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Long Tailとインターネットビジネスの基本則

2005/03/22 09:25
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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ソフトウェアサービスでLong Tailは成立するのか、という議論が交わされている。発端はここ。名だたるBlogで取り上げられ、コメントやトラックバックも大量についてなかなかに良い感じで話が展開している。

早速取り上げて・・・と思ったのだが、考えてみると、ASPとWebサービスの話が大部分を吸収してしまう。ビジネスプロセスの分解の話、標準化と規格化の話はXML関連でも為されている。というところで、もう少しベーシックなポイントを深めているVentureBlogの「Of Searches and Psychics: The Costs of Long Tail Businesses」を取り上げたい。 

このテーマについては、梅田さん宅でも「ロングテール論について」から、「小さいほうから集積」まで四回続いて取り上げられている。

視点の取り方として、旧来のマスとTailにあたるニッチのどちらのサイズが大きいかというやり取りがされているが、大規模事業を構築しようとしているのでない限り、あまり気にするポイントではないのでは、と今のところ考えている。今思うとLong Tail論の走りといえる渡辺千賀さんの「eBayでバカ・アービトラージ」のダイナミズムに溢れた感覚、中小事業者の新しいフィールドが開けた感覚の方を大事にしたい。

梅田さんの

状況により、ミクロといってもそれぞれの個の立場の違いにより、その判断は大きく左右されるはずなので、ロングテール論とは別のフレームワークを使って議論すべきではないのかな、と漠然と感じています。

との一言はおそらく近い感覚ではないかと受け止めている。

小売りだったら小売りでどの程度の取引シェアを占めるようになるのか、多品種少量生産にどの程度向かうのか、事業者側のインフラ構造は伴って変わるのか(デジタル財はともかく、製造の伴う財については生産設備の基本発想を変えるのは大変なコストと意思決定が伴う)、「情報の分化/消費の分化」で取り上げたように小さなカリスマがお互いにあるような、互いのお勧めリストを共有しあう消費形態が増えていくのかなどといった切り口の方が気になっている。

前置きはこの程度にして、本題に。
 
 
Long Tailのエコノミクス
 
上でも触れたが、Long Tailが主流を占めるとなると、多品種少量生産が世の普通となる。そして、製造ラインの転換などインフラ/プラットホームの変更を迫るものであれば、生産コストは高くなる。モノの値段と収益構造、まとめてしまうとエコノミクスはどう変化するのだろうと考えていた。

議論のポイントになっているのは、財そのものの値段ではなく取引コスト。

as the monetary costs fall, the most important impediments to a transaction are non-monetary: search costs and psychic costs.

平たく書くと、いくら無料でも面倒ならいらないということとなる。

まず、サーチコスト。

When sorting through the list of all music ever released, it would take you forever to find that piece of music you'd actually enjoy. Even at $1 a CD, you'd probably buy nothing, because you'd give up long before finding anything you'd like.

モノを探す過程は直接の出費はなくとも時間と手間はかかる。経済学用語だと機会費用なのだが、要するに「面倒」ということである。

この点、事業者側のサービス提供余地のポイントとなる。例えば、使いやすいツールの提供、すっきりとした画面設計など。

That's why Amazon provides a variety of tools to help reduce search costs: recommendations, samples, listmania, and many other tools. Though not perfect, Amazon now leads customers to buy items they've never heard of before.

ツールは現時点でも日進月歩の進化の過程にある。Amazonに限らずマッチングシステムの極のひとつであるGoogleの検索アルゴリズムも毎週毎日アルゴリズムの変更が加えられている。

Psychic costs。直訳すると心理コスト。

psychic costs measure the stress of having to think about a transaction.

定義を引くとちょっと分かりにくいが、具体例を引くと良く分かる。

Your local phone company has known the concept for decades. Even though you'd save money paying by the minute for local service, you don't. Instead, you just pay the flat fee for unlimited local calling. People don't like to be metered. The psychic cost of stressing over your minutes outweighs the extra money paid for an unlimited package, so long as the total costs are fairly low. This is one of the reasons microtransactions for content have not really taken off.

電話の固定料金が良い例で、「気兼ねなく使える気楽さの費用」とでも言えばよいのだろうか。インターネットの利用量を劇的に伸ばしたのは、回線速度もあるが何よりも費用が月額固定になったことである。その他データ通信、通話やショートメールなど昨今類例は多い。

Long Tailとこの考え方がどう繋がるのかと問われると、そもそも、たくさんの情報に自由に触れることが可能であることが成立条件の一つとなる。回線費用を気にしてちょっとしか使えないのであれば、膨大なTailに触れる機会さえ得られない。
 
 
Long Tailとインターネットビジネスの基本則
 
さて、この後ケースとしてNetflix, Napsterが出てくる。なぜこの事例かは明快だろう。どちらも固定費用でサービス利用が出来る。日本だとぽすれんを加えても良い。固定費用にし、もしくは参加費用をゼロとして、Tailの部分へのユーザー接触回数を出来るだけ増やした事業設計をするのは昨今のインターネット企業の基本則になっている。

この後のサマライズが非常に良い。翻訳する気持ちで。

Internet companies are driven by non-monetary costs as well, since they aggregate many small transactions that wouldn't otherwise happen. As a result, many companies have focused intensely on search. Search tools are improving significantly, matching content or products with people. As search costs continue to fall, expect an increased focus on psychic costs. Simplicity, limited choice, and hiding the masses of data will all become more common. Even sophisticated consumers prefer limited choice when the transactions are tiny.

インターネット企業の勝ちパターンは既存のビジネスを単にデジタル化するのではなく、取引コストと機会を如何にコントロールするかにかかっている(この部分だけ読むと他の産業も共通だが)。ちょっとしたデータを大量に集め、ひとつひとつは小さくとも大量に処理しマッチングを高効率でかけることで小さい利益を手広くかき集める。

結果、マッチングの仕組み、分かりやすいところで検索の仕組みに競争のポイントが集約される。マッチングの精度が上がり、Tailの部分でユーザーの取引コストを越えた利便性を提供出来るようになると、過去存在しなかった市場機会が世の中に顕れる事になる。Googleが急に存在感を増し、高速で成長しているのは検索技術が優れているからだけではなく、広告の市場でLong Tailを大規模に捉えられたからである。検索市場そのものの伸びも相まって乗数がかかった成長を描いている。

Long Tail論はインターネットビジネスの勝ちパターンをより分かりやすい方法で示せているモデルと考えている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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