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ソフトウェアバンドルのエコノミクス(1)

2004/04/15 01:54
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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ソフトウェア、情報産業ではプロダクトやサービスをバンドルさせるのは日常的な光景である。先日話題になったマイクロソフト/EU間の判決(「EU/マイクロソフトの争点」参照)もバンドリングが大きなテーマである。

情報財のプライシングが価格の下落圧力に負けて成立しなくなっているのでは?というテーマでまとめた「情報経済は崩壊するのか?」も最後ポイントはversioning、bundling、aggregationの三つをどうコントロールすべきかという論点に落ちてきている。また、機能のエントリでもソフトウェアの収益性を高めるためのバンドリングへのインセンティブは強いという指摘がされている。

情報産業ではバンドリングをどう捉えるかは一つ肝となる。EconLogBundlingという直球勝負なタイトルで取り上げているので読んでみたい。

EconLog著者、Arnold Klingはこのような人です。

まずはEUの判決をケースとして、独禁法によるアンバンドリングの業界への影響について。

EU/マイクロソフトの争点」にて紹介したAmy Wohlの意見はEUの判断に対して懐疑的だったが、エントリ中で紹介されているProfessor Bainbridge

Prohibiting Microsoft from bundling, say, media players and search engines into the Windows operating system is critical to preserving competition and promoting innovation.

と今回の判決に対して好意的な評価を示している。個人的な感想としては、メディアプレイヤー単体の議論だとEUは少し行きすぎの可能性もあるが、サーチまで含めると競争阻害の可能性が高いと考えている。

Arnold Klingの考えはこの一文に端的に顕れている。

Suppose that we adopt the position that everywhere there is bundling, the government should step in to regulate product offerings and pricing. In that case, it seems to me that we might as well abandon capitalism and go for a complete command-and-control economy.

派で言うと新古典派の自由主義あたりになるのだろうか? 細かい定義はさておき、政府の過度な介入よりも市場の競争を信頼する立場を取っている。

後の政策方針についてのコメントでも

Regulators could argue that bundling by Microsoft or the cable companies needs to be regulated because those companies have monopoly power. But I would rather see product specifications and pricing set in a market, however imperfect, than set by a government bureaucrat.

「however imperfect」と書いているあたり硬派な市場主義の立場であり、今回の判断にも当然のごとく強く反対している。
 
 
では、彼が反対意見を展開する論拠はどのようなものなのか。

独禁法をベースとしたバンドル規制の根拠は競争促進を主目的としている。EUの判決にしても、長期的な消費者の利便性を損なってしまう可能性を気にして出されている。これに反対するには、1:バンドリングは競争を阻害しないと主張するか、2:バンドリングの弊害よりも政府規制が強いことの方が問題であると主張する必要がある。

情報産業において、バンドルがどのような役割を追っているのかについて考えを進めた論考「Pandora's Bundle」が別途まとめられている。本人が「Bundling II」と題して追加したエントリにも引かれているが、

Information goods are almost impossible to sell without bundling. As Carl Shapiro and Hal Varian pointed out in their classic book Information Rules, information goods are characterized by very low marginal cost of production and distribution, as well as by uncertainty on the part of the buyer as to the value (until you've actually obtained the good). Accordingly, for producers of information goods, such as software or music, Shapiro and Varian recommend various strategies that involve bundling.

情報財でバンドルを行わないことには単品の価格の下落が激しくなってしまうので、ビジネスとして成立させるのが非常に困難になるというのが彼の考えである。

このあたりは、どこまで行っても情報産業のキーになってくる概念だろう。先の「情報経済は崩壊するのか?」で出ていている方針にしても、コモデティ化が進みやすく、常に価格が下方に圧力を受けて需給のバランスを崩しやすい環境で如何に収益を維持するのがイシューとなっている(需給を崩すのは認知限界の問題に大きく左右され、収益維持の方策もまた認知限界を上手く解く方法により見つけられると考えている)。

「Shapiro and Varian recommend」と記されている箇所についても引かれているのでまとめてチェックすると、

Bundling offers a way to extend monopoly, to increase revenue and to raise entry costs. But it may also offer enhanced functionality and lower production costs. Sorting out these benefits and costs of bundling will be particularly challenging for the courts, since the balance of benefits and costs will differ significantly case to case.

と、独占を促す可能性は指摘しつつも、機能拡張と生産コストの削減が行えることからケースごとの判断に依拠するしかないと灰色の結論を出している。
  
つまり、個別判断の必要な事例は存在するものの消費者にとってもコストメリットが発生することもあり、かつ業界全体がバンドルを行わずには成立しない特性を持っているため過度な介入について意味を見出していない。1については個別判断は入るものの必ずしも阻害するものではない、2については弊害が多いということになる。とはいえ、独占は良くないがバンドルにはいい点もあるというのは、分かったようで分からないところもある議論でもある。
 
 
「Pandora's Bundle」のポイントを深掘りする前に、バンドルの発生理由についてまず確認したい。

the economic theory of why sellers do engage in bundling is unsettled.

ということで、バンドルを完全に説明しきるのは難しいらしい。これは、あまりに産業分野の多岐に渡ってパターンが複雑化しているために、事例検証が膨大になっているためだろう。

とはいえ、幾つか代表的なケースはある。まず、

bundling is a way for sellers to recover fixed costs. For example, Disneyland offers access to its rides as a bundle, rather than charging you separately for each ride.

固定費がオプションのサービスやプロダクトの追加コストに比して高い場合。他にもケーブルテレビや情報産業の多くが含まれる。

もう一つ、

Another reason for bundling is to save on the consumer's mental transaction costs. Most consumers would prefer to pay a flat rate for phone service or internet service rather than worry about per-minute pricing.

決済をばらけさせて手間が発生した上、単位ごとの課金を心配するよりも、固定化させて心置きなく使える方を利用者自身が望んでいると指摘している。身近で最も顕著に出ているのはインターネットの接続料金と利用時間が挙げられる。同様に携帯電話のデータ通信の定額制も大きなインパクトを生むだろう事が予想出来る。

最近、エコノミクス系のエントリが立て続いてますが本日はこの辺で。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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