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Amazonのサーチエンジン「A9」のβ版リリース

2004/04/15 12:34
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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Amazon肝いりのプロジェクトとしてこれまであちこちで取り上げられていた独自サーチエンジン、A9のβ版がリリースされた。CNETでも早速記事になっている

米国のサーチエンジン動向ならここ、と言い切ってしまっても良いJohn Battelle's Searchblog速報エントリがされているので、簡単にチェックしてみたい。

まず前置きの後の総評は

On first blush it's a very, very good service, and an intriguing move by Amazon. It raises a clear question: How will Google - and more broadly, the entire search-driven world - react?

と良い評価を下している。詳しくは順を追ってまとめるが、さらっと使ってみた感触では確かにポジティブ評価をしたくなる新しさがある。

適当に単語を入れて走らせてみると、結果は三つに分かれて表示される。機能紹介に当たるWhat's New & Coolの力を借りつつまとめていくと、まず一番左に通常のウェブサーチの結果が表示されている。「provided by Google.」ということでサーチはGoogleを引っ張ってきている。ウェブ検索への参入は意図していないというコメントが出ていることから、この部分はGoogle以外になる可能性はありつつもエンジン自体はOEMのままで行くだろう。単体機能の優劣ではなく、真ん中の肝になる書籍、ショッピング検索と合わせて表示させることを意図していると考えられる。

次に、真ん中の部分。ここが中核機能となり、Search Inside the Bookも走っている。

In addition to web search results we present book results from Amazon.com that include Search Inside the Book. When you see an excerpt on any of the book results, click on the page number to see the actual page from that book. (You will need to be registered at Amazon.com.)

単語検索とSearch Inside the Bookが二つ同時に使われており、Search Inside the Bookで引っかかった場合はページ数の表記と単語の周辺20ワードくらいの内容抜粋も表示されている。「In addition to」と表現しているのは、書籍検索が提供機能としてはコアになるものの、ユーザーの利用視点ではウェブの検索がまず先にあることから、無いと使ってもらえないという判断だろうか。

一番右は検索履歴となる。登録とサインインが必要にはなるが、元々ECサイトなので特に壁とはならない。履歴を蓄積している範囲は

Search History: All your searches at A9.com are stored on our servers and shown to you at any time from any computer you use. Clicking on a link performs the search again. You can hide the window at any time and a password will be required to open it again. You can edit your history, for example, to hide an entry.

検索結果と、

Click History: If any of the web search results include a site that you have seen before, it's marked on the result. We even tell you the last time you visited that site.

クリックの結果。この二つはそのうち、Amazon本体が持っているレコメンデーションエンジンの一部として統合されて機能していくに違いない。

一つ面白いのは「URL Short Cuts」と名づけられた機能。ちょっとしたアイデアと言えばそうなのだが、「a9.com/任意の文字列」とURLに入力すると指定した文字列で検索出来る機能である。通常、検索のショートカットはツールバーにて実現されているが(そして、当然のごとくツールバーも提供しているが)、既に何か馴染みのツールバーを入れているというユーザーは多いことだろう。ブラウザ上部の空間シェアを争って割り込むのは大変である。であれば、ツールバーよりは多少不便にはなるが、URLからサーチを可能とするのは賢いやり方と言える。

A9のサービスの面白さは見た目そのままになってしまうのだが、ウェブのサーチと書籍のサーチを同時に出来てしまうことにある。ウェブのサーチは悪く書いてしまうと玉石の判定が難しく、断片的な情報を集めてしまいがちである。PageRankにせよ密度法にせよ個々の情報の信頼性は厳密には担保出来ない。しかし、思いもかけない情報が手に入ったり、現場の生の声などがぽんと書かれていることがあるのもウェブの良いところである。対して、書籍、特に本文中の情報はある程度人のチェックが入っているものであり、主義主張政治身上などの違いはあるにせよ、ある程度の品質保証はされた固い情報である。

どっち良いとかいうのではなく、二者は違うカテゴリーの情報なため、単純に上手く組み合わせて使うのが良い。ある程度オーソドックスでスタンダードな情報は書籍を中心に確認し、更には必要に応じて該当の書籍を購入する。この段階までで中心の大事なところを押さえてしまう。合わせてウェブサーチの結果で追加情報や周辺関連情報を得て深みや豊かさを得たり、新しい切り口を探したりする。などというメリハリの利いたサーチが行えることとなる。書籍内容への広範なアクセスが必要になるため、今のところAmazonしか十分な形では提供出来ないサービスモデルとなる。
 

  
さて、John Battelle's Searchblogに戻って。結構長いエントリなのだが、真ん中少々上でGoogleとのポジションの違いをまとめているところが面白い。

It seems to me, Google's position in Amazon's A9 implementation is at best a step backwards. If A9 is as good as it seems to be, every customer that uses and/or switches to A9 becomes an A9 search customer, and, more likely than not, a deeper and far more loyal Amazon customer. (The service incorporates a personal search history and many other really neat tweaks, including a wicked good Toolbar.)

まず、全てのフロントに立つというGoogleの初期イメージに対応してSearch Inside the Bookが始められたという劣勢のイメージから転じて、Googleの更にフロントに巧みに立っている。純粋にウェブサーチをしたいというユーザーはスイッチしないだろうが、濃い目の情報を得たいと思うユーザーはA9にシフトする可能性はある。特に、Amazonユーザーにとって、Amazonのサービスと巧みに統合されていった場合、単体のサーチエンジンサービスでは得られない体験が提供されることになる。つまり、GoogleはA9のサービス全体からするとモジュールとして機能していることになるが、この状態は競争なのか協業なのか。

In essence, Amazon seems to be making a play for Google's customers. Or it seems that way to me, anyway. Sure, Amazon isn't in the AdWords business. It's happy to outsource that to Google and focus on the entire US retail GDP instead...

Googleが自社のインターフェースとAdWordsの組み合わせを重視しているのであれば競合していると言えるが、AdWordsに固執するとしてもAmazon側での表示が可能であること、それ以前に、A9経由の収益をどのように分配するかで大部分は解決すると考えると協業的に捉えられる。協業というか、「Google's customers」と言い切っても良いところはある。
 
 
二社の関係を考えると今朝の梅田さんのエントリ、「Googleの独自技術はどこまで汎用的で競争力があるのか」の最後で再掲されていた

先日、シルバーレイク・パートナーズのRoger McNameeと話をしたときに、彼は、「GoogleにとってXXXは競争者ではないが、XXXにとってはGoogleが競争者(脅威)に見える、そういうXXXが業界にはたくさんいる。でも、Googleにとっての競争者(脅威)は厳密な意味で存在しない」という表現を使ってGoogleのユニークネスを説明していたが、まさにそういう感じなのである

という記述の重みが実感として捉えられる。自社のサイトでのPVとクエリ数を追求するサーチエンジン競争のイメージで捉えると、Googleの一番面白いところは見失ってしまいそうである。

A9については先のSearchblogの速報エントリでも何歩か突っ込んだ考察が展開されていたりするが、そのうち各所で反応が出てくるだろうことから、面白いのが出揃った時点で取り上げることとして、ひとまずここで筆を置きたい。

追記:
引っかかったエントリを中心にクリッピングしています。

・Sotto Voce Amazon's A9
・utahblog Amazonの検索エンジン
・エッセンシャル・サーチエンジン AmazonがA9のベータ版を開始

・John Battelle's Searchblog NEWS: A9, Amazon's Search Portal, Goes Live: Reverberations Felt in Valley
More on A9
・John Battelle's Searchblog Interview with A9's Manber up on B2.0
・John Battelle's Searchblog Search Engine Loyalty, A9 Prognostications...
・Business2.0 Can Amazon Unplug Google?
・ResourceShelf Web Search--a9
・[the] Jason Murphy Show Google gets Bamboozled - Amazon's Search Engine is Now Live!
・E M E R G I C . o r g Amazon's A9
・PaidContent.org A9, Amazon's Search Portal, Goes Live
・Joi Ito's Web A9

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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