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キーストーン・プロダクトのプライシング

2004/04/14 00:24
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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企業の競争力を測るには単純な企業間比較だけではなく、バリューチェーン全体の比較が、特に情報産業の分析では必要になるというテーマで「企業の競争力を定義するビジネスの生態系(1)」、「企業の競争力を定義するビジネスの生態系(2)」というエントリをまとめたことがある。

元論文はHBS Working KnowledgeCreating Value in Your Business Ecosystemになるが、簡単にサマリすると、

・産業のアーキテクチャを決定付けるプラットホームを押さえている企業は、競合と比べるとずば抜けて強い競争力を維持していることがあり、同時に収益性も高くなっている
・プラットホームの企業=キースートン企業とサードパーティの分業と協業の体制を理解することが系全体の生産性を理解するのに必要となる
・キースートン企業は系全体の企業からインフラの進化とポジションから得られる収益を全体に還元するプレッシャーをかけられる
・サードパーティとの協業が上手く行くとキーストーン企業は磐石のポジションを得られる

と、生態系全体に働くロジックをコンパクトにまとめている。
 

 
では、キーとなるプロダクトの価格設定、例えばマイクロソフトのウインドウズOSはどのような考え方で適正価格をはじき出せばいいのか。スタンフォード大のBrian Viardがまとめた、Pricing in a Networked Worldがこの問題を扱った論考を発表している。Amy WohlのBlogPricing Operating Systemsというコメントエントリをしているので合わせて読み解いて行きたい。

マイクロソフトは純粋にOSだけ提供している会社ではない、OSのポジションを生かしてではあるが、オフィスアプリでも高いシェアを維持している。ところが、

why did Microsoft charge only about $60 for Windows — its "base" product — instead of the $1,800 that many estimate it could have demanded, and why did it choose to price Office — the "complementary" good — at nearly four times as much?

OSは補完財であるOfficeの四分の一の価格でしかない。需要から考えるともっと高くても売れるはずなのに、なぜこのような安売りとも言える状況をマイクロソフトは放置しているのか。

基本的なところから。

firms such as Microsoft that enjoy a monopoly on base but not complementary goods have an incentive to set low prices on base items to attract customers who use complementary products, even if they come from other vendors.

OSの価値はその上で走るソフトの数と利便性の総量に影響される。よって、より多くのサードパーティがウインドウズを支持するほうが望ましいため、ベースとなるプロダクトの価格を安めに設定するインセンティブが働く。ネットワーク効果を生み出す条件を維持し続けることは短期の収益確保よりも重要な要件なため、価格を上げすぎないことは長期的には正しい意思決定ということになる。

ネットワーク効果はマイクロソフトに別のインセンティブも生んでいる。

that firm has more of a profit motive for investing in improving the complementary goods than does an independent company

まず、補完財の進化に熱心になる。これは、直接の投資対象にになる補完財であるOfficeのポジション強化と同時にOSのポジション強化も図れるためである。また、

a firm has more incentive to make base and complementary goods compatible if it owns both than if another company owns the complementary good.

ベースの財と補完財とをセットにして統合させていくインセンティブを持つ。これは、ブラウザ/OS、Office/OSで実際に起きており、先日のEUの訴訟は更にメディアプレイヤー/ブラウザ+OSで同様に発生している。

マイクロソフトのOSのプライシングについての筆者の意見は

they don't want to crank up the price for Windows, the base good, because they don't want to choke off the positive feedback effect with those complementary goods that Microsoft does not produce, such as statistical packages and so forth.

というところで、素直なもの。自分達の競争基盤の核となるOSは収益のポイントではなく、ポジションを維持することがより高次の目標になっているとコメントしている。その結果、収益を追求する姿勢は補完財であるOfficeに向かう。

They control the price of Office, but they don't control the price of other firms' complementary goods. So they prefer to crank up the price of Office, because people value it very highly and are willing to pay a lot for it.

ということで、オフィスの方は積極的に収益を上げるための価格設定をしているため、OSと四倍も差がある現象が生まれてしまっている。
 
 
さて、Amy Wohlはこうコメントしている。

If you have a vendor like Novell who is now selling both a base product (SuSE Linuxx) and a complementary product (there are lots, but let's select the SuSE desktop offering), does this logic apply?

OS+アプリという構図はもちろんLinuxでも見られる。そもそもオープンソースなので、OSはライセンス無料からのスタートとなっているが、アプリの価格を吊り上げる方法は成立するのだろうか? 時間をかけて追ってみたい面白い問いである。

※補完財については例えばこちらを参照ください。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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