お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

モバイルビジネスを取り巻く変化:ビットレイティングス佐藤社長インタビュー

2005/08/16 06:36
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
ブログ管理

最近のエントリー

モバイルシリーズの続き、サーチテリアの中橋社長に紹介頂く形でNILSですれ違っていたお一方、ビットレイティングスの佐藤社長にお話を伺ってきた。モバイルでは珍しくポータルビジネスを展開している。

番号ポータビリティなど、キャリア間の競争前提を変えてしまう話が進行しているが、コンテンツやサービスなど周辺のビジネスでも水平型の産業構造にシフトする動きが出てきており、混沌とした中から何かが出てきそうな感覚は2000年前後のPCインターネットに似ている。

その辺り、渡取締役にもご同席頂き、業界内部から見た最近の動きをお話頂いた。


 ビットレイティングス佐藤社長

--設立からこれまでの経緯をお願いします。

2003年7月に創業しました。ちょうどauで最初のパケット定額制携帯が発売される半年ぐらい前でした。パケット定額制という大きなトレンドを迎える中、モバイルコンテンツ業界の再編に向けたサービスをいろいろな会社に対して提案していけないものか、というところから事業に取り組み始めました。そうした中で、各社が最も苦労していたのが集客力だったようなので、それだったら個人的にもいろいろと経験があったので、会社を作ろうと。

FOMAのパケット定額制携帯の登場など、予想以上にパケット定額化のトレンドが速まった関係もあり、i-modeユーザーも急激に増えてくるなど、今日ではその追い風を受けてモバイルポータルサイトF★ROUTEを中核とした事業を展開しています。現在は、月間でユニークユーザーがようやく100万人規模になってきた、というところですね。昨年より課金コンテンツ事業も立ち上がり、こちらもおかげさまで順調に推移してきています。

--モバイル専業のポータル事業というのはあまり耳にしないですが、なぜ現状の事業構造になったのですか?

もともと、携帯ユーザーが自由で無料でだれもが情報の受け手・送り手になれるというインターネットの良い部分に触れている実感がないのではないかと思っていましたから、こうすればこんなに面白いサービス・世界があるんだ、ということを世の中に気づかせてみたい、そしてそれは自分がやっていくしかないんだ、という信条のもと、5年前に「WAPNAVI」というauではおそらく一番最初の検索サイトを個人で立ち上げました。

会社を設立した理由としては、最初からポータル事業に取り組みたいということで創業したわけではなかったのですが、定額制携帯を持ったユーザーに対するニーズを開拓していく上で、検索ポータルサイトのようなメディアカンパニーがポジショニングとしてベストではないかという結論に至りました。

また、携帯電話におけるポータルサービス事業者はそもそも通信キャリアだと思うのですが、当社は「サードパーティーポータル事業者」として、PCの業界にも通信キャリアにも属さないポジション、つまりオープンサイト(いわゆる勝手サイト)のクリエイターとの関係に軸足を置いた会社として様々な角度から取り組みを行っています。

--モバイルビジネスの最近の動きとして、ナンバーポータビリティなどモバイル独自の構造変化と同時に、大型の提携が次々発表されているように、PCインターネットのサービス事業者との垣根が崩れている動きが指摘出来ます。境界が崩れるというところについて今後の動きをどう見ていますか。

これまでは例えば、通信キャリアに対する営業力があるとか、インフラ・特許をもっているとか、多くのユーザーを抱えているとか、つまりは持つべく人のみに与えられる「既得権益」みたいなものが存在していて、PCなどの異業種からの参入は難しかった、これは否定できない現実ではなかったのでしょうか。

しかし、これからはどんどん市場がオープン化していく中で「具体的なサービス」の中身が問われる状況となり、モバイル業界に多くのプレイヤーが参入してくると思います。これからは、携帯電話だけ、PCだけで通用するサービスということを考えていてはだめで、携帯でもPCでも通用するサービスを提供していくことができる事業者のみが生き残っていくような構造になっていくと思います。今はその過渡期にあると考えています。例えば、携帯端末での音楽配信では「着うた」が先行しているイメージは強いですが、既にPCインターネットの音楽配信プレイヤーとの競争になって来ています。

その中で当社は、オープンサイトという世界を作り出していくクリエイター・情報発信者をアグリゲートしていくサービスを軸足にした事業の構成を組み立てている状態です。

--携帯キャリアを中心に産業構造が作られてきたモバイルの業界ですが、今後水平分散化の動きが予想されます。先の質問と重複するところがありますが、業界構造としてどう推移していくとお考えですか。

PCの世界では、Yahoo!一人勝ちのようになっている状況の中で、今後モバイル業界でも、異業種からの参入・提携が相次ぎ、一再編あるのではないかと思います。これまで通信キャリアを頂点とし、通信キャリアに貢献するためのサービスという点で存在感の強かった有料公式サイトの世界から、携帯と(リアルな)社会をどう組み合わせていくのか、という部分まで含めた広い意味での「サービス」に取り組めるような大きなスキームがどんどん求められるようになっていくと予想しています。

--ナンバーポータビリティ、フルブラウザ、定額制がモバイルのキーワードとして頻繁に語られています。順に、まずナンバーポータビリティからどのような影響を予想していますか。

既存の事業者間での利用者の移動というトレンドよりは、新規参入事業者に利用者が流れるように感じています。利用者獲得のための大規模なインセンティブ合戦のようなことも起こるのではないかと思います。その際、差別化のしやすいデータ通信部分でのサービスの差別化が、重要な存在になっていくとみています。

--では、フルブラウザについて。

公式サイト以外のサービスの利用が増え、よりオープンサイトを利用するという流れが加速していくと思います。つまり、ケータイがメール以外に明確に初めてインターネットに接続されたツールとして使われる状態になるということです。個人的には、ケータイインターネットでの最大のキラーサービスは、いかにインタラクティブなサービスであるか、という部分だと思います。しかし、今日の携帯端末のインターフェイスで実現できる範囲にはやはり限界がある。例えば、SNSサービスをフルフルラウザーから使うのではなくて、携帯電話向けに最適化されたインターフェースで利用するといったニーズはなくならないのではないかと思います。

そもそも携帯端末からインターネットサービスを理解して使っている人は少ないと思うのですが、フルブラウザを利用して携帯端末からどんどんインターネットサービスを使うことにより、逆に既存の携帯サービスを利用する機会が増えていくことになると思っています。

--最後に、定額制について。

業界としては、特に着うたのような大容量コンテンツの利用が進んだというのが大方の評価だと思いますが、携帯サービスの本質的な部分でその真価を発揮するのはやはりインタラクティブなサービスだと思います。

大容量サービスは、ネットワークの負荷・周波数の有効的活用という観点から見て、むしろPCなどを経由して行われていくようになるのだと思います。要するにケータイはやはり、コミュニケーションデバイスだと思うのです。もちろん、ダウンロードサービスも残っていくでしょうし、何より決済手段としての携帯電話の魅力は非常に高いと思います。

ただ、インタラクティブという本質を考えたとき、パケット定額制になって携帯電話からの利用が爆発的に進んだサービスは、現時点ではオークションサービスであり、次に来るのがSNSのようなサービスだと思っています。従って、当社の検索ポータルの運営スタンスは一貫しています。すなわち、いかにしてインタラクティブな体験を得られるサービスにしていくか、という部分です。

携帯電話は情報を持ち出すツールではなくて、情報を入力する装置としての要素が強くなるべきツールだと思うのです。製品としての検索エンジンの完成度を上げること、完成度の高いゲームを作っていくことよりも、それらを通じていかにユーザーがインタラクティブな体験ができるのか、ユーザーの窓口となりうるものを提供できるのか、という部分が最も大切だと思います。

--先ごろ、アップルの音楽配信サービスが開始されました。モバイルでの音楽ダウンロードビジネスに何らか影響があると思いますか?

当社も着うたサービスを展開しているので非常に関心があります。音楽ダウンロードビジネスは、まだまだ権利者側の意向の強いサービスという印象を強く感じます。今後アップルが携帯端末向けサービスも強化することで、競争が起こってくると一利用者としても非常に楽しみですね。

--先1,2年で注目している事業領域は何になりますか。

PCでもまだまだ未開拓な分野ですが、リコメンデーション機能をどう提供していくべきかという分野に興味があります。これはauが提唱している「携帯電話はすべての情報のトリガーになる」ということにも関連していますが、携帯電話はニーズを喚起するべきツールであるべきだと思っています。もっとインタラクティブに、またその所有者に最適化された情報を配信していくべきだし、検索エンジンとの絡みで言えば、検索結果ページをいかに最適化していくかということよりも、いかにして検索させるニーズを喚起していけるようなサービスを作っていけるか、PC以上に問われていると思います。

それがポイントサービスのようなインセンティブを伴ったものなのか、携帯端末IDを用いたパーソナライズされたようなものになっていくのか、当社としても様々な形で模索していきたいと考えています。

モバイルポータルとしては、最初にサービスすることになったRSSリーダー機能の実装についても、そうした模索の一つの実例として考えていただければと思います。

キャリアのプラットホームを利用してのコンテンツ課金サービスを大きな軸として成立していた業界から形を変えていくという方向性がどのインタビューでも出てくる。こちらの記事ではPCポータル側からの取り組みがまとめられているが、今まで取り扱いの少なかった広告とコマースが伸びているというメッセージは基本的に同じとなる。

数年前までモバイルではコマースは無理という話を普通に聞いた。1990年代にはインターネットで物を買うなんて、という議論を普通に耳にしていた。変われば変わるものである。

掲載し切れなかったやり取りで、PCとモバイルの違いが何度も出てきた。PCとモバイルの垣根が無くなって来ているとはいえ、いきなり片方がもう一方にそのままサービスを移植出来る訳ではない。各社矢継ぎ早の提携の発表が出ているのはこのためだろう。早い目に手を打って陣地を押さえたい、速度を優先して外部のパートナーの力を借りる形を取りたい(更にはそうすることでより良い形としたい)という雰囲気が感じ取れる。事業の定義と範囲をどう決めているのかについでも随分と伺ったが、この流れを読み取ってのものだろう。

佐藤社長、渡取締役、夕刻からの長居にお付き合い頂きありがとうございました。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー