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放送コンテンツデジタル化の現在形

2005/05/28 16:01
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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しばらく前になるが、主催しているEmerging Technology研究会TV-Anytime Forumの亀山渉氏に放送のデジタル化とコンテンツ流通についてお話を頂く機会があった(当日の簡単な開催メモと参加者のエントリはこちら)。

TV-Anytime Forumというのは、紹介ページから引くと

The global TV-Anytime Forum is an association of organizations which seeks to develop specifications to enable audio-visual and other services based on mass-market high volume digital storage in consumer platforms - simply referred to as local storage.

ということで、平たく書いてしまうと規格制定の団体である。

当日資料から日本語での紹介を抜くと、

PDRを前提に、AV Contentsの新しい視聴環境を実現するKey Technologyを国際標準として策定することを目的とする業界標準化団体

ということで「放送事業者、Consumer Electronics Maker、通信事業者、Content Creator、Service Provider、等々」幅広い業界のプレイヤーが関わって標準策定を行っている。ちなみに、PDRというのは海外では標準的に使われているそうだが、Personal Digital/Disk/Data Recorderの略で、HDDレコーダーと言い換えて間違いない。

頂いた資料をベースに順次考えを整理しているのだが、まずはひとまとめということでエントリに落としてみたい。
 
 
HDDレコーダーを手がかりに
 
HDDレコーダーを日常的に使い始めて、リアルタイムで放送を見る事がほとんど無くなった。いま放送している番組でも録画を裏で行いつつ、見るのは過去にアーカイブしたもの。必ずしも番組全部を見るとは限らないので、この方が時間効率が良い。

テレビの番組表は”いつその番組を見るのか”ではなく、”いつからその番組を見れるようになるのか”という意味に変わってしまっている。もちろん、VHSの時代から録画は可能ではあったが、機器の使い勝手がよくなったことで使われ方はすっかり変わってしまった。やろうと思えば出来るというのと、手間がかからず簡単に出来るのでは同じ”出来る”でもユーザー行動は違うものとなる。

だいたい、ウェブで先一週間ほどの番組をざっとチェックしてそのまま録画登録を行う。ちなみに、レコーダーはインターネット経由で操作可能になっており、PCで番組を探しながらそのまま録画予約が行える。使っている機種のディスク容量は160ギガ。大体、見終わったものを適時消していけば1ヶ月くらいは残せる。

MPEG-2 (6Mbps)で10局分の放送を24時間録り溜めると19TB必要となる。現在のディスクの価格の下落曲線から2010年前後には数万円で買えるようになる(試算はいずれも当日資料より)。ここまで来ると「選択録画するという概念は無くなる」。観たいものを録る、ではなく、とりあえず全部録ってある、となる。

整理すると、

1)放送された映像は一ヶ月前後まるまるレコーダーに自動蓄積される。対象チャンネル範囲の初期設定以外、ユーザーは録画設定を特に行わない。WOWOWやスカイパーフェクTV、ケーブルのチャンネルなどはチャンネルを追加登録する。

2)番組を見たいと思ったら、録画されたものから見たいものを選んで見る。

3)長期保存したいものを選んで別保存する。ドラマなどシリーズものはまとめてラベルを設定してグルーピング化を行う(RSSやタグ情報が整ってきた場合、グループ化は過半が自動化される)。保存対象にならなかった番組で一定期間を過ぎたもしくはディスクの一定容量を超えたものは自動で削除される。

となる。テレビドラマのDVDの売れ行きにはインパクトが出そうなシナリオと言えよう。

あとは、オンデマンド化と放送事業者が持っているアーカイブの開放度合いにより、コンテンツの取得タイミングが変わってくる。例えば、ドラマのシリーズを途中から見始め、見れていなかった回について改めて落としてくるという使い方が可能になり、検索して探したものを見るといった形にシフトする。コンテンツの配信インフラとして、過去電波しか選択肢が無かったが、インターネット網が代替可能になってきている。いわゆる、通信と放送の融合である。
 
 
テレビ広告は何が変わるのか
 
以上のように放送と視聴の形態が変わっていくとして、自分の中で整理が仕切れていないのがその上に乗っかる広告がどうなるかである。

番組を根こそぎ溜めているとなると、今何人見ているかを示す視聴率は意味を失う。溜めたものを実際に見た視聴数(人数と延べ回数)が基本指標になる。繰り返し何度も見たものは、広告効果が高いという解釈が成立している。

また、コンテンツ部分とCM部分を切り離すと、視聴ごとに広告情報を差し込める。どのCMを流すかを視聴している時間帯、コンテンツ、もし分かれば見ているユーザーの三軸を中心にパーソナライズをかけて提供出来る。こちらに進化すると、インターネット広告でのコンテンツ連動広告(AdSenseなど)のように、番組をスポンサードするのではなく、あるニーズ定義、視聴者のカテゴリへの露出量を購入する広告形態になる。

番組で紹介したものの購入を捉えられるようになると、アフィリエイト広告が成立する。広告情報をどのようなフォーマットで番組に付加するのか、更に購買までのトラッキングを押さえるのかが固まってないため当面実現はしないが、ウェブで一般普及しつつあることからじきに検討の遡上に挙がってくるだろう。

ローカルのハードディスクか、ネットワーク上の個人ストレージか、はたまたオンデマンド放送かは分からないが、ある瞬間にアクセス出来るコンテンツ量が増えた場合、ユーザー側に多すぎる情報を捌くナビゲーションがニーズとして出てくる。これがサーチとして提供されるのなら、検索連動型の広告が提供出来る。対象が映像コンテンツなるだけで基本形は今のウェブの検索広告と変わりない。

同様に、広告というよりはコンテンツへのナビゲーションだが、類似のものをお勧めするコラボレイティブ(平たく書くと、Amazonなどである「これもお勧め」の機能)が提供出来るようになる。

おそらくは、大手のサーチサービスの事業者が進めている映像検索サービスと統合されていくことになるだろう。デスクトップサーチサービスと同じく、レコーダーの側からAPIを叩くのか、検索を行ったあとコンテンツをレコーダーに登録紐付けを行うのかは場面場面で変わることとなる。

などなど、今のウェブ広告での議論を参考にすると、ざっとこんなものが描ける。更にこの先には、企業のマーケティング活動のどこがどう変化するのかというテーマも浮かんでくるが範囲外となるので、これにて。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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