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とあるメディア企業の憂鬱

2008/02/15 01:31
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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メディア系の話が出たので合わせて。

情報通信、メディア系の話に日常的にタッチしてるからか、先日、某大手のメディア企業の方から相談を受けてお邪魔していた。テーマはストレートに事業環境、テクノロジー環境の変わってきてる中、自社のポジションをどこに求めるのがいいのかというところ。ここ5年ほどの定番テーマであり、且ついまだに明快な答えが出されてないところになる。
 
 
花形メディア企業
 
担当されているのは、ニュース系を中心とした事業ラインを主ターゲットとした事業企画。ということで、今の資産とポジションを活用しながら新規事業なりビジネスモデルを立ち上げる算段はあるかというところとなった。
 
これからを考えるには、これまでを踏まえるのがまず基本となる。敢えて振り返らないほうが良いパターンもあるが、今回は後述の確認しておいた方が良い。
 
いわゆる、マスコミと括られる業種は花形仕事として見られてきた。単純に財務資料にも出される給与水準や、新卒採用時の難関具合や人気のほどといったところからもその位置づけについては確認できる。また、政治学の権力論研究でも、「マスコミは政治司法行政に続く第三の権力機関である」といった表現が度々出されるように、影響力も少なくない。

よって、
 ・世の中に影響力が強く
 ・なかなか入りづらい憧れの職業で
 ・しかも給料も素晴らしい
というあたりが一般レベルでの認識となる。この先に、夜討ち朝駆けの人は大変らしいとか、仕事中心の人生とか、意外とそうでもない人もいる、とか人によっては芸能界と接点が、いやいや政界経済界との接点がetcetcという個別情報が加わってくることになる。
 
 
これまでとこれから
 
さて、冒頭の相談の本心の問いかけは、「私たちがこれまで通りやっていくにはどうすれば良いのでしょう?」というところになる。直接このフレーズを持ちかけられたことは無いが要すればそういうところとなる。。
 
これは、平たく解釈すると、上記の”よって”に続く3要件をなるべく維持するにはどうすれば、という問いに近い。
 
じゃあ、策を考えましょう、という前にひとつ個人的に問いかけておきたいことがある。大手のメディア企業の立場は、これまでが正常であり今異常期間なのか、過去が特殊な期間であり、これからが正常化してるのか、どっちの認識が正しいのかというところである。
 
就業世帯の年収水準と比べると、大手メディア系の収益力の高さは概ね周知の一般事実と言ってよい。また、特別違法なことが行われてダークにこれが維持されてきたというわけでもない。とはいえ、超過利潤的なものがあったのは客観事実であり、これを支えてきた要件は今後も維持されるか代替するものを打ち立てられるかというのが検討事項となる。
 
大手メディアの収益源泉については、例えばテレビラジオだったら電波に限りがあること、新聞については配送ネットワークの重さから自然独占ロジックと、テレビも含めた資本系列の話、そもそも日本のメディア産業の成立史といったところを探る話になってくるため、ここは概ねその辺の話になるということを確認して先に進みたい。先行研究は多数あり、また諸説多数ある。
 
事業環境の変化があると認識し、そこが多チャンネル化を目指した行政判断や、配送コストに関わるインターネット、通信側のイノベーションの結果から変化の要因来たと考えるのなら、同じ立場と競争資源を積み上げられるかという問いに答えればよいことになる。
 
また、今移行期でそのうちまた元に戻るよ、というのであれば、裁定取引ではないが歪みの維持期間を読んでどれくらい耐えれば良いかを思案することになる。投融資を持ちかけるのなら絶好のタイミングになる。
 
 
状況認識と戦略の前提
 
状況としてどっちなんですかね、という問いはいろんな方に投げかけつつ議論を重ねているが、諸外国の動向を重ね合わせても、環境変化が起きたと考えるのがやはり妥当に思える。最後の拠り所となる、ナショナルミニマムと知る権利云々という憲法レベルのところにしても、厳しく見るとどうも採算と経済効率の問題から旗色が悪い。地デジにしても、「本当に切り替えできるのか」という問いかけに出くわす機会が増えているように思える。
 
であれば、一旦は付加逆の変化が起きてると置ける。少なくとも経営方針、事業方針を考えるに、リスクを織り込むとしてはこれくらいの皮膚感覚で捉えておくくらいで良い。そして、問いは1ステップ進んでポジション維持が可能かである。
 
情報化の進展とメディアビジネス、ネットの普及とメディア産業の関係といったところでは米国英国あたりに先行事例が蓄積してきている。特に米国はトライアルケースや失敗も多いので参考になる話が多い。
 
ケースや出されたデータを見ていると分かるのは、
・ユーザーのメディア利用、接点は相変わらず多様化している
・いわゆるメディアコンテンツに触れる機会も同様(先のエントリの通り)
・届ける、見てもらうというところだけでもチャネルの再設計は必須
・収益については、オンライン化で過去と同じ水準を維持するのは現実厳しい
との数字が結果として出ている。また、日本だと加えて良いと思われるのは、オンライン系の広告単価、予算の振り分けについては米国ほど状況が良くない。よって、メディア企業として進出するメリットはさほど大きくは無い。
 
しかし、ユーザー移行は同様に進みつつある。つまり、既存事業の毀損は同じように進んでいるに関わらず新規事業の見通しは国際比較して暗いという状況にあるのでは、との状況が推定される。

などなどと考えていくと(且つ、上記のストーリーが概ね正しいとするのなら)、検討レベルは「インターネットに参入して収益を上げる方法ってありますか?」では足りないんじゃないかというところに辿り着く。同様に、モバイルに参入すればなんとか、という話でもないだろうことも推測が立つ。

検討レベルとしては、
・単体の新規事業検討レベルではない、もう少し大きな前者レベル
・流れによっては大規模な事業再設計、リストラクチャリングの実施意思があるか
・すべてを守れないとなった場合に、維持したい要素、KPIはあるか
・単独生き残りは必須条件か
といったところに差し掛かってるだろうという推測がやはり立つ。

だからこそ、この前まとめたように、日経朝日読売が包括提携という話に至っているのだろう。

また、見えない分水嶺として、どういう体制で、あるいは誰とこのテーマを検討するかというのが出てくるはずである。テクノロジーやサービスのイノベーションが世の中の状況を変えつつある流動的な状況で、潮目を読んで且つ既存の事業モデルに紐付けるというのはスキルセットして希少になる。

単純に、「新しいものが出てきた、世の中これで変わる」と言って新しい話をするだけであればそうは難しくない。では、今あるものとのバランスがどうなる?という方が問いとしてはレベルが上がり、且つ実際の財務結果を睨みながら対応をするということになると更に難度が上がる。そのためか、この手の案件の状況をあちこちから噂で小耳に挟んだり、気配を感じたりするに、漂流してしまってるケースも少なくない様子である。
 
そして、この漂流具合や状況の難しさの反対側で、「とか言いつつも、結局のところニュース情報って相変わらず結構見てるんですよ」という実感もある。このギャップに整合性のある答えをまだ出し切ることが当座の課題ではないかと思われる。

というわけで、ご相談頂いたところの話について書けなかったので、これはまた上手くまとまるようであれば。
(当然ですが、守秘義務系については考慮の上で)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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