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IBM Global CEO Study 2008からみえる世界

2008/07/02 23:17
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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IBMが定期的に世界のCEOにヒアリング調査をして動向レポートを作っている、「IBM Global CEO Study」の2008年度版のレポートミーティングにご招待頂いたので有難くお邪魔してきた。

企画趣旨として

「IBM Global CEO Study」は、32の業種に渡り、40カ国、1,130名のCEOに直接インタビュー形式にて調査を行い、CEOが今日直面している課題がビジネスの未来にどのような影響を与えるかについて、洞察を得ることを目的としています。「未来企業のあるべき姿(The Enterprise of the Future)」と題する今回の調査は、IBMグローバル・ビジネス・サービスがエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)と協力して実施しました。

という感じで、良くコンサルファームなどが実施しているリサーチと似たようなものとなる。実際、IBMは旧PWCを買収してコンサルティングサービス機能を内製化した経緯もあり。

ざっくり2008年度版のテキストサマリはリンク先のところとなる。ざっと読んで、また当日の説明も聞いても、まぁそうだよね、というくらいの感じであった。特に違和感は無い。さらにざっくりまとめると、

新興国の成長もあり世界は数年前と比較しても更にグローバルフラットになり動きが大きくなっているため、人もリソースも適所調達適時リリースを原則として柔らかくやっていきましょうよ

といったところだろうか。

括弧書きで付くのは、嫌味の意味ではなく「もちろんITの支援でもって!」であり、これは確かにネットワークの普及などその通りだろう。

というところまでをさっくりふむふむと受け取ったとして、その次さてどうなる、ということが少々引っかかる。イベントの話は上記までで、この先の想定シナリオというところまでがアジェンダにはなっていなかったが、先読みシミュレーションをしてみたい。

 
短期筋資本市場のメタファー?

上記のモデルはラフに解釈すると、やや短期寄りの資本の動きに性格が似ている。自由度の高いグローバルマクロのヘッジファンドなどの行動パターンを思い出して貰えると直感的に理解できるのではないかと。

つまり、今時分より調達条件の良いところに行き(今時分騰がりそうなところなところに張り)、条件が悪くなってきたら手早く他に移り変わる(騰がって旨みが無くなって来たら手仕舞いして他に行く)という動き方をすることになる。

また、コストや利便性といった単純指標にバイアスが入るとしたら、市場の参加プレイヤーは似たような動きを似たようなタイミングでまとまって行うことになる。なぜなら、そうしないと競争優位性を築けないからである。つまり、条件の良い安そうな国にどっと身軽に集まり、条件メリットが薄れてきたらどっと引いていくことになる。引いて次の良い条件のところに移らないと隣との競争に負けてしまうのなら、引いて次に行くことが経営上は正しい判断と言える。

さて、これを受け入れる側の国の立場に立って読み替えてみる。仮にA国とする。産業の成長素地が整ってき、グローバル企業が目を付けてメリットを感じる成長段階に入ってきた。当然、A国としては次のステップに辿り着きたい。海外の技術とノウハウに触れる機会と具体的な雇用のために海外企業を受け入れて経済を活性化させたい。よって、グローバル企業がどっと入ってくることになる。なぜなら皆俊敏ですばやく市場に適応して入ってくるからである。

そうして、しばらく、この国の経済は活況を呈し、GDPも順当な成長を示し、外貨も溜まり通貨も徐々に強くなり国民は豊かになり賃金も上がっていく。いい流れである。

更に数年が過ぎ、期待の新興成長エリアということで世界各地の投資家の口にも登るようになってくる。どうもA国は最近調子がいいらしい。

この辺りから風向きが変わり始める。グローバル企業α社の内部でエグゼクティブミーティングが開催されている。「A国の賃金水準と通貨状況から、購買メリットが薄れつつある。教育水準は悪くないが、期待された原価水準を上回る傾向を見せている。よって、B国への調達移転を検討したい」。慎重なミーティングの結果、B国にA国依存の60%を漸次移転させることで意思決定が為された。

さて、問題はここからである。上記で触れたように、α社と競争関係にあるβ社もまた傾向としては似たようなことを考えるようになる。そして、こちらは移転リスクを負ってでも積極的に攻め手にしようとの判断からB国への全移転を判断とした。俊敏なので素早く出て行く。

結果どうなるか。考えるまでも無く、A国の内部は干上がり、稼動するあての無い生産設備と余剰労働力が生まれ、GDPはマイナスに振れる。合わせて、国際資本も引き潮のように引いていくことになる。A国に深刻な構造問題と不況が訪れる。

 
上記シナリオを前提としてのA国が取るだろう防衛戦略

さて、というような流れに場合によってはなるな、とA国が事前に読めていた場合、どのような対策を講じることになるか。

ダメージを受けやすいのは、短期で入ってきて積みあがったものが短期で引いていく構図になる。いわゆるバブル的な成長と破裂というパターンになるが、この流れに嵌りに嵌ると90年代以降の日本経済のようになり、各国の中央銀行や政府は「あのパターンには入り込むまい」と、気をつけている流れになる。

となると、比較的望ましいパターンとして、
・耐えられる範囲内の速度でマイルドに成長し、調整もマイルドに行われる
・足下の急激な成長は若干棒に振るかもだが、長期で居残るコミットをする企業しか受け入れない
とのいずれかになる。

もちろん、これらを自己都合で推し進めるには交渉力とそれ相応の機会ロスを覚悟して実行する必要があり、またB国との競争を考えるとあまり自分たちの都合ばかり主張する訳にも行かない。

ここでもう少し仮定を加えて、(ゲーム理論のような話になってしまうが)受入国のA国からD国くらいまで似たような立場にある国が協調行動を取って、揃って受け入れ基準のところで短期お断りと足並みを揃えたとする。となると、Studyで扱われている適時調達適時リリースの前提が立たなくなることになる。

 
現実そうなるのかというケース

ざっくりシナリオを描いてみた。問題は、本当にそういうことになるの?という話である。そう都合よく行くんですか?という問いが当たり前のごとく出てくる。もちろん、この流れが絶対とは言わないし、成立するにはかなりいろいろな条件なり事情が噛み合わさって初めてと言える。ここまで典型的なパターンに当てはまるのはそうたくさんは無いのではなかろうか。

しかし、目下世界経済の大きなテーマに絡んで、協調行動の事例は日常生活にも大きな影響を及ぼす分野で現実に起きている。

言うまでもない、産油国と原油である。

ものすごく構図をシンプルに理解すると、急激な原油高に対して消費国(多くは先進国)が産油国に対して「増産してくえないかなぁ」と持ちかけ、産油国側が「いや、別に足りてるみたいだから増産は必要ないでしょ」と回答しているのが今である。OPECといった仕組みや伝統があるからという条件などはもちろんあるものの、割と足並みは揃っている。

原油市場のケースでいうと、先日サウジが仲介する形で双方歩み寄れるようにしていこうよという話し合いの場が動き始めている。しかし、そのサウジに対しても産油国側の一部から「なびきやがって」という批判の声が一部で出るなど対立的構図はまだ解かれていない。

つまり、原油においては明確に、どこか安いところにいって調達する、という行動は選択できない状況になっている。

本日ご紹介頂いたStudyについてはサマリレベルまでで(日本語版の全文はまだ仕上がってないそうである)、この辺の国際政治や国際資本市場との絡み、個々の域内経済との距離感をどう考えていくかといったあたりは取り扱われていない。解き方をぐるぐるとシュミレーションしてみても、いまひとつすっきりとした解法が分からない。

ので、この辺りのややこしくて、経営判断上も場合によっては肝になりそうなあたりについて、全文レベルでどう扱われているのかを待ってみたいところである。

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※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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