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朝日・日経・読売の提携とユニバーサルサービスとしての新聞

2007/10/02 22:31
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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朝日・日経・読売の大手新聞社による業務提携が発表された。内容からして、「業界として歴史的」という表現をつけても差し支えないところではないだろうか。
 
初読での感想とコメントはtechviews.jpでも簡単に触れているので、ここでは割愛する。
 
連想ゲームのように気になったのは、発表内容で全国ネットワーク維持について触れたくだり。

3社は新聞販売事業でも提携した。各社の専売店で他社の新聞も扱える相互乗り入れを、過疎地などを中心に行っていく。新聞販売店の整理・統合に向けた動きとも見えるが「あくまで新聞配達網の維持・強化に向けた取り組み」と、読売の内山斉社長は強調する。

この記載についてまず出てくるのは、ビジネスインフラ、固定費の捻出を行うのに共同化しなけらばならない状況に入ったという判断を下さざるを得なくなったのだなというもの。三社の財務数値を並べてうぅむ、とかやってみたい。
 
もうひとつ考えてしまったのが、新聞とユニバーサルサービスの関係。
 
上記引用内で「新聞配達網の維持・強化」という記載があるが、全国紙という立ち位置から後段で「山間やへき地」とい表現が出てくるように、国内須らく遍くというのが前提にある。動きの感覚としてはユニバーサルサービスの語り口に近いものがある。
 
ここでタイトルにも入れた本題。新聞はユニバーサルサービスとして扱われるべきものか。
  
 
ユニバーサルサービスとは
 
基本から確認。ユニバーサルサービスの定義を政府系のサイトから。

 ユニバーサル・サービスとは、(1)国民生活に不可欠なサービスであって、(2)誰も利用可能な料金など適切な条件で、(3)あまねく日本全国において公平かつ安定的な提供の確保が図られるべきサービスと定義されます(電気通信審議会「IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方についての一次答申」(平成12年12月))。

 ユニバーサル・サービス提供義務は、電気通信、電気、都市ガス、水道、鉄道、郵便などのネットワーク産業の多くに当てはまる特徴です。ユニバーサル・サービスは、市場に競争がない段階では独占事業者がその提供義務を負って、不採算部門の赤字を黒字部門が補填する内部補助方式によってサービスを確保してきました。既存事業者は、企業全体で収支を保障されることを条件に、サービス地域内では、費用の地域間格差がある場合でも均一料金(生活に密着したサービスに関しては低料金)を維持してきました。電気、都市ガス、水道のように、地域ごとの供給事業者が分かれている場合は、同一サービスでも事業者によって料金が異なっています。

周辺コンテクストとしては、民営化するかどうかという規制緩和関係のパターンと、憲法と生存権に近づいていく国民である限りは普遍的に提供されるべきというナショナルミニマムのパターンの2系統が主軸となる。
 
ユニバーサルサービスかくあるべし、という議論の最近動向は、主に通信関係でされている。上記の引用部分も電気通信事業関連の議論から派生しており、詰まるところそれは、NTTの位置づけをどうしましょうかというのにとても近い。
 
また、セット政策となっている通信と放送に関わる放送のデジタル化方面では、僻地の視聴保証を光ネットワークでなんとかしようと検討しているところから、ここで通信政策と放送政策がクロスオーバーして検討されるという少しばかり込み入った状況が生まれている。
 
ついでなのでナショナルミニマムも見てしまうと

日本国憲法25条1項においては、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」として、ナショナルミニマムの達成による、国民の生存権の保障を定めている(生活におけるナショナルミニマム)。

というところになる。
 
ナショナルミニマムについては生活保障と福祉の議論が前面に出ることが多いが、通信、電気、水道、郵便あたりは含んで考えてしまってもよい(法律の理論構成を細かく切っていくと分けた方が良いかもしれないが、一般レベルとして)。
 
 
新聞とユニバーサルサービス
 
では、新聞がユニバーサルサービスとして扱われるべきか、というところであるが、知る限りNTT法ほど明示的な根拠法があるとは聞いたことが無い。
 
それでも全国紙としてのポジションを頑張って維持する、というのが今回のアナウンスメントの読み方となる。ここは義務だから云々というよりは、事業者としての責任と矜持といったところだろう。且つ、深いところで事業体としての信頼を培う基礎機能としても働いているので、営業上のメリットもゼロではない。
  
問題は、このまま維持出来れば良いが、仮にもう一歩二歩状況が進んでシェアードにした固定費の維持もつらくなったときにどのようなシナリオをたどり得るかというところにある。
 
ステップを組むなら、外部から別リソースを引っ張ってくる場合を除いて、

 1)流通(販売)印刷以外の取材編集機能の部分提携統合
 2)組織体としての統合、経営統合

という2段階を順に踏んでいくこととなる。
 
もっと簡単に書くと、三紙が二紙になり一紙になりという道を辿ることになる。収益と財務には逆らえないので、現行トレンドが継続されるのなら、政策補填などを行わない限りシナリオの方向としては避けられない。
 
そこでぐるっと回って出てくるのは、新聞はユニバーサルサービス扱いということになっていうかというところである。改めて定義を確認すると、

(1)国民生活に不可欠なサービスであって、(2)誰も利用可能な料金など適切な条件で、(3)あまねく日本全国において公平かつ安定的な提供の確保が図られるべきサービス

というのが該当事業となる。また、新聞の場合は、一種の教育と民主主義機能のカバーというのを加えても良い。
 
なお、議論として目下は通信周辺が主に為されており、放送は”後で議論する”タグがつけられている状態にある。

ユニバーサルサービス制度を検討する上で、通信・放送の融合の観点で、放送を検討の視野に入れるかどうかについては、2010年以降のフェーズ2において必要に応じて検討していく

いわんや上位のメディアは、となると目下視野には入っていない。
 
がしかし、どうも先々出てくるんじゃないかという気配がなんとなく感じられる。業界構造の長期シナリオシュミレーションパターンの一個として気持ちファイリングしておきたい。
  

 
ついてなので、補足として同時にこのような指摘もされているということも触れておきたい。

ユニバーサルサービスの目的は上記1)〜3)を確保することにあるとした場合、これらはいずれも地理的格差の解消を目的とするものであり、現行制度において、所得格差やリテラシー格差の解消を図る社会福祉政策とは一線を画するものであると整理(注)されている。

よって、この定義の立場からすると、本エントリ冒頭のユニバーサルサービス議論とナショナルミニマムの福祉政策部分についてはかっちり分けるべきというアプローチが出てくることになる。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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