先日、ウノウの山田社長と石川副社長を訪問して意見交換させて頂く機会があった。内容は別途として、以前から考え続けていたことをひとつテーマとしてお持ちしてやりとりするうちに少し考えがまとまったのでここでシェアしたい。
Web2.0という言葉と付随する事業モデルイメージが一部で非常に流通している。その勢いは既にバブルなのでは、との声も上がっているくらいである(おそらく、後日振り返るとなんらかバブル的要素は発見出来るだろう)。熱気も含めての感覚は隣の江島さんのエントリが非常に良いので関連リンクも含めてじっくりお読み頂ければと思う。
事業モデルの特徴(抜粋)
なぜ今のようなトレンドが生まれたのか。要素としては、ネットワークの低コストでの普及、標準技術の普及、ハードウェアコストの低減など諸々挙げられるが、要するに少ない資本、小規模で事業を始めるのが出来るようになったということに収斂する。また、上手くすればスケールする可能性は以前とさほど変わらないか下手したら以前よりもスケールさせやすくなっている。
日本でもはてながつい先日まで、数名で運営されていたこと、GREEが法人化前は一人で開発運営されていたことなど(経緯はインタビュー記事でコンパクトにまとまっている)具体的な事例はある。両者ともこれから桁違いに成長する可能性は決して少なくない。
さて、ここで設題。可能性は確かに開けた(ように見える)。では、実際に成長するのは簡単になったのか?
経営環境認識
ウノウのお二方との意見交換で感じられたのは、
・参入は容易になった
・技術で頭を抜けるのは難しい
ということから、足元の競争はむしろ激しくなっているかもしれないということである。資本力で力押しする方法も無い訳ではないが必ずしも有効とは限らない。メディアの力で強制的に普及させても結局弱く、地道にサービスを作りこんでいくことが巡り巡って最短ルートになっているケースはひとつやふたつではないだろう。
ある一定レベルまでは、オープンソースも含めてオープン系の技術が普及し、類似技術の組み合わせになっていくと要素技術がコモデティ化しやすくなる。似たような開発環境、ライブラリ、アプローチで競合するサービスを作っていると必然似てくる。ユーザーは違いを見つけにくくなり同質的競争に入る。
抜けるのが難しいというのを簡単に書くとこのような状況だろう。ある程度まではみんな結構たどり着いてしまい、そこそこサービスとして成立する。
また、ハード、OS、アプリケーションから一部サービス層までが標準化している。小規模スリムなチームで立ち上げたベンチャーでは必然プラットホーム層は競争軸として選択出来なくなり(一部大手では可能)、ある一定範囲に競争の範囲が限定されてしまう。
結果、過当競争が発生しやすくなる。
レイヤーと競争スタイル
経過仮説になるのだが、しばらくの間は多産多死の環境になっていると考えている。
通信からプラットホーム(OSとアプリケーションまで)は規模のメリットが働きやすく、寡占に向かいやすい。OSはマイクロソフトとLinuxに勢力が移りつつあり、UNIXとメインフレームOSももちろん使われているがじわじわと押されている。通信業が(無線LANなどを見ていると違う動きも見て取れるが)、固定通信網と携帯のキャリア網を作り上げるのは大規模な投資が必要であり、多様なプレイヤーがという形にはあまりならない。そもろも電波の割り当ての議論もここに加わる。
最近の新興ネット企業を見ていると、動き方がデザイン会社や広告代理店に似ているところがある。クリエイティブが重視され、固まったやり方で組織を大きくさせていくのではなく、比較的自由に社員が動き回って仕事をしている。
投資サイドもExitが必要であり、当事者も如何に成長していくか意識の中に置いているはずだが、出口は狭まっていっているのではないか、そう考えている。
だからこそ、AOLは買収対象になっていると言えはしないか。
◇
補足:
成長のみが必ずしも事業の絶対目標でないことはここで記しておきたい。
資本主義は基本的に成長を求めるが、インフレ率を吸収し、安定的に事業を維持していく道はひとつ目指されて良い。例えば、地方のオーナー企業や大手メジャーのような非公開安定運営されている企業はたくさんあるが、大きく成長する会社とどちらが世の中にとって素晴らしいかと問われると考え方によりどちらが良いとも言えてしまう。
ネットに関わった事業で、落ち着いて安定的に運営することを目標とするケースは今後一定数出てくると考えている。