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インターネットが生み出したもの:証券市場の事例

2005/02/01 14:32
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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インターネットの普及、もう一歩原点に帰って情報化が進展することで結局何が起きているのか。このBlogでそもそも追っているテーマである。しばらく筆を取る間が空いてしまっていたので、原点回帰と自己確認の意味も込めてまとめてみたい。

トリガーとなったのは、板倉氏のエントリ、「オンライン証券会社の増収は株価の下げ圧力」と「ゴールドラッシュに例えて」の二つである。前者が理論編、後者が解説編のような組み合わせになっているが、両方合わせて、ネット証券の一般化により、証券市場に起きた変化についてコンパクトにまとめられている。
 
 
ディスカウント・ブローカーの出現と進化
 
資本市場は企業と投資家が資本(実際には、証券だった債券だったりする訳だが)を売買している場である。最近は米国ナスダック市場を筆頭に電子処理が進むことで物理的な場は少なくなりつつあるが、表面的な形態はともかく、資本がやりとりされていることに変わりはない。

インターネット以降特に進んだのは、手数料の下落である。取引手数料を下げたビジネスモデルはチャールズ・シュワブによって世に送り出されたが、テクノロジーの支援を得て加速した。米国でも5ドルとか10ドルといった手数料の証券会社がごろごろあるのが実情である。

日本でも松井証券からマネックス、イートレードなどオンライン専業のプレーヤーの市場参加で同じ傾向が出てきている。

ホテルは、宿泊費を下げ、価格競争が始まりました。
(=ネット証券の出現による売買手数料の低下)
採掘者は、それまで、せいぜい年に数回しか採掘に出かけなかったのに、最近ホテルが宿泊費を値下げしたのをいいことに、毎日ホテルに宿泊し、毎日採掘に行くようになりました。もちろん鉄道を利用して。
(=個人投機家の増加)
一泊辺りの宿泊費は、確かに安くなったのですが、毎日宿泊するものだから、結局年間の宿泊費全体は、むしろ増えてしまいました。
(=市場全体の取引手数料の増大)

文中の比喩はゴールドラッシュに喩えて出てきているものだが難しいものではないので、特に補足はしない。
 
 
削られるマージン
 
ここからが面白い。

宿泊費の増えてしまった採掘者にとって、それまで以上に多くのゴールドを掘り当てないとならなくなります。
これは、すなわち、採掘者にとって、それ以前は、1Kgのゴールドで充分満足していたのに、今では1Kgより、もうちょっと多く採掘しないと、同じ満足が得られなくなったということです。
(=「個人投機家の期待収益率は、取引手数料の増大分と同等程度上昇する」)
ところが、「採掘場」は、採掘者の都合だけで、直ちにゴールドの産出量を増やすことなど出来ません。
よって、採掘者は、増えた分のコストを補えない採掘場の採掘権を「割高」と感じるようになり、次々に「もっとゴールドの取れる採掘場は無いか?」ということで、採掘場を渡り歩くことになるわけです。
渡り歩くということは、採掘権を人に譲り(売る)、その金で別の採掘権を買うということになります。

資本の分配ステップを考えると、企業がどれだけ(資本的に)儲けられているか、つまり、調達した資金をベースに手元で自由に出来るキャッシュを生み出せたかというところがまずスタートラインに来る。あとは、企業が先々への投資も含めて内部に留めておくものと投資家に還元するかのどちらかとなる。この点は非常に大事で、原資が企業のキャッシュフローしかないにも関わらず、取引手数料が増えているとなると、マージンの薄い取引をしていることになり、企業か投資家の取り分は少なくなる。

投資家が自分の取り分を少なくてよいと思うのは市場全体で緩やかな合意が必要になるため、そう簡単には成立しない。企業にコストを押し付けても、本来自らが欲しいはずの企業の収益力を損ねてしまうために本末転倒になる。よって通常は、もっといいところはないかと別の投資対象を求めて動いてゆくことになる。

企業の収益力は一朝一夕で変わるものではない。となると、投資家は別の所に動く動機を得る(そして、更に取引手数料が上がる)。同時に、企業からすると、手数料の上乗せされた資本の”仕入れ”を行うことになり、つまり資本コストが上がるので、同じ売上+(商品)コスト構造でもキャッシュを生むのは難しくなる。

以上がインターネットの普及で証券市場にどのような影響が出るのかという問いへの回答例となる。勘の良い方であれば、上記がバブルの発生要因にもなりうることはお気づきかと思う。

上記の理解に立つと、企業の競争力を決めるのは、証券市場に参加するプレイヤーのファイナンスへの理解はどの程度高いかというもう一つの答えが導き出される。義務教育も含めて、ちゃんとした意味でファイナンスの基礎概念に触れる機会が非常に少ないというのは、静かなところで国力を奪っているのかもしれない。

引用のお作法に従い、ポイントのみ抜いてきているため、さっと読んで理解しにくかった場合、「オンライン証券会社の増収は株価の下げ圧力」と「ゴールドラッシュに例えて」の原文二つを是非お読みください。さらっと書かれていますが、中身のあるエントリです。

また設題はもう一つ、そもそも生み出されるキャッシュフローの方には(つまり、商品市場と生産サプライチェーンには)影響がないのか、両者に共通したロジックはないのかという問いも引き出すことになる。これはもちろん、影響があり、共通性もある程度見つけられるというのが答えとなるが、また別の機会としたい。

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空いてしまった期間中にチェックのみ出来ていた記事、後半置き去りにしてしまっているIBMのパテントの件も随時まとめてアップします。

追記:
ファイナンスBlogではないので詳細は触れないでいたが、非常に良い補足となるエントリが為されていたのでご紹介を。「市場流動性」(板倉雄一郎事務所)。そう、こういうことをお伝えしたかったのです。自分の書きたかったことを他の方のBlogで発見するのはやはり良いものですね。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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