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IT投資は生産性向上に本当に寄与したのか:FRBの見解

2004/07/30 07:43
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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マクロエコノミーの視点で見ると、ITの議論は詰まるところ生産性の話に帰結する。バブルの頃のメディアの動向を追っていた方なら記憶に残っている方もいらっしゃるかと思うが、今は懐かしいニュー・エコノミー論も詰まるところは生産性向上と経済成長の関連がテーマである。EconLogが久しぶりに「More on the Productivity Story」というタイトルで生産性議論のエントリをしているので見てみたい。

参照先の資料はFRBの「Productivity: Past, Present, and Future」。発表元がFRBだけに一応、国の公式見解的な位置づけとして受け取ってよいのだろうか。

先に結論から。

In conclusion, productivity growth--buoyed both by favorable cyclical and by structural factors--has greatly contributed to the recent benign coincidence of rising output, expanding profit margins, subdued unit labor costs, and low inflation. But because the future does not simply replicate the present, uncertainty surrounds the path that productivity will take from here.

まず、マクロ経済の方での生産性向上は認められる。マージンの向上、単位あたりの労働コスト、低いインフレ。美しい。対して、この先も同じ感じで進むかははっきりしていないといういう指摘も為されている。

テクノロジーとの関連についてはこのようにまとめられている。

Productivity booms seem to involve four key ingredients: technological innovation; the willingness and ability of owners and corporate managers to reengineer the internal organization of their firms to take maximum advantage of those innovations; financial sector innovations tailored to the forms of business organization predominating at the time; and a skilled and flexible workforce.

要するに、IT投資は意味があったし、情報処理能力で勝負が決まりがちな例えば金融業は競争力にも影響を及ぼした。これら個別の企業の努力が競争の名の下に繰り広げられるとマクロ全体にもインパクトが出ることとなる。

ニューエコノミー論のような華々しい話ではないが、結構成果は出ていたという実に現実的な結論になる。インターネットの普及状況などとも重なる印象で面白い。世の中結構こういう当たり障りの無いところに落ち着く。

生産性に関連するところを過去エントリから抜くと、「大型M&Aから読むエンタープライズ市場の変化」で取り扱ったソフト産業の成熟化、続いて発表されたマイクロソフトの配当政策の変更、「Intelは成熟期に入ったのか?」あたりを見回すと、
 ・チップ、アプリなどこれまでの主要市場の伸びしろは失われている
 ・配当政策を通じてベンダー側も成長余地の少なさを公式アナウンスしている
というところから、新しい技術が普及することで世の中に変化が起きるという2000年以前のパターンは一旦終わっていることが分かる。

さて、終わるとすれば次はどうなるのかである。

Ferguson and Wascher point out that previous productivity booms have come to an end, in part because innovations became "played out." I wonder whether we have reached a point where fundamental innovations are following on one another so rapidly that we might not have an interruption to the productivity boom. Perhaps nanotechnology and biotechnology will take off before the computer and communications revolution based on Moore's Law wears out.

ITを軸としたストーリーは終わりつつあるかもしれないが、イノベーションというと、ナノテクとバイオが次の本命として立ち上がってきている。本格化したらどうなるのかがひとつ。
※バイオは製薬ではなく、材料科学の一部と捉えると、生産方式のイノベーションに繋がるために、既存の仕組みを効率化高速化するIT技術とはまた違ったインパクトを生めるかもしれない。しかし、まだ産業として実態のはっきりしない状態なので、議論には尚早でもある。

もうひとつは、ブロードバンドの普及で中小まで含めて広範にサービスを提供出来るプレイヤーが出てきていること、隣接市場が広がっていることなどで市場が再定義されてきていることである。大手ハイテクの顧客は同じく大手企業であることが多く、世の中全てを回りきったとは言い切れない。むろん、現状の事業モデルだとコスト構造が高すぎることから、そのままスライドして中小に攻め入ることは出来ないため役者は入れ替わる可能性が高い。

EconLogは「For Discussion.」ということで議論の種を提供することに主眼があるため、結論は明示していない。また、そもそもテーマとして議論の沸騰する分野なため、Blogのいちエントリくらいで美しい答えを出せるものではないが、とりあえず情報アップデートにて。

ちなみに、関連エントリは「Growth: Causal Factors」カテゴリでまとめられている。「
Hours Worked In the U.S. vs. Europe」、「Moore's Law for Storage」など近しい議論もされているのでご興味のある方はどうぞ。更に参考までにFRBの2004年の対外スピーチについてはこちら

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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