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オープンサービス化の波

2006/01/27 01:47
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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前回記事「境界定義が曖昧になるネットとエンタープライズ」の続きとして、境界定義というよりは変化の方向性について整理したい。

昨年後半から現在起きている技術の変化をどう捉えるかという議論をあちこちで進めているなかから、オープンサービスとでも呼べる概念がふわっと出てきた。

Web2.0と呼ぶのかなんと呼ぶのかはある程度個々人の自由として、今のネットの変化やコンピューター関連ビジネス界隈で起きている動きの根っこにあるベクトルを捉えるには割と使い勝手が良い。概要については、同じくコンピューターワールドの記事中でも触れているため、周辺情報を追加で欲しいという方はご一読頂ければ。ブレストのお相手は記事と同じく藤井さんとなる。


(拡大図)

まず、この図が何を意味しているかだが、図の左の小さい円が出発点のデバイス、周辺に順々にソフトウェアからサービスの層までが連なっている。広がっていく円は二つの意味を持っており、標準化とコモデティ化のベクトルと産業の規模・影響範囲の大きさを感覚的に示している。
 
 
標準化とコモデティ化のベクトル

コンピューターの発展史に触れたことのある方なら、ハードからソフトが分離して独立したビジネスとして発達し、徐々にサービス化するまで堅いものから柔らかいものへの流れは理解されていることだろう。

ある層をベースに次の層が育つにはひとつ条件がある。足場になる左側の領域で標準化がある程度以上進んでいることである。例えば、アプリケーションビジネスが大規模に成立するには、OSの層、もしくは場合によってはミドルウェアの層が固まっていないとありとあらゆるものとの互換性を考慮しなくてはならないために開発投資の効率が上がらず市場規模も大きくならない。現在、SAP、Oracle、Adobeなどの大手ソフト会社が存在しているのは、Windows、UNIX、後継となりつつあるLinuxが市場の標準的な選択肢として緩やかに合意されているためとなる。

標準化される場合もまた、2パターンに分けられる。右上に向かう特定ベンダー(群)によるデファクトスタンダードの形成と、左下に向かうオープン化の流れである。全階層で綺麗に顕れているわけではないが、顕著な例となるOSの層だと、WindowsとLinuxがクローズとオープンの対極に位置している。現象をプロットしていくと図に描かれているように両者は割とセットで起きているのが面白い。

標準化が進むということは、周辺のサービスビジネスを別とすると、技術競争に決着がついた瞬間とも言える。より上位の層に競争がシフトするのは、新しいフロンティアを求めての自然な動きとなる。資本の動きは止められない。
 
 
標準化の進む三層
 
現時点で標準化が進んでいるのは以下の三層となる。

・デバイス
 覇権がある程度確定して半独占もしくは寡占、もしくはコモデタイズして生産効率を軸としたコスト競争が強くなっている。

・プラットフォームソフト
 OS、ミドルウェアなど主要なものは固まり、ネットワーク技術も多種絡まりあっているものの、シスコの統合作業などから概ね標準が決まっている。

・アプリケーション(特に業務系)
 大手のアプリケーション会社は大規模なM&Aが頻発していることに顕れているように、事実上の標準化が進んでいる。アプリケーションベンダーの収益構造がサービスに順次シフトしているのは90年代以降明確な流れとなっている。

これらの領域での大きな決着は概ねついており(一段二段複雑な見方はあるが大勢として)、主戦場はサービスの層に移行している。移行のパターンはアプリケーション、SIの付加商品としてのサービスはもちろんだが、目下急速に伸びているのは言うまでもないインターネット関連のモデルである。

・サービスプラットフォーム
 昨年の後半から、ソフトウェアのサービス化が本格的に始まるというコンセンサスが出てきた。業界の公式アナウンスはマイクロソフトの戦略転換の宣言に見て取れる。もちろん、OSとオフィスの収益は当面固いため急速な舵切りはない。しかし、対岸でのGoogleやYahoo!、Amazonなどの急速な成長はわざわざ確認するまでもない事実であり、いずれ、新しいアーキテクチャーの覇権を賭けての競争に入る。年始の記事でも触れたがマイクロソフトが今回のような戦略転換を表明したのは過去二回。ネットスケープとのブラウザ競争とLinux対抗のときに限られる。

コンピューティングの歴史観から見ると、今起きているテクノロジーの変化は、サービスとソフトの統合度が高まり、IPレイヤーでの実装ケースが普及してきた段階という見方が出来る。周辺で標準化がことごとく進み、ブラウザが最も普及したアプリケーションとなった。合わせて利用できる言語や規格がある程度成熟し安定してきたところで、ソフトウェアを実装する動きが出てきた。サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、インターネットをプラットフォームとして捉えるソフト観が成立することとなる。ソフトウェアの層で起きていたオープン化もまた一段上の層で再現されつつあり、名前をつけるならオープンソースに比して、オープンサービスと言えるだろう。
 
長々と書いているが一言にまとめてしまうと、インターネットはネットワークの一部であり、コンピューターシステムの一部であるということに尽きる。メディア的な成長を見せていることはもちろん大事な側面だがテクノロジーの上に乗っかっていること、そして、そのテクノロジーが今大きく変わる気配を見せ始めていることを意識しておかないと、いつの間にか自分の関わっているビジネスの地形がガラッとかわって、気が付いたら聞いたこともない企業が市場を席巻してしまっている、そんなことになりかねない。もちろん、このような展開になる場合、技術蓄積に時間がかかることもあり、事態に気づいてからではもう遅い。
 
 
今後の動きについて先に少し触れると、マルチデバイスという競争軸が既に見えてきている。モバイルへのフルブラウザ搭載を皮切りに家電がネットワーク化し、背後でAPIで相互に繋がりという流れは何年も言われてきたがようやくリアリティのある話となってきた。実普及には更に数年以上かかるのは目に見えているが、ネットワーク、あるいはIPの届く領域は着実に広がっている。

お知らせ続きになっていますが、日経新聞の「インターネット情報スクウェア」というコーナー向けで先日取材を受けました。「Web2.0で変わるインターネット」というタイトルで1月31日夕刊掲載予定です。割と標準的な話をまとめたために、特集コーナーなどを読まれている方には目新しいものはないかと思いますが宜しければ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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