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ブラックストーン上陸とベンチャー企業の被買収リスク

2007/11/01 22:41
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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先日、IBMの勝屋さん訪問の際に書いて頂いたエントリ(勝屋さん、ありがとうございました)に唐突に出ているブラックストーンの話。どこかで一度は触れておきたかったテーマなので、一度取り扱いたい。

ブラックストーンが日本に進出、というフレーズでぴくっと反応してしまう方はどれくらいいることだろうか。日経などの経済ニュースでは記事になっていたが、一般的にはさほど反応が無いというような雰囲気を感じ取っている。

実際日本では知名度はほとんど無いため一般的なニュースバリューはさほどないと思われるが、象徴的な報としてこの人とも思わず唸ってしまっていた。

昨今話題に上がることの多くなったM&A絡みの話はもちろん、それも必ずしも大企業大型案件に限らないかもというのが話の結論となるが、あせらず順番に。

ブラックストーンとは

何者でしょうかという基本的なところから。

ブラックストーンの商売は投資ファンドである。且つ、ファンドビジネスを行う会社として先日大規模なIPOを行い世界中から資金を集めて海の向こうの金融業会では話題になっていた。

やや余談になるが、ブラックストーンのIPOについては、ウォールストリート日記の事前状況をまとめたこの記事と、IPO後にまとめられたこの記事あたりが空気を拾うのに良い。

ものすごく乱暴に2点にまとめてしまうと、
 ・LBOファンド
 ・公開資本も得て超大規模
となり、更に簡単に書いてしまうと、金額だけの議論であれば気持ちとして「なんでも買えてしまう」。

特にLBOのスキームに嵌ってしまう業界については、少々の時価総額では完全に逃げ場が無いという状態にある。

似たような話として、モルガンスタンレーが本格進出という話もある。記事をざっと確認すると、

 米大手証券のモルガン・スタンレーが外資系証券会社で初めて日本で持ち株会社をつくることが20日明らかになった。
(中略)
 持ち株会社は「モルガン・スタンレー・ホールディングス」。当初約20人で始め、最高経営責任者(CEO)をモルガン・スタンレー証券のジョナサン・キンドレッド社長が兼務する。

 

と、かなりアクセルを踏んだ本気モードの気配が感じられる。

モルガンについては不動産周辺も大きく視野に入れていると見られ、サッポロと早速手を結ぶとの報が出ている。

 サッポロホールディングスは30日、不動産事業で米系のモルガン・スタンレー証券と資本・業務提携し、飲料事業では国内系ファンドのクレセント・パートナーズと業務提携することで基本合意したと発表した。

 

ガーデンプレイスなどの優良資産をどう取り扱っていくかというのがまずは直近のテーマだろう。

不動産市場については、この先調整期に入るとの見方もぽつぽつ出ており、特にモルガンは機会があれば不動産系は随時手をつけていくはずである。しかし、それだけで終わるとは考えづらく、大きなテーマは三角合併などの資本規制のところが緩和されて動きやすくなった、M&Aの領域が大きくテーマに間違いなくなってくる。

ファンドのターゲット

LBOをベースに話を進める場合、事業の安定性と見込みキャッシュフローの硬さが一個判断基準となる。先日巷を騒がせていたスティールのブルドック買収や北越製紙など、伝統的で落ち着いた業界の再編という話になる。

しかし、大きく割安で将来性があるのであれば、必ずしもLBOに拘るかと問われると、それは希望的観測に過ぎないのではと思われる。無理してまではやらない、というラインが出てきたりはするだろうが、質の良い事業資産を持っている会社も検討対象に自然と入ってくるだろう。また、言うまでも無いがファンドとして日本市場を視野に入れているのは彼らだけではない。

そこで、投資家仲間とも「では、割安なのはどこ?」と議論していると、自然と出てきたひとつのグループが新興系企業群だった。

もちろん、すべてがすべて対象になるとは考えられない。とはいえ、この先5年10年を考えると面白いポジションに行ってる気配のある会社も、市場不安(サブプライムなど市場全体と、しばらく前から続いている新興市場不安のダブル)を受けて相当部分安値にある。つい1年2年前の説明のつかない高値はどこに行ってしまったかとの状況にある。

買われた結果どうなるのか

買われた結果、特に無茶な要求をされたりしなければ、ビジネスとしては根本問題になることはない。株主利益も考えて真面目に経営しなさい、というのがファンド側からの要望だろう。そして、資本効率重視の姿勢や株主への配慮については、もう少し強化されても良い企業があちこちにあるのも事実なので、この点においては適度な刺激は歓迎したい。

気になるのは、産業の肝になるような技術やノウハウ、資産を持っている会社が買われてしまった場合どのような動きになるのかというところである。

日本の大企業の方と会っていると、小規模企業との関係をどう作っていくかというのを真面目に考えてらっしゃる場合が少なくない。米国ほど資本レベルでぐいぐい動くまでにはなってないが、次の事業の芽なり、技術の仕入れとしてベンチャー系の企業とやりとりしている例は決して少なくない。

しかし、ここで資本レベルで楔が打たれてしまうと、交渉をしていたベンチャーのスタッフに代わり、突如として知的財産の利用制限条項が外から現れた法務系のエキスパートと共に出現するという展開にゆるゆる向かっていくというのも考えられなくは無い(現時点ではやや先走りして読みすぎであるが・・・)。

資本サイドになんらかの意思があった場合、株式シェアを大きく握っているとそれすなわち会社の支配権であり決定権になるため、経営者も行動に縛りを受けることとなる。

そして、ここから先は将棋の筋読みのようになってくるが、ブラックストーンの大株主として中国資本が入っていたりする。ファンドの経営を彼らが隅から隅まで決めるという事態は考えられないが、一定の意思は伝えていると考えるのが妥当である。

さて、そうなってくると。冒頭の話の「ブラックストーンが来ます」というシンプルな一文は、米系と中国系の息のかかった資本が国内で本格稼動を始めます、且つ非常に割安な状態に置かれている企業が国内には多数あります、という状況も踏まえて翻訳できる。

ついでに、偶然か何か、サブプライムのような市場不安が起きているので追い討ちがかかっている状況にある。

繰り返すが質の良いファンドが国内に入ってくるのは決して忌避するものではなく、メリットも多数指摘出来るため悪い話ではない。しかし、ディフェンスのされきってない現在の状況では、ちょっと宜しくないなという感覚も同時にある。

各所で指摘されているが、買収防衛策を導入しました。だから安心です、というようなものでは無いはずである。春ごろに向けて、各所でいろいろと動きがあるんじゃないか、とそこかしこから小耳に挟んでいる話も合わせると、サイバードがMBOでプライベート化するという話は割とありなんじゃないかと思えてしまう。

本件、企業規模大小関わらず、活発なM&Aと投資という形になっていくとしたら、プラスになるのはどのような立場やプレイスタイルの人になるのか。想定しない流れに行った際の対抗策はどのようなものになっていくか。ファイナンスやM&Aという切り口は主戦場ではないが、会社をどうしていこうかという議論では割と昨今本業で重く関わるテーマになっている。資本政策やパートナー選定、戦略設計などを見ていると、この手の大型ファンドの動きと余波はとても他人事とは思えない。

おまけ:

 投資、運用系のセミナーを開催することになりました。ご興味のある方は宜しければ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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