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普及期の技術と社会受容:RFIDをショートケースに

2004/09/03 14:39
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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テクノロジー産業で来るべき未来があるとすれば、そのひとつはRFIDである。実に地味でこつこつとした事業開発が続けられている領域である。派手さがない分、紙面を華々しく飾るということはあまりない。が、断続的に耳にする情報は着実な広がりを伝えている。久しぶりに少し攫ってみたい。

まずはInformationWeekの「RFID To Flourish In Pharmaceutical Industry」より。
 
 
コスト要因
 
RFID普及の鍵となる要素は幾つかあるが、まず真っ先に出てくるのはコストである。いろいろ追跡出来ると便利、というメリットは「それを実現するのに幾ら必要なんや」というシンプルな一言がまず壁になる。サプライチェーンの効率化などの効果が望めるにしても、導入維持コストが高いと損益分岐点もリスクも高まるためまったくもって意味がなくなってしまう。まず普及できるまで価格を落とすことが業界の初期ミッションとなる。

また、使われてスケールが出ないとコストが落ちないという逆の面もあるため、使えるところから徐々に取り入れていこうというアプローチの同時に進められることになる。

Use of radio-frequency identification by pharmaceutical companies will surpass that of consumer packaged-goods makers within 18 months, predicts a new Meta Group report to be issued Tuesday. But predictions that most pharmaceutical products will be tagged with electronic product code-compliant RFID tags at the pallet and case level within three years are "overly optimistic," the report says.

例えば、トラッキングに価値を見出しやすく製品単価も比較的高くなる製薬関連。流通段階のパレットやケースなど箱単位での追跡が先行している。
 
 
安全性という副産物
 
ただし、製薬の場合は、効率化を合わせて安全性が導入の一要因になるが、この安全性自体が別の懸念を巻き起こす。

Other questions that need to be addressed include the need for the FDA to validate RFID systems and the unknown impact of radio-frequency energy on drugs.

最も大事な薬自体の品質管理へのネガティブな影響がないかである。食品、化学系などには同様の展開が予想される。

この記事に対してFuture Nowでのコメントは以下の通り。

Recent hacking fears will lead to delays. But their use in pharma will lead to familiarization for the public and help remove many fears of the technology.

安全性への懸念というのは、新しい技術がまだ受容されておらず、リスクが十分に理解検証されていない状態がゆえに発生している。当初激しかったGmailへの反発も同じフレームに乗せられる。これらの議論は本質的な問題であれば、提供側が是正するなりの対応をする必要があるが、議論を深めるうちにそう大した話ではないという認識が一般化していって問題自体が消えてなくなることもある。Gmailも気が付けば結構普通に使われている訳である(もちろん、頑として使わないという人がいることも事実であるが、これは一定率起きるので本論の範囲外となる)。

そうなると、実運用が始まり、実際に何が起きるのかの検証が進むと同時に、使っていくこと自体に慣れていくことはこの先の普及過程への影響は少なからずある。例えば、製薬が本格導入して安全検証も終え、かつコストの問題もクリアしたときに、食品、(食品)流通のマネジメントは導入しないという判断をすると、導入した競合に対して劣勢に立たされる可能性がある。そうなると業界こぞって一気に普及というシナリオになり、新たなるスケールメリットの獲得により更なるコスト低減が可能になる。

おそらくは、RFIDはこういうシナリオで普及していくに違いない。
 
 
社会的受容
 
さて、安全性と社会的需要についてはMasa33 blogにて「RFID利用に対する法規制の動き」として幾ばくか触れられているので紹介したい。

カリフォルニア州で「"RFIDを使って情報を収集する企業は書面の同意書を事前に取得すること"」の法案化が進んでいる件、ユタ州、ミズーリ州で「消費者の告知せずに商品にRFIDを埋め込むことを禁止する案」が同じく法案化目指して動いていることを触れた上で、こう指摘されています。

感想: 新規技術について社会的受容性を作っていく活動はイノベーションにおける重要な課題であり、コトラー先生はこれをソーシャルマーケティングと言っています。 しかし、この活動の難しさを今回の件でもあらためて感じました。 啓蒙活動をしようとしてかえって過剰な反応を煽ることにもなってしまうからです。 とはいえ、実益があれば理論上の危惧を消費者は受け入れるでしょう。 つまり、消費者が便益を体感できる利用シーンを作ることがRFIDに対する受容性を養う近道だと思いました。

内容的に特に追記するまでもないが、RFIDは普及前のごちゃごちゃとした状態にあり、メディアで取り上げられる声も危険性を声高に指摘するものあり、反対に安全性の検証の話ありとまったく落ち着いていない。後世から振り返ると、確かに過剰とも言える議論は混ざっているだろう。今の私たちがテレビ普及期のエピソードを聞いて思わず笑みを浮かべてしまうようなこともあるのだろう。

しかし、普及期というのはそんなものだというのが考え方としておそらく正しい。インターネットからモバイルから大小様々なイノベーション事例を見ていると多かれ少なかれ何か起きている。通過儀礼のようなものなのだろう。

※今日の夕方、グロービスを会場にして開催されるMOTをテーマとしてオープンセミナー【MOTライヴ】 「日本を再・技術立国にするためには?」が開催されます。グロービス・キャピタル・パートナーズのパートナー&COOである加藤隆哉氏などもスピーカーとして参加されますので、この分野に興味のある方は是非。
 
         
追記:
某所より激しいコメントを頂きましたので、追記を。

本エントリの趣旨としては、技術の導入期には様々議論が起きることが通常であり、あとから振り返ると過敏反応とも言えるやりとりは間違いなく含まれているだろうということ、また、これらの議論は無駄なものではなく、全員が理解し納得するには必要なステップであるということになります。

テレビ導入期にしても国民全員の頭が悪くなるというような議論は今でこそ懐かしさと共に振り返られるものですが、それは今だからこそ言えるものであり、当時はその議論が必要だったはずです。

今行われている議論が無意味だという立場、主張ではないことをここに補足いたします。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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