人材検索業界という、狭いカテゴリー定義が自分の中にある。ウェブを利用した人材紹介、転職支援サービスの中でも検索技術をフルに使って事業モデルを作り上げているところ、具体的にはジョブエンジンとジョブダイレクトの二社を意識している。ジョブエンジンの植田社長には随分前にお会いする機会があったがもう一社、ジョブダイレクトを今回ご紹介頂く機会があったので社長の松本さんと取締役の豊山さんを訪ねた。
実は三人揃って関西出身ということで、やりとりは関西弁混じりで進められた。そのまま掲載、という話もあったが、ひとまずは読みやすく翻訳をしている。また、フリーディスカッションに近い形だったため、どちらの発言とも言えないものが多数あるため厳密に発言者を分けては記載していない旨を了承頂きたい。
--そもそもの個人としての経歴と合わせまして、これまでの経緯をお願い致します。
(主に松本社長)元々二人とも関西出身で大学は別なのですが、高校の同級生でした。出会ったきっかけは高校になります。その後私がインテリジェンスに、豊山がNTTに就職することになりしばらく離れていたのですが、東京で共通してある勉強会に参加したのが再開になりました。
その勉強会で人材業界の課題についてテーマとして挙がり、個別個別の企業が情報を抱え込んで分散していたり、その反対側で人を採用したい企業が人材募集をサイトで出しているが探している人が効率よく見つけられない状況を整理していて、事業の可能性があるのではないかと思うようになりました。
(豊山氏)NTTの頃は初めソリューションビジネスに関わってシステム開発をしていました。その後、 国際部門にて海外事業者とのアライアンス業務、海外WEBサイトの調査を行うようになり、ローカルサーチ、クラシファイドなどその頃注目を浴び始めていたインターネットのサービスを調べたり日本での展開可能性を探ることをしていました。
--現状のサービスラインに事業機会があると考えたのはなぜですか。
ユーザーも情報を一元化してみたいというニーズがあるだろうということが一つ。人材サービス企業も仕入れにあたる人材獲得で広告を出し、出しても集まりが悪かったりとコストがかかってしまっていることから、共同購買の形でのサービス提供の機会がもうひとつです。
収益のポイントは人を確保するところから始まります。全体バランスはもちろん大事ですが、まずはユーザーありきで考えています。登録頂いた人を紹介紹介会社に紹介して手数料を頂く形が基本になります。
--なるほど、サービス開発者と技術者の組み合わせになるんですね。情報を整理するにあたり、アルゴリズムと人の手のバランスはどのように考えていますか。
情報を取ってくるのはマシンです。情報自体を加工することはなく、位置づけ、どのジャンルにおくか配置のみ気をつけています。内部処理としてはフラグ、タグ、切り口をメタデータ的に加えていき、カテゴリーで表示したり、TOEICの有無などで絞込み検索する手助けをしています。
表示系はエンジンのアルゴリズムのみに頼るのではなく、企業統計やランキングのデータを外部から持ってきて並べ替えに使っています。
--どういう人がユーザーになっていますか。
コア人材、能動的で積極的に情報を集めている人が多いです。Googleのヘビーユーザーと似ているのではないでしょうか。検索のワードも3ワード、4ワードの検索で来る人が多く、どういう案件を探したいのか強くイメージを持っている感じです。
--会社として5年後に思い描いているのはどういった姿になるでしょう?
自社のサービスでどういう転職活動をすれば良いのかが分かることです。例えば、紹介会社に行くのがいいのか、経歴書を書くのが必要なのかなど個人の就職活動全体を支援出来るようなものを考えています。
人材サービス業は法人部門の採用アウトソーシングになるところもありますが、私達は企業サイドではなく個人の側に立って行きます。
--最近、ウェブ全体がHTMLベースから離れつつあることなど大きな技術の変化を感じるようになっていますが、どう考えてらっしゃいますか。
ウェブなりHTMLに依存しない形のサービスモデルがどういったものかは検討を進めています。例えば人材情報の規格を定める、職務経歴書の項目やマスターの標準化などにも関わっています。
--技術の変化によってとんでもない方向から攻められるといったことがしばしばありますが、事業モデル自体のリスク回避はどのように考えていますか。
やはり、リアルな業界の作りをどっぷり理解しておくことではないでしょうか。個別の技術の変化に影響されない、根っこの部分を掴んでおくことです。
ネットでサービスをしてはいますが、骨の髄まで人材業界の人間です。パートナー企業の方やユーザーがどういうことを望んでいるのかをフォローし続けることが大事だと思います。
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このところ、お邪魔すると二名以上出ていただいて、その場で半ばブレストのように意見交換が進むことがある。今回も業界の行く末と自社のポジショニングの関係をどう理解しているか、突っ込んだ部分までお話頂くことが出来た。エッセンスの表現が難しく、まとめるのはシンプルな形としたが、奥行きを感じるやりとりだった。
度々のスケジュール変更にも関わらず、社員総出で快く迎えていただいたお二方に改めて御礼を申し上げたい。