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「情報革命バブルの崩壊」のその先(1)

2008/12/20 21:33
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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切込隊長こと山本氏の著作、『情報革命バブルの崩壊』を頂いたのが一ヶ月ほど前、遡ってみると11月22日にざっくり感想を書いている。表立ってはどうしたものか、と思案していたが、09年度以降に向けての話が関わってくるため、年越えない前にさらさらっと近しいテーマをさらっておきたい。
 
何の本?と問われるとご本人がまとめを書いているので引用するのが早い。

 情報革命バブル、とかなってますけど、別にアンチ梅田望夫だとかソフトバンク潰れちゃえとかいう話ではなくて、ネット業界全体の適正化、健全化、正常化という観点から、投資機会と投資収益の関係をどう是正すんのか、というのがメインのお話です。

 平たく言うと、新聞やテレビといったレガシーなメディアがだんだん力を失ってきた代替がデジタルだネットだというのは良いけれども、じゃあ言われているほど私たちは恩恵を蒙って利益を享受し、住みやすい社会になったのかしらという問題意識を提起した本であります。帯では、ネットの無料文化をどう終焉さして適価をユーザーから集められる仕組みに移すのか、みたいな、ネットによる情報のダンピング問題が前面に出てますけど、まあ、そういう内容です。

一言で要約してしまうと、「あちこち先送りしたものや溜まったツケはそろそろ清算しないと駄目だよな」というものになる。単純な、インターネット否定論や新興企業否定論etcではない。
 
内容的には細かい論点についての議論は多数出来るだろうものの、概ねと全体の気持ちとしては、まぁそうだよね、というものになる。
 
章立て構造でも分かるが、イシューとしているところは
 ・インターネットに代表される(フリー)情報経済化
 ・金融経済のレバレッジバブル
 ・足元の金融危機と収縮とセットにした産業構造と国際構造の転換
をセットで語る形となっている。そういえばこういうカバレッジの本、ネットでの発言にしてもついぞ見ないのだが答えは単純なところだろう。シンプルに金融市場の話に触れる人というのはそこそこはいるが山ほどはいない、コーポレートファイナンスでも人口比で考えるとかなり怪しい。そして金融系の人はネットやテクノロジーのコアのところの諸要因をなかなか掴めないため、技術か金融化どちらかに寄った議論になりがちとなる。まとめて両方見れてそうな人というと思いつくのも難しいくらい。
 
そして、当たり前だが、世の中どちらの事象も同時に起きている。情報通信産業は構造転換に景気下降サイクルに金融市場の機能不全が同時発生した中で事業判断を下さないとならない状況になっている。分からない、待ってくれと言っても株価は落ちるし資金は集まらず、技術評価や事業の見通しも全部変わる。それも、ここ数ヶ月であちこち体感されてるように急速に。そういう事業環境になっている。という訳で、以下読みつついろいろと考えたことを。ちなみに書いておくと位置づけとしては書評でも内容要約でもない。
 

それは単なる景気後退か 

業界内部の声に耳を傾けていると08年から09年の状況を2002年前後の不況期と比べているケースを良く見る。見るのだが、これは本当に見立てとして正しいと言えるのか。
 
当時と今の金融環境を比べると2点で違いがある。

  1. 02年は信用レバレッジによる供給過剰が生きていた
  2. 米国主導の国際金融モデルが壊れかかっている

この辺りが大きく効いてくると、風景はまったく異なったものになることが予想され、あとで幾つか触れたいが、大手各社の行動を見ているとかなりの状況変化を想定していることが窺える。
 
これは、要すれば昨日まで直接市場から資金を調達できていたはずが「はいはい、明日から全部銀行の審査部を通してね〜」という話に切り替わったような状況に近い。米国でも投資銀行モデルが終焉し、基本的にはFRBの管理下に金融各社は入ることになっている。信用水準やバランスシートの状況(自己資本比率など)のチェックを受けることになるため、以前よりは保守的な傾向が強まるだろう。自己資本比率といえばついでに、直近では一部金融機関は貸し剥がしをしている。バーゼル恐るべし。
 
リスクマネーがあるさ、IPOすればなんとかなるなるさ、というところから、そもそも株式市場に資金を提供していたプレイヤーもピリピリしていることから少なくともREIT依存の不動産企業のような業態はしばらく出て来れないだろう。そもそも、彼らに信用提供をしていたのが商業銀行である、ここがストップするとレバレッジ金融のプレイヤーは首が絞まる。
 
ペパボの初値が悪くなかったように、市場に資金が無い訳ではないが、それっぽい成長ストーリーとばら色の未来イメージのみでは資金調達の担保にはならないだろう。
 
つまり、上記の1)と2)が起きているとするのなら、1段2段と経済環境は悪くなると考えるのが自然となる。

(2)については国際金融市場の基本構図と合わせて、米国経済がどういう構造になってるかというマクロ分析みたいな話を経ないとならないのでここでは割愛。一行で書くとGDPの7割が消費依存になってるという話とこれを米国債が支えており、どちらも継続性が怪しくなってるという話。)
 

資金と期待:需要と開発のディフェンシブ化 

では、投融資の資金はどこに向かい何を期待しているのか、企業は投資をどこに振り向けているのか。
 
金融市場全体ではLIBORが落ちつきつつあり、以前ほどの緊張状態ではないものの、相変わらず安全資産傾向の高まりと通貨リスクにどう向き合うかというのがまだ大きなストーリーとなっている。重心は景気と実体経済に移りつつある。そして、こちらの見通しはどこからどう見ても悪い。
 
こうなると評価されるのが所謂ディフェンシブ系の企業だが、国内市場ではニトリとユニクロ(ファーストリテイリング)が業績的にも株価的にも注目を集めている。 

いずれも、ここ5年で株価は最高値を更新する動きとなっている。言うまでも無く、この間にはサブプライムがあり、金融危機から景気後退という経済環境の変化が背景にはある。それでもなおこの推移。
 
両社のどこが強いのかという話は割愛するが、一言で書くと価格競争力に優れ、デフレ経済に強いということが共通している。更には、この特徴はユニクロの方が強いが、単なる安売り業者ではなく製品品質や差別要素をきっちり持っているところとなる(東レと共同で動いているヒートテック系統の商品群など)。
 
この二社をもって全体傾向とするのは乱暴だが、気分を示すには正しいだろう。お金を出してもらおうと思ったらこれくらいの底堅さが無いと出し手は安心出来ないということになる。
 
また、消費者サイドも他は切り詰めてなるべく買うものを減らして節約し、買うにもこれらの企業やディスカウンターから買う傾向が出ている。聞くところによると、スーパーでも単価の高い商品群の売れ行きが着々と下がり、顧客平均購買単価も同時に落ちているとのことである。となると、これら消費者向け製品を作っている企業の売上がどう推移するかは想像に難くない。
 
 
企業の新規投資、経費管理的なところをニュースフローで見ていると、全面見直し、凍結という方向を綺麗に示している。とりあえず販管費はざっくりカット。聖域は無い。物議を醸し出しているが人件費もなるべくカット。とりあえず昇給なしボーナスもカット。派遣のみなさまごめんなさいというのがこのところの構図。
 
両方を眺め渡してみると、結論としては、よほど必要なものじゃない限りはなんらか手を入れて削減しているという流れになる。となると、B2CでもB2Bでも、自社の製品やサービスが無いとどうしようもないものか(ディフェンシブ的なものか)、無いなら無いでなんとなくなってしまうものかで勝ち負けが分かれることになる。
 
インターネット、モバイル系の企業は広告宣伝費に依存した事業体が少なくない。量的にも数割かそれ以上カット、且つ効果の無いところは容赦無く落とすというクライアント判断で自社サービスが残れるか、且つ残った上の売上で回せるコスト構造になっているかがシンプルに勝負として問われていることになるのだろう。ちなみに、別途(あるいは別項で)触れると思うが、景気回復したからといって同額同バランスで広告宣伝費が出てくる保証はない。むしろ、確実に出先は変わってしまうと考えるべきだろう。となると、景気さえ戻れば、という期待はその資格がある企業以外では根拠無い願望、幻想ということになる。
 
ついでに、ECについては、ポイントサービスが優秀などといった理由から顧客リテンションに優れコスト構造がそこそこ以上の会社は割合順調に行けている様子である。
  

 
転換期の事例としての自動車産業、メディア需要の話、ミンスキーモデルといったあたりももう少し触れたいのだが、長くなったので一旦ここまで。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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