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情報経済の崩壊を越えて(2):インターネットビジネスはコモデティ化をどのように越えるのか

2004/05/10 23:53
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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前回に引き続き、クリステンセンモデルの応用を。

情報産業、より狭くインターネット業界はコモデティ化が強力に進んでいるところである。情報の公開度が高く、表側はブラウザひとつあればどういうサービスを提供しているかがすぐに分かってしまうため、互いに模倣し易く差別化要因が次々と消されていくためである。
コモデティ化の波に洗われているのは二箇所。
 ・コンテンツ
 ・サイトのサービス(裏で動いているアプリケーション)
どちらもデジタルデータで表現される広義のコンテンツとなる。

収益のポイントと「十分でない状況」の移行はPC産業と少し異なる。
 
 
インターネット三層モデル
 
まず、ネットワークのハード層、ネットワークのサービス層(通信、ISP)、アプリ/サービス層(ポータル、サーチ、ASP etcetc)と三層に分類してモデル化してみる。

・ネットワークのハード層
ルーターなど、PCほどのコモデティ化が進んでいない製品カテゴリーもあるが、全般的に価格下落と「どこを買っても基本は同じ」という現象が進行しつつある。

・ネットワークのサービス層
米国の各業者業者の詳細までは把握していないが、日本市場では通信は急激に進んだADSLの普及と価格下落に見舞われ急速に同質的競争に陥ってしまっている。ISPサービスがコモデティ化しているのは通信以前の話である。接続サービスのみと割り切ってベンダーを探すと幾らでも価格の安い業者を探せてしまう状況になっている。

三層分類では、ネットワーク層のコモデティ化が進むことにより、アプリ/サービス層の利用が高まっている。分かりやすい影響を受けているものとしてオークションが挙げられるが、例えば、Yahoo! JAPANの月次開示データを総務省のDSL普及速度と比較すると、
 年月   DSL普及  PV
 2004/03  339%  269%
 2003/12  311%  237%
 2003/09  280%  211%
 2003/06  250%  188%
 2003/03  213%  173%
 2002/12  171%  146%
 2002/09  128%  121%
 2002/06  100%  100%
完全一致ではないが、概ね同じような方向性で伸びていることが分かる。

・アプリ/サービス層
では、三層目が端から端まで順調かと問われると決してそうではない。基本的にはコモデティ化が進んでいる状況には変わりない。インターネット黎明期の「とにかくアイボールを集めよう」という動き、テレビ、ラジオのように周波数帯の制約が無く供給過剰に陥り易いとの二要因に端を発して、差別化されないサービスは限りなく価格がゼロに近づいていく。もしくは、提供価格をゼロにした事業モデルを構築したベンダーに全てを破壊されてしまう。フリーメール、フリーML、フリースペース。アプリとサービスという分類でも、それぞれオープンソース、オープンコンテンツ(オープンコンテンツという用語は一般的なものではないため別途まとめたい)とどちらも無料化の力がかかっている。

ぐるっとまとめたところで現実に返ってくると、驚異的な競争力と収益力を誇る企業が存在している事実に出くわす。Yahoo、eBay、Amazon、Google、IACI。この現象は収穫逓増の法則、Winner takes ALLという文脈で語られてきてそれなりに納得してきていた。

しかし、クリステンセンモデルが理解出来るにつれて違う軸での説明も可能ではないかと最近考え始めている。
 
 
インターネットでのモジュール化、バンドリング
 
クリステンセンモデルを通してインターネットの世界を解析してみると、モジュール化が不十分でコモデティ化が激しい時代から、モジュールが安定してきている状態に遷移してきている。

全てがフリーで彩られていたバブル華やかなりし頃、買収とアライアンスにより統合化が十分に進行していない段階では、コンテンツもサービスもバラバラな状態で存在していた。フリーメールを使おうとすると、MSN買収前のHotmailがある。個別登録を行い専用のIDが発行される。フリーのMLを使おうとするとeGroupsがある。個別登録を行い専用のIDが発行される。オークションを使おうとするとeBayがある。個別登録を行い専用のIDが発行される。

その後、Winner takes ALLの法則と買収による寡占化によって、サービスの統合が進行した。同時に、アウトソーシングするにしても業界で標準的なインターフェースがじわじわ固まってきてECの決済や認証など専業ベンダーが立ちやすいところからモジュール単位で綺麗に切り分けられるようになっている。

現在、個人的好みは別として、Yahooに行けば上記の三つ、フリーメールとフリーMLとオークションが統合的に使えるようになっている。少なくともID管理は格段に簡単になり、ユーザビリティも高くなった。

コンピューター産業での収益ポイントは、OSとコアデバイス及び流通とサービス部分にシフトしている。インターネットは全く同じではないが、
 ・差別性の高いモジュール提供者
 ・顧客フロントのサービス提供者
の二つに大きく分かれていっている。前者はMSとIntelが強いというロジックと概ね同じになるが、後者はPC産業でいう、パッケージャーと流通/サービス機能の両方を持っているのと考えられる。収益力のあまり期待出来ないパッケージャーの機能と収益の期待出来るサービス部分が一つの企業の中に共存している状態である。

クリステンセンモデルではモジュール化の進んだ世界でパッケージャーは儲からないとされる。幾ら強豪ポータルと言えども、差別化の難しい商品については積極的な課金は行われておらず、あくまで広告モデルをベースとしている。ここでの勝負はなるべくワンストップでの利便性を提供することで、単体での機能差別は出来なくとも、サービスのパッケージを使いやすい形にまとめることでユーザー側に発生していた複雑性を解消して選んでもらうことにある。人が集まれば広告が成立するという法則は決して消え去ったわけではないので、これはこれで一つの道と言える。

直接の課金対象になっているものとして、オークションの手数料などに加えて、フリーのサービス品質を高めたプレミアムサービスが一般化しつつある。獲得したユーザーベースを基盤として、データ保存容量やセキュリティなどのオプションを合わせて上手く収益を立てている。YahooなどのポータルやNifty、BiglobeなどのISPに共通して、プレミアムサービスはごく一般的に提供されているが、スパムフィルタリングやウイルスフィルタリングなどメンテナンスの手間も掛からないので、ローカルPCにソフトをインストールするよりも便利な面もある。プレミアムとして提供されている中には単体として売りづらい機能も含まれており、まさにバンドリングの妙技と言える。
 
 
Does INTERNET Matter?
 
合わせて、一時期物議を醸し出したNicholas Carrの"Does IT Matter?"が今度は出版されるということで(前はHBRの論文だった)、再燃している議論をチェックしている。元の論文の論旨を一言で要約すると「ITはチープになってコモデティになったのだから、みんな手に入るようになってもはや差別化要因にはならんよね。ITなんてあきらめなさい」ということになる。

しかし、入り口はコモデティでも出口はコモデティではなくなるという事例は時々ある。部分部分はありふれていても総体で何を実現するかで違いが出るのであれば、差別化の原因になりうる。

一通り当てはめを行ってみたが、今回のエントリではまだ試論レベルであり、綺麗にまとめきれていないところがある。足りない部分については、クリステンセンのモデルでは十分に説明しきれないのではと感じているが、アーキテクチャ論や情報経済論などを重ねていくともう少し見晴らしが良くなる。考えがまとまったところで、改めて補足したい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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