短期的に達成出来たとして、中長期的に安泰かと問われると限りなくNOという言葉に近づけたくなるのが、いま立ち上がりつつある競争環境に応じれないだろうという業務執行能力からの判断となる。仮に負債の整理をやり一息ついたとしても、今後利益を出して借金やら公的資金の優先株やらを返していけるかというとかなり怪しい。少なくとも、オバマ大統領が条件にしている雇用の維持が保たれる状態での実現は無いと考えた方が良い。よって、軽く脱線すると、それでも資金提供を呑んで追加支援を行うか、なんらか区切りを付けるかという判断がこの2月から4月くらいに再び再燃するものと予想される。
 
では、今何が起きつつあるかというのは日本の自動車会社の企業行動に透けて見えている。
 
 

コスト水準と環境対応

 
日本の自動車会社の課題は、為替要因(円高)や各国市場のニーズと趣向にあった製品を作るといったいつもどおりの話を除くと、コスト水準と環境対応の2点が重要課題になっている。
 
まずコストの方だが、一旦収まってるとはいえ、資源高資源不足の流れはじわじわとはあっても続くという見方が多い。少なくとも希少金属系は徐々に取れなくなっている。
 
となると、代替素材の探求(カーボンなど)と安定調達の仕組みづくり、同時に原価構造の相対優位の維持を為さないと売れるものは作れなくなる。新興国をターゲットに入れるのならなおさら、経済力上昇と通貨価値の向上、足し算して購買力の増加が起きるまでは高いというだけで売れなくなる。数は捌けなくなる。 
 
もうひとつは、こちらの方が本丸の気配があるが環境対応となる。
 
象徴的なのは、ホンダのF1撤退スズキのWRC撤退。これは予算カットの大鉈という側面ももちろんあるだろうが、そのあとどうするの?という問いに対し、技術者は環境対応に振り向けると口裏を合わせたかのように同じ発言をしている。
 
つまり、ごく単純な理解に落とすと、速く走るよりも環境が大事と方針アナウンスしていることに等しい。
 
ここでGMに戻る。若干前のニュースになるが、電気自動車の工場投資を凍結するという話があった。
 
技術優位性を持ち、コンパクトカーやハイブリリッドカーの商用化に辿りつけているメーカーがリソース集中してまで対応を進めようとしているところに、対応の手を止めて未来があるのか。上にも書いたように、GMの問題は単なる債務整理ではなく、販売面でも深い。新しい車を作る、且つ技術体系の違うものへのチャレンジであり時間がかかる。一般社でも開発リードタイムは1年から2年といったところになる。ガソリンから電気へと利用エネルギーの異なるものとなると、それ以上かかるのが当然となる。国内でも普及へのスパンとプランは1年2年の計画で組まれていない。
 
こういう状況をまとめてみていると、おそらく自動車のセクターテーマと競争ルールは変わりつつあるのだろう、ということが推測出来る。更に、危機が落ち着き、諸国の国際ポジションに微調整が入り、且つ世界経済のGDP構成に変動がある=需要パターンに変化が出るだろうことを要対応リスクとして加えると、これを機にレース参戦をやめたくなる気持ちは分からないでもない。
 
 

メディア及び情報通信産業も気分はさして変わらない

 
という話はあくまで自動車産業の話、とか言って自分で自分を納得させようと思いきや、隣でトリビューン紙が破綻している。大枠の感覚としては、自動車が環境対応に本腰を入れ、ついていけなくなったところはもたないだろうというピリピリした感覚がここにも見つけられる。対岸の火事ではない。
 
では、ネット対応すればいいのかと問われると、象徴的に分かりやすいところとして、NYTimesの生き残りには、現在の7倍程度のトラフィックが必要とのリサーチが出ている。業界動向を多少なりとも見ていると分かるところだが、NYTimesは割とオンライン対応も真面目に進めており、成功か失敗かと問われると成功グループに入れて問題ない。規模が大きいのでそれくらい必要、という補足コメントも付されているが、要はオンラインシフトが加速した際、同クラスの事業者が生き残る条件は厳しいものがあることになる。環境車とコスト対応に似た課題の重さがここにも見つけられる。
 
国内市場も大きくは似たり寄ったりで、いみじくも森さんも似た視点でメディア業界動向をまとめられているが、肝はこの一文に要約されるのだろう。

その根拠として、一旦広告費を絞り、そのコスト圧縮の結果を一度でも価格へ反映してしまった製造業者は、よほどのことがない限り元の水準の広告費を支払う根拠がなくなるからだ。

この戻らないかも、という話はちらちらとそこ各所から気配が出てきている。
 
平たく書くと、方向感としては、広告宣伝予算全体を小さくし、且つテレビ新聞に割く割合を落とすというのが流れだろう。数年前から傾向としてはあったが、これを機に一気に進めてしまおうという大手クライアントの意思を感じる。
 
よって、しばらくかかるだろう景気低迷からの回復場面で見られるのは成長率やGDPなど主要指数の伸びについていけない自社の姿ではないかというのはシリーズの第一回でも触れた通りである。個別ケースの話になると少々シビア度が増すので割愛する。つい先日から私塾を始めたのでそこでの内部課題としても取り扱えれば。見ようとするなら、ごく簡単には大手でよいのでメディア及び周辺企業の財務情報、特に売上がどの事業ラインから出ているかの経年変化を追ってみると良い。赤坂のあたりなどは、「あれは不動産業でしょ?」との声も先日知人からも聞いたばかりである。買われた旧ソニプラはどうなるのでしょうか。
 
あと、国内だと、ここに2011年、地方財政と地方経済、メディアネットワークの再編というキーワードに繋がり、最後のは通信ネットワークへの業界全体としての二重投資(三重?)をどうするかという話もセットで語られることなる。それにしても僻地と地デジという放送ラストワンマイル問題にはいつ決着をつけるつもりなのだろう。
 
となると、地方と国内金融の話というのに行きたくなるのだが、ミンスキーモデルと合わせて次回。全体としては、単なる景気後退、不況というよりは転換期に入っているし、02年と比べてるようでは環境認識としては足りないのではないかというのに同様となる。トヨタが70年ぶりの赤字とかイギリスポンドが50何年ぶりの金利とレートとかいう話は、やはりそういうタイムスパンで捉えて考える方が正しいということを端的に示してくれている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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