セマンティクスの理解とメタデータの取り込み、ユーザー行動の理解度向上は、レレバンシー向上に留まらず、レコメンデーション精度の向上にも繋がる(両者は双子の概念なので当たり前であるが)。ユーザーが欲しいものが何かを捉え、既存のものに限らず更に追加提案を行う。何が有用で何が有用で無いのか、コンテンツの提供側よりも理解が進めば支配力は増す。
コンテクストマッチング
サイト間のリンク構造のみに依存したランキングではなく、コンテンツ内部の意味解析を利用したマッチングが出来るようになると、オープンネット上に存在しないコンテンツも納得感をもってユーザーに届けることが出来るようになる。いわゆるディープウェブの問題をクリアするのに、第一にクローラーが回れるようにするというのもあるが、回ったあと、ユーザーの納得感をクリアして如何に情報提示するかというハードルがあった。
レコメンデーション向上を実現するため、ユーザーの利用動向、評価情報を蓄積して対応しようというのが、例えばAmazonのアプローチとなる。協調フィルタリングとレビュー情報、レビューへの投票によるポイント付けはコンテクスト情報をユーザー側から獲得していることを意味する。
ユーザーフィードバックの利用は当然ながらこれからも進められる。サーチ利用の結果を保存しタグ付けも行う。しかし、一定の評価情報の蓄積が常に必要であれば、利用頻度の少ないもの、あるいは消費速度の速い情報の評価にはあまり役立たない。コンテンツの内容解析のみで対応出来る範囲が広がることはこれまで上手く取り扱えなかった領域に新しくタッチ出来ることとなる。
サーチエンジンが有償コンテンツの流通と決済にタッチし始めているのは新しい収益源を探してというのももちろんだが、サービス品質が実際のサービスインに際して使い物になるものになってきたためでもある。
パッケージングの進化
サイト設計とコンテンツ制作をパーツから組み立てまで一つ一つ作っていくところからネットは始まったが、CMSの普及によりサイト設計は半自動化されることになった。CSSを上手く利用したテンプレートにコンテンツを流し込み、ビルドもしくはリビルドすることで、サイトは再構成される。CMSの機能の範囲内という制限はつくものの、サイトデザインの再設計もデザイン部分のみに変更をかけて全体反映をかければ良くなった。Blogでこの快適さを日々体感している方は多いことだろう。
ここから、動的生成がもう一歩進むとリビルドのタイミングはユーザーが呼び出す度に行われるところまで進む。手っ取り早い事例としては、サーチサービスの中でも例えばA9のインターフェースやGoogleのパーソナライズ系サービスが該当する。
Ajax技術もそうだが、プレゼンテーション層の動的処理が拡大されると、静的なサイト構造、リンク構造は消えて無くなる。全てはIndexデータへの呼び出しと応答、必要に応じての元コンテンツの表示というソフトウェア的な処理でサービス提供が為されるようになる。
例えば、メディアサイトがとりあえず既定の標準形のリスト順を編集部パターンとして提供はしておくものの、その先はユーザー動向に応じて動的にカスタマイズをかけて提供するというアプローチを進めてもおかしくない。既にTopix.netのようなサイト、Google News、diggなど先行事例は出てきている。パーマネントリンクの価値は当面残ることから、記事ごとにURLを保持していることなど全てを根本的に大きくは変えないとしても、サイドバー、関連情報の提示、検索後のユーザーサポート。コンテンツの提示とレレバンシーというだけでも改善余地の有り得るポイントは多数ある。
メディアサイトが自ら提供するのか、通信社のように情報ベンダーとして専門特化するのかは分からないが、コンテンツの流通部分は大きく変わる気配が出ている。上記の事例以外でも、大規模ストレージを備えたDVR、Tivo、iTuneなど周辺事例も多数挙げられる。
「そろそろ、検索、サーチという言葉は語感として実体と合わなくなってきているのではないか」。FASTの日本法人の方と話をしていてどちらともなく出てきたセリフであった。
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・エンタプライズサーチ事始め
・ビーイング・メタ・デジタル(1):データからメタデータへ
・ビーイング・メタ・デジタル(2):メディアからメタメディアへ
・ビーイング・メタ・デジタル(3):サプライからデマンドへ
・ビーイング・メタ・デジタル(4):コンサンプションセントリックと流通支配