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GoogleとYahoo!の価値創造における根本的な違い

2004/07/05 12:12
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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とある投資家の方から、GoogleとYahoo!の価値創造における根本的な違いとは何だろうか、というシンプルな質問を頂いた。シンプルであるが、考え始めると深い。せっかくなので、まとめたものをエントリとして公開したい。

突き詰めて考えると、二社の違いは意思決定の仕組みと組織構造に求めることが出来る。Googleはトップ三人が集中的に意思決定を行ういわばAppleタイプ、Yahooはマネージャーからシニアクラス分権的に意思決定を行っていくいわばマイクロソフトタイプである。
 
 
サンプル
 
事業ラインの広さにも顕れているが、サンプルを挙げるなら、Googleのサーチの結果の画面と、Yahooファイナンス(米国)を例としたい。

Googleのサーチの画面はとにかく無駄が無い。シンプルな形で検索することのみに集中出来る。何をするのか目的が一点に絞られたインターフェースで、出力される情報の質と合わせて使い勝手は非常に良い。

比して、Yahooファイナンスも、投資家として企業情報を見るのに基本ここだけあれば大抵の用事は済んでしまう。The New York TimesBarronsForbesなどの大手もしくは専門メディアのニュース情報を除いて(除かずとも基本的な情報はYahooでも手に入るが、メディアとしては専門サイトにやはり劣る)、ほとんど全ての用事はYahooで済んでしまう。簡単な企業プロフィール、チャート、SECに提出した投資家向け資料、過去数期の財務資料、カバーしているアナリストの一覧、経営陣等インサイダーの取引情報など必要十分が揃う。

ひと目見て、Googleのページはごく少数、独りか二人で決められているだろうことと対称にYahooのページはチームで組織的に管理されているだろうことは想像に難くない。

何かがスケールする際に、Googleはまずシステムに顕れる。Yahooはシステムよりも組織に顕れる。
 
 
何に繋がるのか
 
この違いは対リスク耐性として表に出てくる。Googleはトップ三人、というよりは創業者二人のとどちらかが欠けると成長に大きな影響が出るだろう。亡くなるというほどのことは無いとしても、世の中のトレンドと合わなくなったときには急に行き詰ってしまう可能性がある。例えば、ここしばらくのGmailのプライバシー問題がいい例である。表面上はまさしくプライバシー問題なのだが、もう一段考えを深めてみると彼らの純化された価値観と世の中のギャップの問題である。プライバシーに限らず、事業展開上でも、世の中がGoogleの持っている世界観から外れていった時に彼らがどうなってしまうのかは分からない。一言、危うい。

Yahooは既に組織が作られ、スケールするように出来ている。Yahooの方が既に多角化を行っているというのもあるだろう。しかし、分権化が行われてきたこととの裏返しである。前CEO時代はこれが発散的になってしまい必ずも良くない面もあったが、現CEOのSamelに変わってから、素晴らしい復活を遂げた。

例えば、創業の二人が明日現役を引退したところで、企業として大きく変わるかと言われると、投資家が不安になるような事態にはならず、むしろ素晴らしい企業の生みの親として祝福を受けて去っていくことになるのではないか。この会社はGoogleのように高みを目指して疾走し続けることはないだろう。しかし、その昔コカコーラがそうだったように着実に悠々と成長していくことだろう。そういう意味ではエキサイティングではないかもしれないが、安心して見ていられる。

GoogleのIPOの報を受け、既に米国Yahooの株主でもあった自分なりに両者を比べ、Googleの未来をイメージしては投資するに値するかと考えを巡らせた際に考えたのは上記のようなことだった。Valuationの問題もまず間違いなく出てくるだろうことから、数字的にも見送るだろうが、それ以前にゆっくりと安心して資金を預けられるかを問うと否と返ってきた。万人向けの回答ではないが、一つの考え方としてはありだろうと自分なりに納得している。

あらためて、GoogleとYahoo!の価値創造における根本的な違いとは何か、との問いに対する回答としてまとめると、

・Googleは一つのものをどこまでも磨き上げていく傾向が強い。日本刀のようである。素晴らしく切れるが何かあると脆いと思われる。マネジメントチームにリスクも可能性もが集中してしまっている。代替として、事業が高い統合度を持てるために大過なく伸びるとそれこそ世界を制覇出来る。

・Yahooは今となっては普通の優れた企業という評価が正しいかもしれない。しかし、ブランド、ユーザーベース、実は非常に高い技術力、コンテンツなど大量に持ったアセット(利用権を含む)、セクターの高い成長可能性とセクター内での磐石なポジションなどを考えると、これからも大きく育っていくことだろう。目新しさはさほどないかもしれないが、スタンダードであるが故に強い。

このように分けたい。
  
 
Googleの事業リスク例
 
一つ、Googleがどう対応するのか、注意深く追っている現象がある。Weblogの増殖に象徴されるトラフィックの分散化である。メディアや企業サイトよりも、Blogを情報源として重視しはじめているという声はあちこちから入る。ポータルやサーチが席巻していたウェブの入り口はBlogに浸食されつつある。どのような形態であれ、自社サイトへのトラフィックを集めるというここしばらくの競争原理は少し形を変えてきている。

別の話題を話していてアリエルネットワークの徳力さんから頂いた問いかけがこの問題を端的に示している。

1:コンテンツがこのまま増えたら、私たちはどうやって価値のあるコンテンツを見つけるのか。
2:メディアはこのままでいいのか?
3:ブログではディスカッションが機能していないのでは?

それぞれ簡単にコンセンサスをまとめると

1:サーチは有効なツールであるが、機能不全に陥りつつある。BlogがPageRankの邪魔をしつつあるという狭い意味ではなく、情報量の増大と合わせて起こったコンテンツの文脈の多様化により、リテラシーがこれまで以上に求められるようになっている。単純なランキングシステムでは、情報は得られても知識は得られず、飢えは続く。

2:メディアは消えはしないだろうが役割を変える。情報過多になると、一次情報よりも判断とフィルタリングの価値が相対的に増す。正しい情報を伝えているだけではもはやユーザーの要望は十分には満たせない。

3:米国はともかく、日本ではいまいち機能している感じを受けない。米国でも見ている範囲で十分に機能しているかは疑問である。ただただ数が増え、追うだけで疲れきってしまい飽き飽きしてしまっている。

便利なのか不便なのか良く分からなくなっている頃に、親しい友人達とMLを立てGmailを組み合わせると見事にやり取りがそっちに移ってしまったのは先のエントリでも触れた通りである。6月は集中的にディスカッションを進めていたこともあり、実に530通ものメールが飛び交った。これだけ数が飛び交うと結局流されていってしまうものも生まれて来るのだが、それでも質は高く非常に満足感も満腹感も得られた。

このMLは初めからクローズで運営しているのでサーチエンジンのクローラーには捉えられない。当たり前の話ではあるが。そして、メンバーの情報処理総量で少なくないシェアを獲得し、情報収集源となり、購買意思決定にも影響を及ぼしていた。偏ったサンプルであるが、象徴事例と考えた時、メディアや企業のマーケティング担当者は何をすればいいのか。

Googleの対応としては、AdSense、AdWordsを分散化させ、ウェブ上のあらゆるところに偏在させようと動いている。万能解ではないが、進もうとする方向は分かる。分散するものには分散出来るものを提供すれば良い。なんともシンプル。

しかし、根本問題である情報の氾濫は解かれていない。また、現行のサーチのアプローチでは解かれないだろうと考えている。何十年も経ち、技術がありえないくらい進化すれば別だが、アルゴリズムが少々良くなったところで限界が見える。「私たちは違う方向を目指すべきではないのか?」、最近耳にすることの増えた意見である。こういった大きな動きを彼らがどう認識し、どのような回答を用意しようとしているかはとても興味深い。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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