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資本管理のカイゼンとビジネスExit

2007/11/03 23:34
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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お隣で、先日まとめたブラックストーンのエントリ補助線フォローが入っている。

様々な会社の経営陣の方にお会いし、時には仕事をご一緒させて頂いたりしながら、このあたりのテーマについては少しずつは触れて行った方が良いのではという思いが日に日に高まっている。

確かに、私たちは純粋には金融の専門家ではない。M&Aエキスパートだったり、外資系金融の卒業生だったりする訳ではない。しかし、投資家の端くれとして様々な会社や市場の状況を見、それぞれに関わっているプレイヤーがどのような考え方を見るにつけ、且つ周囲とのギャップから生まれるビジネスリスク、経営リスクを経営サイドの方々と議論するにつけ何がしかの役割はあるのでは、というところで出来るところから手をつけていこうという風に先日から話すようになっている。

現時点の結論としては奇しくも隣で、

反対側に回って、日本の事業会社が投資銀行と組んで商流開拓のための投資を広げる、という動き方も十分ありうる。そもそも資本と業務(現場)の動き
は必ずしも一体化していないものだが、特に日本の場合はその傾向が顕著で、いくら凄腕の投資銀行家とはいえ、そう容易に案件開拓や投資、あるいは事業遂行
できるものではない。一方事業会社の側も、知財や顧客へのアクセスを得るために積極的に投資しようとしているが、技術の詳細までを捉えたデューデリジェン
スや投資後の経営・資本管理までは手が回らず、何のために投資したのかが分からなくなるケースも少なくない。

ならば、案件開拓と業務遂行は事業会社が担当し、その事業会社の投資分を含めた資本管理を投資銀行が担当する、という役割分担は、十分ありうるだろ
う。実際、他ならぬ渡辺さんや私が、時には投資銀行家として、また時には事業会社のアドバイザーとして動いており、事業開発や資本管理をきれいに整理する
役割を担っていることが、何よりニーズの証明である。

とまとめられている。ファイナンシャルExitにどうしても行かざるを得ない純金融のプレイヤーとの役割分担、あるいは私たち自身の差別性と存在意義を考えると、ビジネスExitとでも言えるところがキーポイントとして提示できる。

 

ビジネスExit

言葉の綾で思わずExitとつけてしまっているが、いわゆる意味でのExitは意味していない。

会社の診断や方針決定において、財務金融のチェックは欠かすわけにはいかないが、あまりにそっちに行き過ぎると、現場視点で見た際に時々「ん?」と首の後ろに何かがひっかかるような結論に飛んでしまうことがある。

例えば、良く言われる有名な切り口として、会社の保有現金についてがある。どう見てもいらないだろう会社はごろごろあるので、公開企業だったら株主への返還をなんらか考えても良いのでは?と思うことはもちろん多い。だが、そうじゃないよね、という事例は少なくない。

有名どころでは任天堂だろう。任天堂は手元に資金をたっぷり持ってる会社で、DSとWiiのヒット以前から「BSをもっとスリムにして、借り入れを増やすことでROEをうんたら」という財務改善の議論が定期的に語られている。

セオリーとしてはそうだよね、というのは一応分かりつつ、確か岩田社長だったと記憶しているが、「ゲームビジネス、特にハード競争のコストとリスクを考えると、これくらいの手厚さが妥当、もしくは足りないかもしれない」というような趣旨の発言をされていた。

実際問題、ファミコン(スーパーファミコンもまとめて含む?)の大ヒットの後、プレイステーションが出てきて世界規模で覇権はソニーに移り、任天堂も厳しい時期がしばらく続いていた。大きく引きで見ると、当事者感覚としてはDSとWiiが出てようやく一息と言えるかもしれない。また、逆に見るとあれだけのポジションを築いていたSCEが対XBOXとWiiという最近の構図で厳しい勝負に入っていることを考えると、次に自社ハードに有利な状況が来るのに1世代から2世代、5年以上かかるかもしれない。プロダクトサイクルを基準でみた資本サイクルと振れ幅をカバーするには相応の厚みが欲しいというのは、経営者のわがままではなく、素直なリスク感覚と呼んで良いのではなかろうか。

また、BSとPL、あるいは売り上げと利益の数字を気にしすぎるあまり、スポンサー側への顔を維持することに汲々とするあまりに現場を疲弊させているケースもひとつどころではなく見ている。社員が不幸というのももちろんあるが、中長期的には会社も縮小していくので、経営としては×である。よほど資本効率が改善しない限り、中身が薄くなり縮小してしまったビジネスは株主にリターンを戻すことも難しくなる。BSの左右がバランスとか言う前に、資本とオペレーションがバランスしていない。

このような場合、資本側のロジックや数字のところを追い詰めすぎると肝心のビジネスアセットが失われる。キーになるエンジニアが辞めてしまってオペレーション基盤が維持出来なくなる(営業が頭下げて回っても結局出来ないものは出来なくなる)、コストカットが過ぎてプロダクト品質を壊してしまいお客さんの離反を招いてく、適切な投資量とサイクルを維持できずに競争から競り負けていってしまう。などなど。

これらは金勘定の勘所と商売の勘所でボタンが掛け違ってしまっていると起きてしまうことになる。

 

資本管理のカイゼン

一応、株方面を中心とした個人投資家でもあるため、公開企業の経営状況や経済全体の動向については気にしてチェックするようにしている。

あちこち眺め渡していると、前項では資本側に振れ過ぎた経営の例を最後に少し出したが、全体としてはやはり資本側への配慮が足りてないケースの方がまだ多いだろう。とりあえず売上をあげて大きくすればいいんだ的な発想から出れて無さそうな会社は挙げだすとキリが無い。投資家立場からの発言として、ファイナンスと経営の間をもうちょっと詰めません?と言いたくなってしまう。

スタートアップ系の会社から、資本調達系の相談を受けることもしばしばある。相談を受けてヒアリングを実施していて、正直なところ、他人資本を受け入れる体制が揃えられない状況にあるとのヒアリング結果になるのもまた珍しくない。事業の潜在性が良くないというのではなく、事業管理経営管理、資本管理の十分な体制が組めないのが理由となる。

もちろん、大企業がやってるようなガチガチの仕組みやスタッフを大勢揃え、ついでに法務財務のプロフェッショナルアドバイザーを外部にたんまり揃えて、といったテクニカルな話をしているのではない。外から資本を入れるのがどれくらい重くプレッシャーになるのか、ステップを踏み違えると経営の自由度も狭めていくことになるのをどの程度体で掴めているか、計画上予測しきれなかったような展開になっても、資本側にちゃんと状況説明と説得を出来るのか、バーンレートと資金ショート予定日を見ていて判断を違えてしまうことが無いと言えるのかといった原理的なところになる。

直接投資を受け、シェアを渡すということは、会社の意思決定権と支配権を一部渡すことになる、仮に事業が上手くいかなかった場合、株主側が負ったリスク分の責任を履行することも当然あるだろうが、調達した側に何も無いというのは考えられない。特にある程度Run出来る状況にある会社の場合、最近良く言うのが「見込み通りいかなかった場合の掛け金は、”現行事業も含めて会社を続けられなくなる”というものになるかもしれないけど、それでも調達してこの計画を進めたい?」というフレーズとなる。それでもやる、というのであれば、計画実行精度とリスクヘッジの手を打つお手伝いを始めることになるが、そうじゃない場合は一旦止める側に回る。中途半端な形で進めると関係者全員に迷惑がかかってしまうことになりかねないのと、そうなってしまうと収集をつけるだけでも多量のエネルギーを使ってしまうためである。「年利20%とか30%の条件を前にして、本っっっっっっ当にそこまでして調達したい?」というのも割と良く口にしている。

このあたり、本質のところは格好の良いプレゼンと財務のテクニカルな知識やフレームを使ってという話ではない。事業の実態と資本サイドの期待や感覚を揃えておくことに尽きる。もちろん、必要なKPIを導入したりといったのは出てくるが、KPIそのものが偉い訳ではない。

 

資本と経営、現場のすり合わせ

では、何をどうしてアプローチしていくのか、という話が当然出てくるが、スーパーマンではない我が身としては、魔法の手は持ち合わせていない。効率の良い指し手はあるとしても、飛べて桂馬くらいだろう。盤の向こう側まで一手で行けるわけではない。各分野プロフェッショナルの方と意見交換をさせて頂いていても、マジックは無いよね、というのは共通認識にある。

じゃあ結局は「頑張る」の一言しかないのか、となりそうだがそうではない。絶対とは言わずとも、筋の良い手はあるはずである。

新しい会社さんと付き合いを始める際に良くやるのが、会社の存在定義、ビジョン的なところから経営陣の状況、最近の財務数値、個別事業の状況と管理
スキーム、現場オペレーションの状況と働いている方の日々の感じ、更に手を伸ばすとお客さんの状況まで上から下にヒアリングを実施し、矛盾やギャップが出
ていないかビジネスデューデリをかけるというアプローチである。実に実にスタンダードな方法であるが、丁寧に実施すると、やるべきことは随分と整理される。

本式に実施する際はリサーチプロジェクトを実施するが、簡易にする場合は、経営陣と
主要メンバーに絞ってショートにしたり、小さい会社だとトップの方とやりとりするだけで簡易に済ませてしまう場合もある。今一社、トップの方のみにつく形で、事業状況のモニタ
リングをしつつ、戦略及び事業計画の策定と、日々出てくる問題やリスクの先取り回避やヘッジをかけている案件がある。こういうミニマムの形でも実施は出来る。

過去の経験上、経営側がやろうと描いていることと、実際に現場で行われている、あるいは実行できることの間にはなんらかのギャップが生じている場合が多い。また、経営と現場が上手く揃っていても資本側に目が向いていないという場合も良く出会う。資本、経営、現場と三層に分けるのなら、二層までは揃っていても三層が揃っているのはなかなか見ない。現場の実行能力が足りないところに、経営側が思い先行で走ってしまっているといった場合、実現度の担保されてない目標を資本サイドに提示してしまうこととなる。帰結として良くあるのが、現場側への異常な負担か資本側の失望、場合によっては不正に走ってしまう。コンプラ周りが致命傷になるのは昨今の食品メーカーの事例を出すまでもないだろう。

これは、いかんけしからん駄目であると言いたいのではない。裏返せば、そこを正しく理解して自分たちのやり方として確立すれば、今の時代にフィットさせつつ、より優れた事業体にレベルアップ出来る余地があるということでもある。競合に対しても新しい優位性にしていけるかもしれない。

資本市場にどう向き合うかとのテーマから状況として逃げられなくなっているのなら、この際良い機会と捉えて動きやすい仕組みと考え方を入れていきましょうよ、というのが良く周囲にお伝えしているところになる。

あとは意外とキーファクターが「時間」だったりするのだが、資本だけの動きというのは早く出来てしまう。週明けてみるとTOBの対象になってるのは、自分たちのところかもしれず、更に行くとTOBをかけてさえもらない(資本サイドから見て、価値を感じられない)との判断を水面下で下されていっているところかもしれない。

物事は往々にして、表面化した際には事態は結構進んでいるというのが標準なため、もしかしたら、思ってるほど余裕はないというのが現実かもしれない。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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