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ウェブ化とメディアの現在:タカヒロノリヒコ氏インタビュー

2004/11/16 22:24
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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メディアと広告というテーマは、広義のコンテンツ産業も視野にして最近細かめに追うようになりつつあるテーマである。デバイスの発達と普及が情報の配布と利用形態を変えつつあるところで、技術自身の変化にもフィードバックする形での影響を感じつつある。このあたり、広告とメディア論に詳しい、電通インタラクティブコミュニケーション局インタラクティブ・クリエイティブ部のタカヒロノリヒコさんにお話を伺った。MEDIOLOGICというBlog及び個人サイトも運営されている。

--過去のエントリでお聞きしたいものがありますので、軸にしつつでお願いします。まず、「injection / influence」であるように、インタラクションをキー概念として持たれていますが、ウェブの方がブランドを深めるためのメディアになりうる、というところでしょうか?

コンシューマサイドの情報行動が変われば、情報技術の使われ方が変わるので、メディアというのは常に変化します。なので、将来的にどうなってるかは分かりませんが、少なくとも現時点ではウエブはブランドを「深める」ことについては非常に有効なメディアのひとつだと言えます。それは従来のメディアでは不可能であった、コンシューマサイドの”働きかけ”に基づいて”反応”するから、ではないか、と仮説を持っています。

技術的にも役割的にも一方向に情報が送られるマスメディアは、情報発信者側からの”働きかけ”に対する”反応”を期待されるのみですが、ウエブが実現するのは、相互の”反応”=インタラクティビティですから。普段の生活における人間関係でも、一方的に話すよりも、互いに会話をしあったほうが互いのことがわかりますよね? ウエブも同じようなものなのではないでしょうか
 
 
--デザインというところで、「デザイン、でしょう。デザイン。」であるように、綺麗なデザインと伝わるデザインは違うという話はありますけど、どういった理解になるのでしょうか。

これは上述した「インタラクティビティ」に関係します。「どういった反応をしてほしいか?」という”経験”までデザインがされているか否か、ということです。インタラクティブ・デザインは「見た目」のデザインと「経験」のデザインの双方から考えられなければいけません。なので、グラフィック・デザイン領域の視点と、イベント会場・博覧会のパビリオンの展示設計の視点と、認知心理学でいうアフォーダンス的な視点の3つから学ぶことは多大にあると思っています。
 
 
--広義のデザインというか、例えば、「ブロードバンド時代のデジタルインセンティブ」でショートフィルムの有効性を指摘されています。ネットワークが太くなればデータのリッチ化は自然進むものですが、それはイコールでムービーになっていくものでしょうか?そこにインタラクションは発生しないのでしょうか?

「インタラクション」の定義によると思います。実際にマウス片手にクリックすることが、「行為としてのインタラクション」だとすると、映像を見ていて「すごい!」「おもしろい!」と思うことは、「感情・感覚としてのインタラクション」だと思っています。

具体例として、ショートフィルムをPC上で見せる場合、というのを考えてみましょう。実際、PC上の動画再生ソフトで映像を見るのは、苦痛です(笑)。ある話によると、映像が始まってから3分ぐらいで”落ちる=見るのをやめる”人が多いらしいんですが、この3分目に新たなストーリー展開や演出を埋め込むことで、より長い時間見てもらえるようになるわけです。よく「ユーザーが飽きるからクリックさせる」という話もされますが、むしろ、漫然と見せているだけでも「インタラクティブ」なことはできる、と考えてます。
 
 
--コンテンツの「お持ち帰り」というのに度々触れられていますが、お持ち帰りと言えば、iPodを利用した非同期の放送、PodCastingの流れが出つつあります。注目の範囲内でしょうか?

PodCastingもそうですし、今後出てくるであろう、携帯へのよりリッチなFLASH対応など、”ハンドヘルドなデジタルインセンティブ”というフレームで注目しています。コンテンツビジネスとしてもそうですし、もちろん広告ビジネスとしての拡張もありえますし。付け加えますと、従来のネット/広告ビジネスは、ブラウザやメーラーの中でのビジネスです。beyond the browser なビジネス領域はまだまだあるんじゃないでしょうか?
 
 
--ここ何年かのテクノロジー業界での大きなトレンドはパーソナライズです。Tivo、すご録、Netflix、Blog、A9、パーソナライズサーチなど、個別化の動きは着実に広まっています。ユーザーが主人公化していくトレンドと解すると、広告の為すべき仕事は何になるのでしょうか?

広告が成すべきことは「企業と生活者の良好な関係作り」であることは、未来永劫変わりません。情報技術や情報行動の変化がどのようなものであっても、です。人ぞれぞれにパーソナライズした広告を届けることができれば...、というアイデアも今に始まったことではありませんし。ただ、重要なのは、広告の使命としては、ある情報を多くの人に届け、ある種のノイズを発生させる、という部分もある、ということです。

パーソナライズされると、「欲しい情報だけが届く...」という話がよくされますが、これだと「偶然の出会い」を発生させることはできないでしょう。人間関係でもそうですし、趣味・嗜好でもそうですが、「たまたま」というのが生活を豊かにしている部分があると思います。なので、パーソナライズによる的確なターゲティングと偶然の出会いというノイズ形成、という2つのバランスを考えていくことが、広告が為す役割のひとつになるのではないでしょうか? 明確なターゲティングに基づく情報配信のほうがROI的には一見よいように思いますが、次のような例を考えてみてください。

二人の人物AさんとBさんがいたとします。Aさんがある商品を手に入れ、Bさんはその商品のターゲットでなかったとします。でもAさんが友人であるBさんから、「それ良さそうだね」とか「いいもんもってるね」といわれることで、商品購入者であるAさんはその商品を所有したことへの満足度が高まり、ブランドへのシンパシーが高まります。

こうした「ブランド体験」は実際はもっと複雑なものですが、ターゲットとその周縁の両方から情報の流布を考える必要があります。これは必ずしもパーソナライズだけではできません。
 
 
--世代が落ちるにつれて、マルチタスキングが日常化しています。「FCS使いまくり」であるように、時間内の意識のシェアを高める方法として、フルスクリーンは一つの手法ですが、邪魔をしない、という既存のウェブの原則から外れているものが受け入れられていくものでしょうか?また、PCはフルスクリーンでも隣でテレビやiPodが唸っているという環境が日常化してるなか、フルスクリーンはどの程度のインパクトを持つと考えられるでしょうか?

受け入れられていくでしょう。フルスクリーン型コンテンツはイベント会場に入り込むようなものでしょう。例えばディズニーランドにいって高層ビルが見えたら興ざめしてしまいますよね。当然、内容のよいコンテンツでなければ、フルスクリーンを使ったところで”ケタグリ”で終わってしまうでしょうが(笑)。

コンテンツに「入る」「出て行く」という通常博覧会のパビリオンや大型遊園地のアトラクションにあるような導線・体験設計ができれば、という前提ですが、サイト来訪者が感じる”体験”度合いはフルスクリーンのほうが大きいと思います。他のデバイス/ツールとの関係でいえば、さほどの相関関係はないでしょうね。むしろ FLASH があらゆるデバイスのインターフェースになってきているので、ユーザーの”慣れ”がどんどん進むでしょうから、インパクトというよりも”普通化”といったほうがいいかもしれませんね。

もともと embed 型のデバイスではブラウザはなく、FLASHが直接起動していたりするので、最初からフルスクリーンでしょうし。
 
 
--Blog、SNS、RSS周りが口コミマーケティングのネット版として認知されつつあります。広告業界としてはどのように取り込み、付き合っていく必要があると考えていますか?

すでに、友人である 29man 氏がやられているケースのように、ブランドとコンシューマとの関係性を高めるツールとして注目されています。一方で広告配信の仕組みとしては、情報の伝播がどのぐらい為されるか未知数なので、仮説をづくりを行っている段階でしょう。

ただはっきり言えるのは、広告会社にとって「脅威」なのではなく、むしろ新たな「シカケ」のために歓迎されるべきものである、ということです。その際に、BlogやSNSなどが今のままのものであり続けるのか、あるいはもっと別の使い方、もっと別の進化があるのでは?とウォッチし続けることがもっとも重要と考えています。

今の時点で広告メディアとしては想定できないものが、ある閾を超えると一気に強い広告メディアになってしまいますからね(笑)
 
 
--段々とまとめ的になってきますが、ウェブとはどのように生かされていくものであり、その中でインタラクションとはどのように取り入れられていくものでしょう?

大きなテーマなので、簡単に答えることは難しいのですが、ある著名なコピーライターの方が、とあるインターネット大型イベントの終会の辞で、「インターネットだ技術だなんてどうだっていい、ただ人間がシアワセであればいいんだ」と、そのイベントに大きく関わったにも関わらず言われたらしいんですね(笑)。

また、東京・青海にある日本科学未来館のビデオ展示で見たんですが、リニアモーターの発明者という今は90代近い研究者のインタビューがあって、そこでその方が「僕の夢は、世界中をリニアで結ぶこと」って(笑)。

ウエブの世界というと、とかくIPOだとか、億万長者だ!って話が「ドリーム」なんだという風潮がありますが、果たしてそれでいいんでしょうか? むしろ人の「シアワセ」を形成していく技術・ツールとなっていけばいいかなと思っています。

なぜなら「インタラクション」は別に新しいものでもなんでもなく、普段の生活にあるものですから、もともと。10年ぐらい前ですが、僕の大学院時代の教授が当時、「やっと家の電話に子機をつけたんだ」って話をされて、で、「うちの連れ添いと話が減ってたんだけど、子機をつけたおかげで会話が増えた」って(笑)。

デバイスを介すなんて、寂しい世の中だ、っていう人もいるかもしれませんが、むしろ電話だって、手紙だって、もともとは「新しいメディア」だったわけだし、ウエブも今まで以上に”普通化”すると思いますしね。そうするとやっぱり「シアワセ」が増えたほうがいいでしょう。どのように取り入れられていくか、というよりも、そのように取り入れられるようにみんなで取り組む、という風潮にしたいですね。

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初めてお会いした時は非常に美味しい焼肉屋でタン塩やらカルビやらを突付きつつ、コンテンツを通じてコミュニケーションをすること、経験を伝えることというのが何を意味しているのかについて、Basicなところから教わるという実に至福の時間を頂いた。そのときの話からもうちょっとちゃんと整理した形で伺ってみたいと思っていたものが本稿となる。

広告業界は使う側のロジックが表に出やすい業界なので、テクノロジー関係の人の話との温度差を測ると面白い。VC周りで非常に注目を受けている技術体系が全く知られていないことなど、ごく普通の光景と言える。このギャップこそ普及への壁であり、キャズムの谷となるのだろう。

しかし、世の中に一般化するのは、谷を越えるにはこの全く異文化とでもいう方々に受け入れてもらって初めて成立するものである。それゆえに、ギャップの大きさ深さをこれからも見て行きたい。

次はデジタル家電か。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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