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新聞の役割とビジネスモデル

2007/10/08 00:07
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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朝日・日経・読売について、お隣佐々木さんのコメントなども読みつつ、周辺テーマをもう少し。情勢がどうのという政局報道のようなものではなく、ファンダメンタル確認の意図を込めてビジネスモデルのところを。
 
 
固定費と分岐点
 
紙の新聞のビジネスモデルは一般的に固定費が重い。特に全国紙になると何十ページかのニュースと情報を詰め込んだパッケージを成立させるのに、
 1)印刷
 2)配送ネットワーク(+手配り)
 3)営業ネットワーク(2に同じ)
 4)編集機能
 5)記者ネットワーク
というのがワンセット一式必要になる。
 
つまり、全国紙というのを成立されるだけで資本と組織が一定量無いと参入することさえ出来ない。
 
昨今の新聞の問題を一言で集約してしまうと、このワンセット一式を賄うだけの収入の確保が段々難しくなってきているというところに尽きる。損益分岐点を切ってしまうと、全国紙という形は維持できなくなる、もしくはある部分において著しい品質低下を起こすことになる。
(ただし、巧みにアウトソーシングするなどの手が無い訳ではないが、国内大手ではいまのところ向かう可能性の少ないシナリオなため検討範囲から割愛する)

よって、佐々木さんがストレートに

販売も広告も相当に苦しくなっているため、朝日と組んで何とかこの苦境を脱出したかったというのが本音だ。だからANYの核心になっているのは新聞事業の集約であって、インターネットの共同サイトはあくまでも『協力のあかし』として打ち出しただけだ。

と記しているように、損益分岐点は絶対的な最終防衛ラインであり、固定費を賄う規模と売り上げは存在維持の第一条件になる。
 
 
新聞の役割とは
 
専門紙から全国紙まで、新聞系メディアの方にはそこそこお会いする機会があるため、各紙の雰囲気や置かれている状況、業界の動向(専門紙であれば、母体となるセクターの雰囲気が透けて見えることもある)については適時チェックを入れている。
 
新聞って何やってるんだろう?と改めて素朴な問いを発してみると、言葉としてはインフラ、というのが思い浮かぶ。これは、上記のようにネットワークインフラを維持して利を出していくビジネスモデルというのではなく、業界なり発行されているエリアでの基盤インフラとして機能している側面が少なからずあることにある。また、結論を先取りすると、利益の回収装置である広告モデルと新聞の機能が合わなくなってきてるのが言うまでも無く問題の根っこにある。
 
新聞の売りは言うまでも無くニュースとなる。コラムや社説、文化面など内容は多様化しているが一次情報の収集整理と再配布の機能が大事にされていることには変わりない。
 
一次情報を揃えて裏取りをしていく、という作業はなんらか調査レポートなりまとめなり、それこそ記事執筆に関わった事のある方なら体で理解されてるところかと思うが手間がどうしてもかかる。ほんの一行の記述の正しさを検証するためにあちこち駆けずり回るなんてことは日常茶飯事である。
 
シンプルに理解すると、印刷配布など在庫物流系のコストを除くと、組織面では情報の収集と検証のところが新聞ビジネスの重さの要因と言える。
 
 
利益構造再考
 
ちらっとこちらでも取り扱ったが、中堅どころの新聞事業のターンアラウンドをCFOとして取り仕切っている方がいる。
 
元金融業界の方なので、金融系の情報交換でお邪魔したついでに、上記のような新聞社のビジネスモデルについても議論させて頂いた。
 
その場で出た話になるのだが、敢えてシンプルにして引きで見ると、情報の精度や裏打ちへの担保とリスクと言うところで見ると、新聞社のビジネスは法律事務所や会計監査の仕事と比べたくなる。
 
法務財務系を真面目にやった際のシビアさについても説明するまでも無いところだろう。特にどっから出てくるか分からない第三者を想定して内容チェックをする場合は時に果てが無い。また、シビア度が高い場合の支払い費用も推して知るべしというところになる。
 
弁護士や会計士への支払い金額というのは、単純に資格を得た専門家だからというのではなく、担保するリスクの裏返しと理解するのが正しい。何かを支えるという責任は負っているだけでも大きなコストと負荷になる。
 
というところが、上記と同じ話であるが組織の大きさと新聞独自のデスクや規定といった内部チェックプロセスの蓄積というコスト構造の話にやはり繋がるところになる。
 
対する利益面。ここ10年の広告商品の変化についてはここで繰り返すまでも無い。10年前の1997年に検索連動広告なんてものがこれほどまでにメジャーな商品として取引されているとイメージできていた人が世に如何ほど存在しているだろうか。「日本の広告費」などに顕れている広告予算振り分けのシフト、発行部数の低下(露出スペースの縮小=媒体価値の低下)も周知なため割愛。
 
深入りしないようにさらっとだけ脇道にそれると、お金の回り方がインフラ側から離れたところで起きているのはネットの中立性問題も連想される。
 
などと、新聞ビジネス基本編の復習みたいなことを改めてやっていると、M&Aが起きない方がおかしい、というくらいになってくる。あるいは、業界のイロハを知らない素人ですね、と言い返されるのを想定した上で変動費モデル化の検討を進めるか(仮に持っていっても収益の絶対額はどうしても必要になるが)。
 
ネットが伸びているからネットにも記事を出せば、というほど簡単ではないのは欧米系の先行事例でも示されている。国内にも同様。コストモデルと収益モデルがアンフィットしていて、且つマージンが薄くなってくるとビジネスモデルを持たせるのは難しい。
 

 
この辺の問題は四半期に一回くらい思い出しては解き方を検討しているが、毎度すっきりしない。
 
とはいえ、(このフレーズも過去に書いたような気はするが)良い記事を書いていればなんとかなるというレベルは過ぎているのは間違いないところであろう。
 
そして字余りで付け加えると、通販会社がEC化を進めてきた足跡に組織管理や財務管理、ビジネスモデル転換のヒントが幾つかあるように思えている。このあたりは未整理なため、各所ヒアリングをお願いしたりしつつ再考を進めている。

古い皮袋と新しいワイン。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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