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農作物特許に見るオープンソース文化

2004/05/30 23:33
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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週末、来日した梅田さんにようやくお会いすることが出来た。恐らくウェブで公開された文書は全て目を通しているのだろうことから、情報として新しいものはそう無かったが、受け答えでの言葉の選び方、背後に流れる思考の運び、質問・回答との距離の取り方をじっくりと受け止めて耳を傾けているうちに像の焦点が合ってくるような感覚を受けた。

Blogも、本当の意味で自分が日常行っているサイクルを少し加工して切り出しているのだということ(つまり、特別専用に無理した頑張っているものではないということ)、村上春樹が夜の10時には寝て朝は5時とか6時に起きて小説と翻訳に取り掛かるというサイクルで仕事していることに触れて一種の理想だという評価をしていたことなどが腹に落ちて理解出来ている。

情報のやり取りはメールやメッセンジャーで高速化した。コンテクストの交換もBlogで随分とやりやすくなった。しかし、一本の筋を見つける作業は会ってからようやく出来ることも少なくない。その人の持っているアプリケーションは見えてもOSまではなかなか掴めない。ましてやOSの設計思想はなかなかに見えてこない。そういう意味で、今回垣間見ることが出来たのはいい経験となった。

ツールやテクノロジーでカバー出来ない領域が何になるのか、上手く取り入れつつも過度に技術を万能視せずに足りない部分をどう補うかは個人レベルでも大事な力だと考えている。今回、その境界線が一つクリアに見えたように思える。
 
 
インド伝統のオープンソース・コミュニティ
 
軽く書く予定だった前置きが長くなってしまったところで本題に。

NHKの世界潮流で特許をテーマに取り上げていた。特許といえば、しばらく前のITからバイオ領域に陣取り合戦の主戦場がシフトしている。ハイテク関連は序盤戦を終えた感覚が強い。もちろん、電気、電子などでも新しい技術開発は行われているように、全て収まって勝負がついたというのではない。しかし、西部開拓時代のような、ゴールドラッシュを思わせるような熱気は過ぎ、着々、淡々という言葉が似合うようにもなってきている。

番組でも特許制度のおさらいと最前線での問題と事例紹介を一通り行ったあと、一気にバイオ領域に話が飛んでいた。

なるほど、と目を引いたのが、インドで昔から行われていた農作民の風習である。集落などコミュニティ内部で、定期的に集まっては育て方の知恵や強い品種の種を交換しているのだという。互いに交換しあうことが当然と認識されているので、当然、種子やノウハウに所有権も特許も発生しない。コミュニティに蓄積する共有財産と見做され、特定個人の独占権は発生しない。

指摘するまでもないが、活動形態は立派なオープンソースである。個人が生み出した知恵はコミュニティに提供され、自由に使えるようにする。全員が同じ規律で動くことでコミュニティ全体での無形資産は増え続け、属する人全てが恩恵に預かれる。しかも、理念的に誰かが引っ張るという風でもなく、自然な営みとして根付いている。
 
 
オープンソースコミュニティはローカライズされるのか
  
米国を中心としたオープンソース活動は、キリスト教世界だからか「中心」が見える。Linuxが一番明確で、理念的なシンボルとしてリーナスがいる。もちろん、技術的にも重要な役割を果たしているのは確かだが、それ以上にコミュニティの象徴としての役割が重い。気の長い話になるが、死後も変わらずに支えになれるかどうか、キリストになるかどうかで良くも悪くもLinuxの行く末は変わっていくことだろう。

番組を見つつ考えたのは、インドのような国ではオープンソースは受け入れ易いだろうということ、深く受け入れた際にはインド型とでも言うような独自の運営体制が出来るではないかというところ。根っこは文化の問題なために、適応度の高い国低い国が出てくるのは自然だろう。この前扱ったAmy Wohlの資料(邦訳しています)を読んでいても世界中に広がっているのが良く分かるが、広まったあと、それぞれの国でどのように受容されていくのか、広まりきった後に開発方針やバージョン管理など実務的なところに何か変化が出ないのか、ローカルコミュニティごとに異なるだろう要望をどのように吸収していくことになるのか、調整と意思決定過程はどのようにあると上手く機能するのか。疑問と興味は尽きない。

さて、話の出たついでにバイオ分野で起きている問題について。

バイオ系企業の競争力は一言でまとめると、良い特許を幾つ持っていかで決まる。そのため、自前で開発するかどこかから手に入れるか効率よく特許を蓄積して囲い込むことに心血が注がれるが、対象が自然物なだけに、世界各国が伝統的に蓄えてきた土着の知恵を特許権に乗せて独占保有してしまうことがある。もちろん、取得過程で手間もコストもかかるために取得した企業側が完全なただ乗りとなるわけではないが、そのままコピーしたような状態の場合、地域に蓄積されたノウハウは突然特許侵害という一言で無断では使えなくなってしまう。

「この問題は、基本的に貿易問題なんです」。番組に出演していた弁護士の一言が印象的だった。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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