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Googleストリートビューと周辺諸課題

2008/08/15 10:25
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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Googleのストリートビューが日本でも公開されたのは、業界筋ではもはや周知のことである。ついでに、即時で議論が巻き起こり、ひとまずのやりとりは一周したように思える。というところで、個人的に一旦中間まとめのようなものをしてみたい。
 
 
スタートラインは違和感
 
まず、初見の感想は「面白いしすごいけど違和感」というものになる。単純にけしからんというものでは無い。究極的にはGoogleアースと同じ、大規模フォトサービスと同じ、という意見もあり、ここには条件付で賛成している。
 
しかしながら、GoogleMAPとその周辺サービスが出されたときは純粋な驚きと喜びをもって迎え入れられていたように記憶している反面、今回は明らかに違和感と反感が一部に見られる。つまり、技術や理論として同列と言えても、世の中的には何か違うものだと受け止めていると考えた方が実体に近いものと思われる。
 
では何がどこで引っかかっているのか。この辺を探ってみたい。
 
やや文化社会面も含めて、違和感を上手くまとめているのは樋口さんの「Google の中の人への手紙 [日本のストリートビューが気持ち悪いと思うワケ]」だろう。

ポイントはこの一言に集約される。

日本の都市部の生活道路は生活空間の一部で、他人の生活空間を撮影するのは無礼です

これは完全に文化と風習の概念に入るところで、外と中の社会設計が違うところに、同じサービスモデルでアプローチしようとするとどこかで差が出るよ、というサービスローカライズの問題にも繋がっていく。
 
この点をもう少し具体的に(ややセンセーショナルに)ケースとすると、高木氏の「日本の家屋の塀はグーグル社に適応して70センチ伸びるのか」となる。

訪ねた場所は本当に狭い道で、自動車が来たら人は止まって避けないといけないようなところだった。住人の車の通行しか想定されていないところだ。路地の入り口から見た写真は図6のとおりで、用もないのに入っていくのは気がひける場所だった。奥の方(図1で「北」に進んだところ)はさらに狭くなっており、「ここを通って行ったんですかね、よく通れましたね」とインタビューした家の方もおっしゃっていた。奥の方の塀も高さが2メートルほどあり、通行人の視点では窓は隠れていたが、「ストリートビュー」では窓が映し出されている。たまたまカーテンが閉まっているからよいものの、閉まっていなければ部屋の中が映っていただろう。

違和感を超えて、嫌悪感や拒否感という声もあったが、感覚としてはこういうところではないだろうか。
 
 
プライバシーという論点
 
一部の法的論点はこちらでも触れられているが、要すればパブリックスペースとプライバシーというところに一旦は集約していいだろう。
 
※なお、先に触れておくがサービス設計上考慮しなければならないリーガルスキームはもうちょっと多い。現象として理解するに基本構図を抜き出すなら、という意味であることを考慮頂ければ。実際の実装(支援)に際してはもう少し広範に議論して確定させるのを一般としている。
 
もうちょっと日本語として開けると、

  1. 公共空間にあるものはパブリック開示されている。ので、パブリックに取り扱って配信して構わない説
  2. 公道及び公道に面しているところは公共空間である。よって、1)のロジックにより配信可能対象となる

というところになるだろう。この辺をどう考えるかである。
 
少し前から個人情報、プライバシー情報の技術課題と法的課題の整理マッチングという仕事に関わっている。そこで、弁護士の方とも多くの議論を重ねているのだが、(デジタル)データの流通を考える際に出てくるのが、アクセスの容易性という論点である。
 
例えばであるが、事業者Aがある個人の位置情報を持っている、事業者Bがある個人の嗜好情報を持っており、双方とも条件をつけてのデータ開示を行っている。両方とも氏名や住所などのいわゆる狭義の個人情報は保有していないものと仮定する。それぞれ単体でのデータ開示によって、個人情報侵害漏洩は起きないとする。
 
さて、ここで両社のデータを組み合わせて、見る人が見ると「もしかしてこれって**さんでは?」と読み取れる可能性があるとする。潜在的に個人情報の漏洩が起きかねない状況である。
 
となると、両企業はどこまでどういう形で情報開示していれば、責を問われないと考えればいいのだろうか。多くの企業が悩み思案している論点となる。(しばしば相談される)
 
具体的な判例が積み重なってないため、確定した結論は無いのだが、基準となるのが先のアクセス容易性というところになる。
 
例えばであるが、両社ともオンラインで無償データ開示し、且つAPIを出し、加えてマッシュアップ検索ツールを同時提供しているとなると判断は黒となる。ブラウザを広げてふいっとキーを打つだけで誰でも容易に個人を特定できてしまうからである。
 
ここで、オンライン非公開、有償で決まった法人にしか提供せず、且つ取引先法人の二次利用を固く禁じ、且つプライバシー情報の適切な管理を行っている先にしか提供しないという形であればどうか。理論上はこれでも何か置きうるリスクは残っているが、一般施策としては十分な配慮が為されており、オンライン公開に比べるとほぼ白となる。
 
という訳で、境界線がどこになる、という問いは難しいものの、方向感覚として容易性という軸である程度是非が判断出来るという話がある。
 
 
ストリートビューとアクセスの容易性
 
というところで、アクセスの容易性という話に戻ると、どう考えても「容易」である。配信範囲もインターネット経由で利用できるので、さっくりと全世界となる。

つまり、

  • 配信範囲がほぼ最大で
  • アクセスは相当レベルで容易

ということになるため、映っているものがプライバシー情報(あるいは個人情報や非開示の企業信用情報)だと判断されたなら、各所から怒られそうな構図ということになる。
 
ちなみに、どういう要件を満たしたらそれはプライバシー情報といえるのかというのは、これまたはっきりしない。よって、ストリートビューもひとつのケースとして取り込みつつ、議論が重ねられていくことになろう。
 
 
技術と社会の調和
 
冒頭でも少し触れたが、静止画動画含めてデジタルでの撮影技術、流通配信技術が伸びていけば、こういった動きは不可避と言えるだろう。この点は賛成する。ある流れとしては避けられない。しかし、技術は開発されるし不可避だから受け入れろ、というのは暴論となる。
 
技術をどう受け止めて取り扱っていけばいいのか、という話題で、重い議論が続けられているのが生命科学の分野だろう。特に、象徴的にクローン技術については、再生医療との境界も合わせ、人間以外であればいいのか、ある人体パーツであればいいのか、なんらかの目的合致があればいいのかという議論が一部に宗教問題も巻き込みつつ繰り返されている。
 
ストリートビューについても、技術的に可能なことは前から分かっていた。そして、実際にやってみて多くの人が触れたことで実感を持って何が起きるのかを検討判断出来るようになったタイミングと考えられる。つまり、これらをどうしていきたいのかは、(もちろんこれまで無かった訳ではないが)これから議論し決めていくことになる。そして、新しくルール作りしていくことになるため、既存の法に書いてある書いてないだけで全てが決まる訳ではない。現行法が既に社会認識とずれて古くなっている場合、ある程度の時間をかけて修正されていくのが普通である。
 
よって、本件について現状認識としては、「定まってないし、これから大きく変わりうる」ということになる。個人的には、面白いし多くの応用も考えられるが、さらっと見るだけでも危なそうなのが混じっているので少なくとも運用や開示基準については変更が加えられるだろうというところまでを見ている。

また、カナダみたいに止めてしまうというシナリオも考えられるが、それは政策的、あるいは社会的判断なので趨勢を見守るということで。こちらは、それこそ時流の判断ということになり、個々人の考えとは違うレベルになる。
 
 
Google社を見ていてひとつ気になること
 
余波的にひとつ気になっていることがある。Googleの掲げている、「邪悪になるな(Don't be evil)」というテーゼと応用的に提示されている、「悪事を働かなくても金儲けはできる」のふたつと本サービスがどういう位置関係にあるのかというところである。
 
ストリートビューが邪悪であり悪事を働いていると断じるのは躊躇いがある。というか断じられない。しかし、「ユーザーに焦点を絞れば、「結果」は自然に付いてくる」と出ているそのユーザーが一部かもしれないが、うーん、と懸念を表明している際にどう振舞うのが望ましいと考えられるか。特に、裁判社会じゃない国でどう事業運営してくのが、その国のユーザーと向き合って活動していると言えるのか。
 
このあたりのサービスマネジメント、ブランド管理といったところにも大きくテーマが眠ってるように思う。
(念のため触れるが、この点についても駄目だと断じてるのではない)
 
 
以上を中心としたテーマ出しを受けてみなさまと議論してみたいこと
 
という訳で、ひとりで考えていてもどうも際限が無さそうということで、久しぶりに研究会の形で動いてみようということで会社メンバーとも合意しましたので、ディスカッションミーティングに繋げてみたいと思います。
 
アジェンダ出しをすると
・リーガル的視点での位置づけ整理(現行法上とこの先の推定少々)
・サービスマネジメントとしてどういう管理運営プロセスが考えられるか
・総じて、リスクマネジメント体系はどのような組み方が考えられるか
・本サービスを前提としての応用サービス、周辺経済への影響想定
といったところになります。周辺経済への(プラスの)影響、諸々あると思いますが、プライバシー問題が先に立ってしまっているせいか、あまり語られてるのを見ません。よって、合わせて取り扱ってしまいます。

お隣のクロサカ氏に加えて、もう一人秘蔵っ子の、知的財産とライツマネジメントのエキスパートに登壇デビューして頂こうかと。詳しくはこちら、22日の予定です。か、連絡先ご存知の方は直接一報頂いても。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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